私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
法人確定申告書の読み方
日弁連の研修で,私的整理を取り扱いました。これに関し,企業の活動の実態を把握するために,決算書,確定申告書,勘定科目内訳明細書,法人事業概況説明書等をどう読み解くのか,企業の再生支援をする立場の目から,ご教授いただきました。バンカーや経営者等の参考にもなると思いますので,私の備忘も含め,記します(順不同)。
確定申告書。別表第二を見れば,株主の構成がわかります。もちろん,株主名簿や株券発行会社かどうか・株券の有無/所持者なども確認すべきですが,重要な情報です。「損金不算入」という考え方をきちんと把握すべきです。会社は経費にしたけど,税法上は損金にしないもの。交際費等がそれにあたります。今期より前の欠損金を使っているかどうかは注意。今期の本業の営業成績とは関係しない税法上の処理については,キャッシュベースでとらえなおすという発想も大事。別表第五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」はチェック。税金の滞納が大きすぎると,私的再生が困難になります。金融機関の貸し付けと異なり,社会保険料等を含む公租公課は,頻回な督促や連絡もないことが多く,ため込みやすいです。滞納があるということは,それを支払った時には,滞納税が確定して,その後に滞納税の支払いも求められるということ。滞納の裏には簿外に延滞税があることに注意しなければなりません。国税ですから,まけてもらえませんですからね。別表第五(二)の「延滞税」の記載にも注意が必要です。別表第七(一)も大事。青色欠損金は,タックスプランの基本。別表十六(一)では,減価償却に注意。償却不足があるということは,利益が出なかったから,償却を見送ったということだろう。償却というのは,フィクション性の強い考え方なので,キャッシュベースに引き直して考えることも大事。
決算書。まずは純資産の合計を確認して,資産超過かどうか,債務超過でないかを確認。さらに,実質的にも資産超過を確認する。資産の部のうち,「売掛金」が多い場合は,回収できるかどうかが重要。「商品」が多い場合は,在庫をチェック。本当に売れるのかをチェックします。「投資有価証券」などの記載がある場合は,関連会社の株式や証券でないかなどを確認。親子会社などであれば,親会社が悪くなれば子会社も悪くなるのが普通です。そうすると,株式や証券に価値がなくなるかもしれません。
損益計算書。その企業の本業の成績は,「営業利益」にあらわれます。ここが黒字でなければ,相当ヤバイかもしれません。利益が出てるか?をまずは確認する必要があります。さらに,利益が出てないように見える,またはトントンなどというときは,キャッシュベースでみるとどうか?という点もチェックします。たとえば,販管費内訳をみて,減価償却が計上されている場合,その減価償却分は,実際にキャッシュが出ていくわけではないので,キャッシュベースに直す場合は,加算して考えます。キャッシュベースでみてなんとかプラスになっている企業であれば,なんとか持ちこたえる芽を見出せますが,そうでなければかなり厳しいと思います。
勘定科目内訳明細書。「売掛金」の明細を見ると,取引先がわかって,ビジネスモデルを俯瞰する上で参考になります。3年程度は推移を見ますが,特定の会社の金額が変わっていないときは,単に回収できていないだけという可能性があるので注意。また,「その他」の金額が大きい場合も,本当に回収できるのか,注意が必要です。「在庫」も粉飾が多いところなので注意。「その他」が多いときは特に注意です。「借入金」の明細については,個人,特に社長からの借入金がないかチェック。負債が多いように見えても,社長からの借入だけが多い場合などは,整理がしやすいかもしれないです。
法人事業概況説明書。事業内容や役員や従業員の数がわかったりと便利。
……などなど。実際の書面を見ながら,私も,日々,見る目を養っていきたいと思います。ご紹介まで。