私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
民法改正と交通事故1
民法改正により,消滅時効のルールが,ドラスティックに変更されます。
それに伴い,交通事故においても,時効について整理しておく必要があると思いました。
簡単にですが,整理しておきます。
消滅時効に関する,主な改正点は3つ。①起算点と時効期間の変更。②判例上除斥期間と解されていたもの(不法行為)が,時効とされた。③中断,停止という言葉がなくなり,完成猶予と更新という形で,再整理された。
消滅時効は,現行法では,原則として,権利行使できる時から10年であり,商事消滅時効は5年であり,その他民法の短期消滅時効や個別法の時効などがあるという状況でした。
改正法では,原則として,①権利行使ができると知った日から5年(主観的起算点),②権利行使できる時から10年(客観的起算点)。原則としては,時効は現行法より短くなりそうです。
例外的に,(例外1)不法行為に基づく損害賠償については,①損害および加害者を知ったときから3年,不法行為の時から20年とされ,
(例外2)生命身体の侵害の損害賠償については,権利行使できると知ったときから5年,権利行使できるときから20年とされます。
交通事故との関係でいうと,物損の関係は例外の1が適用になりますので,時効が知ったときより3年になります。
が,人損(生命身体侵害)の場合は,例外の2が適用になり,知ったときから5年になります。
民法改正による消滅時効の変更は,あくまで,一般法たる民法の改正に過ぎませんので,個別法の時効は別途の定めによります。たとえば,自賠法の時効3年は,そのまま時効3年です。
少し余計な話になりますが,労基法上,賃金債権の時効は2年です。これは,民法の短期消滅時効の1年を,特別法で延長し,労働者保護を図ったものです。ところが,民法の改正により,むしろ,労基法の時効の方が,短くなってしまいます。もともとの労基法の規定の趣旨と逆になってしまうので,この点の不整合を解消する必要があるのではないかというのは,残された課題のようです。
消滅時効は,弁護過誤の温床と言われ,複雑なルールを,特に気を付けて勉強していたものですが,改正法がドラスティックに整理した関係で,現行法をよく勉強している弁護士ほど,改正により混乱しそうな気がしますね。気を付けたいと思います。