私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

豊前 骨をうずめる覚悟で

弁護士は,日本全国の弁護士で構成する日本弁護士連合会と,各県を単位とする単位会(私の場合は福岡県弁護士会)に必ず所属しています(強制加入団体)。

その,通称日弁連が発行する書籍として,「自由と正義」という雑誌があります。最新の法的な議論について紹介や,連載,寄稿,研修情報,各種資料などさまざま有益な情報が紹介されています。

そのなかで,豊前,弊所の紹介のエッセイを執筆する機会をいただきましたので,ご紹介させていただきます。

以下,自由と正義2018年11月号(vol.69,No.11)の64頁~66頁を,文章のみ引用します。

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豊前 骨をうずめる覚悟で 〔豊前ひまわり基金法律事務所〕

1 法の支配の国民的浸透を目指して

 「いつでも、どこでも、だれでも、法的サービスを受けられる社会」を実現したい。私のテーマであり、原点です。  福岡県豊前市に赴任し、私自身が、その礎となることができました。司法へのアクセス障害を改善し、地域の方々に良質なリーガルサービスを提供できるよう、日々邁進しています。

2 これまでの歩み

 私は、長崎県長崎市に生まれました。長崎県は、歴史ある自然豊かな魅力的な地域です。高校を卒業するまで、この街で楽しく過ごしました。  家族ともども、映画が好きで、よく見ていたものです。中学生のころ、「評決のとき」(ジョン・グリシャム原作)を見ました。黒人差別を背景とした重厚な作品ですが、被告人のために懸命に弁論をする弁護士の姿が、とても印象に残りました。そこで、法律の世界、弁護士に、興味を抱くようになりました。  その後、熊本大学法学部に入学し、司法制度改革をテーマに、論文を書きました。そのなかで、司法過疎偏在問題についても研究しました。私は、この問題におおいに関心を抱き、「地方でもリーガルサービスを行き届かせたい」という意を強くし、その後の進路が決まりました。  長崎県と同じ被爆地として関心を寄せていた広島県に行ってみたいという想いから、ロースクールは、広島大学法科大学院を選択しました。その後、2012年に司法試験に合格し、長崎修習を経て、念願の弁護士になることができました(66期)。  地方へ輩出する人材を育成するという理念に共感し、2013年12月より弁護士法人あさかぜ基金法律事務所にて、約3年間、お世話になりました。その後、縁あって、2016年10月より、同じ福岡県内にある司法過疎偏在地域、豊前市にて、開所する運びとなります。

3 豊前市の紹介

 豊前市は、福岡県の東南端に位置する、人口約2万6000人(2018年9月現在)、面積約111.10k㎡ののどかな地域です。修験道の遺跡で知られる求菩提山(くぼてさん)、天然記念物「ツクシシャクナゲ」の群生する犬ヶ岳に囲まれた盆地であるとともに、豊前海と面しており、山の幸・海の幸の両方が楽しめます。まわりに築上町・上毛町・吉富町の3町がならび、人口約6万人の豊築地域を形成しています。これが弊所の主な活動エリアです。  山国川を挟み、大分県との県境に位置しており、文化圏・経済圏としては、むしろ大分県中津市寄りの地域と思いますが、裁判所の管轄は、北九州市寄りにある福岡県行橋市に所在する裁判所です。弊所から中津市の裁判所までの所要時間は、車で約15分ですが、行橋市の裁判所までの所要時間は、車で約40分かかります。  福岡県は、公共交通機関として、西鉄バスが大きなシェアを有していますが、豊前市からは、残念ながら撤退しています。JRも本数が少ないです。その影響からか、圧倒的な車社会となっています。 高齢者が人口の約4割とも言われていますが、とても元気のよい方が多いような印象です。澄んだ空気、のどかな風景のなかで生活していることが、無関係ではないように思います。  熊本といえば「くまもん」が有名ですが、豊前市といえば「くぼてん」くんです。豊前市は天狗の街であり、いたるところに天狗の置物が散見されますが、求菩提山(くぼてさん)+天狗=「くぼてん」ということで、地元民に愛されるご当地キャラです。弊所では、弁護士バージョンの「くぼてん」くんを、弊所のマスコットキャラクターとして利用させていただいています。

4 弊所の活動風景

 取扱事件は、交通事故が多いです。受任事件全体の3割は占めます。車社会のなかで、避けられないのかもしれません。むちうち、物損の事案が多いですが、相手方が任意保険に加入していない事案も比較的多く(自賠責保険にすら入っていない方も散見されます)、啓発活動(?)も必要なのかなと感じ始めています。重症事案など深刻な事件もあります。  次に多いのは、債務整理と家事事件がそれぞれ2割程度です。債務整理は、自宅不動産と車、そのほか退職金などが問題になることが多く、難しい案件ばかりです。家事事件は、離婚などデリケートな問題を含みますが、開所当初、警戒されていたのか、ほぼまったく相談を受けませんでした。半年を過ぎたあたりから増加し始め、いまではコンスタントにご依頼をいただくようになっています。地域になじめてきた証拠だとすれば、うれしい限りです。相続関係のご相談も、よくお受けしますが、温和な地域柄か、激しく揉める事案は稀のように思われ、受任にまで至るものは少数です。  刑事事件も、時期によって違いはありますが、ある程度、途切れなく担当しています。受任事件の1割弱はあると思います。在宅事件では飲酒運転と産廃法違反が多い印象です。身柄事件は多種多様で、否認事件も少なくなく、自白事件も地域のしがらみで示談が難しいなど一筋縄ではいかないものばかりです。  その他様々な相談をお受けしていますが、来るもの拒まずのスタンスで、「紛争を解決する」という観点から、柔軟な発想で工夫を凝らして、事件処理にあたっています。  講演会の依頼も多く、これまでに、後見、虐待、消費者被害、経営、ハラスメント、コンプライアンス、事業承継などの講演を担当させていただきました。  距離、アクセスのバリアを取り除くことで、ある程度の潜在的なニーズはあったのかなと実感しています。開所したことが地域のお役に立てているのであれば、これほどうれしいことはありません。

5 事務所経営等

 弊所は、新規開設の事務所であって、ほぼ前例がありません。おっかなびっくりで始め、走りながら考えて進んできました。 当初から、あまりにも売上が少ないときもあり、このままやっていけるのかと不安になったものです。しかし、地元のさまざまな会に出席し、イベントにも参加するなどして、徐々に知り合いが増え、事件に真剣に取り組んでいるうち、次第に紹介も増えました。 これからも、地域に密着して、頑張っていきます。

6 地方での生活

 開所と同時期、婚姻し、妻の理解を得た上、現地に連れてきました。現在、第一子を授かり、家族ともども、楽しく生活しています。  豊前市の誇る求菩提山では山登りやキャンプができます。20ヘクタールの面積を有する天地山公園は、日本都市公園100選にも選ばれている雄大な公園であり、よく利用させていただきます。うみてらす豊前では、1階において、魚を直接見て楽しみながら買い物ができ、その場でさばいてもらうこともできます。2階においては、食堂・豊築丸にて、海の幸をふんだんに利用した食事をいただけます。地域巡りをするだけで、自然を、美食を、観光を楽しむことができますから、家族で出かけて、充実した息抜きの時間をいただけます。そのなかで、地域の情報を得て、経営や事件処理に活かすことができ、よい循環を得られています。  地方で定着するには、家族の理解が必須です。妻も、住みやすい地域、あたたかい人にめぐまれたと大変喜んでおり、幸いにも協力が得られておりますが、連れてきた私の責務として、家族を幸せにできるように頑張ります。

7 さいごに

 私は、実際に赴任してみても、豊前市で活動を続けていきたいという気持ちは変わりません。任期後も、この地で活動を続けていく所存です。 初志貫徹、地方のため、これからも尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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当該エッセイの著作権は,執筆者にあります。出典は,冒頭に示した「自由と正義」です。無断転載は禁止されていますので,ご注意のほど,よろしくお願いいたします。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。