私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

会社役員の休業損害・逸失利益

交通事故損害賠償請求事件において,休業損害・逸失利益は,実際には働いていないのに,働いていればもらえたはずだというフィクションを扱うものです。立場によっても,様々な考え方がありますので,問題になりやすいといえます。

そのうち,会社役員の休業損害・逸失利益をどのように考えるかという問題があります。雇用契約に基づき,労働者が会社からいただく給与と異なり,役員は,委任契約に基づき,役員報酬という形で金員をいただきます。役員報酬は,給与と異なり,労働の対価という意味合いだけではなく,他にも様々な意味合いが反映されており,高額になることもあります。法人税の負担の軽減を意図して役員報酬を増額することもあります。親族経営の場合などで,情誼的に増額する場合,利益配当の実質を有する場合など,様々な要素が入り込んで額が決定されるという特殊性があります。役員報酬は,給与と異なり,手続を踏めば比較的増減されやすいというところも特殊性があるでしょう。

一般的に,休業損害・逸失利益においては,「労務対価部分」のみが休業損害・逸失利益を構成し,利益配当部分などについては構成しないとされています。この「労務対価部分」がどこからどこまでかという問題については,同じ会社・同じ業務などなく,個別具体的に検討せざるを得ませんので,検討が大変難しいということになります。サラリーマンの場合の源泉徴収票などとは異なり,役員報酬に関する資料はあいまいなことがあるというのも,揉める原因かもしれません。

労務対価部分は,報酬額,企業規模,株主・役員の構成,従業員の有無・数,当該役員の執務状況等を考慮しながら判断するとされています。

その際,同じ会社の従業員(労働者)の給与水準はどうか(労務対価としての給付なので),賃金センサス(その時々の平均賃金)と比較してどうかなどといった観点で検討することもあります。

実際に認定するときは,報酬実額の●●割という形で基礎収入を決めることが多いようです。

保険会社は,「あなたは役員だから休業損害はもらえませんよ」などと主張することもあるようです。それが否定できない事案もありますが,賠償の対象になるかは,もちろん事案により,個別的な検討が必要ですので,疑問を感じたら,法律専門家への相談を検討してみてください。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。