私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

DVに関して

御幣があるかもしれませんが,地方において,DVの問題は多いと耳にします。都心部でお過ごしの夫婦のうち片方が地方に逃げてきたり,地方の実家に逃げ込んだりする例というのもあるようです。

離婚とセットで論じられることも多いですが,たとえば,離婚は家庭裁判所の管轄であるのに対し,DV保護命令は地方裁判所の管轄であるなど,裁判所でもワンストップの体制はとっておらず,法的には,必ずしも, ,家庭のこととひとくくりにして扱われているとはいえません。しかし,紛争の解決にあたる実務家は,もちろん,生活全般の立て直しなどもにらんで,さまざまな目配りをした上で,全体的な解決の途を探らなければなりません。

法律家として関わりが深いのは,さきに見たDV保護命令の手続でしょう。一般的な解説などは,いろいろな情報が出回ってます(当事務所のHPでもリンクしてますが,内閣府男女共同参画局の「配偶者からの暴力被害者支援情報」のページは,とても参考になります。)。ここでは,制度の解説以前の,DV保護命令を利用するメリットについて考えてみます。

保護命令制度は,配偶者や生活の本拠を同じくする交際相手からの暴力を防止するため,加害者が被害者に接近すること等を裁判所の命令で禁止し,更なる暴力を振るわれることを防いで被害者の安全を図るものです。これが直接的な効果といえるでしょう。

ただ,実際のところ,裁判所が取扱件数としても,DV保護命令の件数は,多くはないそうです。そこまでしなくとも相手方に所在がわからないように別居すればよい,結局は保護命令(裁判所)よりも警察の対応がものをいうのではというところがあるのかもしれません。保護命令の効果は,刑事罰による制裁をちらつかせることであって,どうしても接近等を物理的に封じることまではできないのではという懸念が残るということもあるのかもしれません。そもそも論として,家庭の問題に裁判所という国家機関を介入させて進めるのに,抵抗を感じるということかもしれません。 しかし,場合によっては,むしろ,第三者を介入させることによって,無理矢理解決にもっていかなければ,解決にならないときもあります。怖がっている被害者にとっては,裁判所が手助けしてくれたという安心感を取り戻すことにも,大きな意味があるでしょう。親族にまで手が伸びていれば,それを止める意味もあると思います。警察も,保護命令がある方が,「民事不介入」「事件が起こってからでないと」などといった消極姿勢を封じ,積極的に動きやすくなるでしょう。さらに,離婚の協議/裁判を進める上でも,DV事案において,保護命令が出ているかどうかは,非常に重要になってきます。裁判所は保護命令の有無を確認しますし,保護命令があれば暴力はあったという前提で話が進められます。結果として,事実の存否に関する紛糾を避け,早期の解決に至ることもできるかもしれません。子どもとの面会交流の可否についても,保護命令の存否は,大きく影響するでしょう。

DV保護命令の根拠法であるDV防止法は,2001年成立,2004年・2007年・2013年改正…と成長している法律といえます。日々,現実の被害などに耳を傾け,柔軟に対応し,進化を続けているものともいうことができるでしょう。 これを利用する法律家も,法律家だからといって法律論だけにとらわれず,広い視野をもって,依頼者の全体的な利益を考えながら,一方,プロとして,法的な観点からの道筋立ても怠ることなく,依頼者に寄り添って,活動を続けていきたいと思います。

※DV保護命令については,命令の内容・要件がいろいろと定まっていること(あらかじめ書式をしっかりさせておけば見落としがない),すばやく審理したいという要請があること(見慣れた書式の方が読みやすい)などからか,裁判所としても,裁判所書式で申し立てることを推奨していると聞きました。リンクに裁判所書式もアップしているので,必要がある方はご参照ください。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。