私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
最高裁に告ぐ
法曹界の時の人,岡口基一裁判官の新刊レビュー第2弾です。
岡口裁判官は,書籍や情報発信など,法曹界のインフラの整備にもつとめている現役裁判官。ツイッターの投稿の件で,先般,分限裁判にかけられ,戒告処分になってしまいましたが,いまなお,今度は国会の訴追委員会との関係で,やり取りをしている最中です。
私も若手弁護士の1人だと思っていますが,若手で,岡口裁判官が出している,「要件事実マニュアル」「民事訴訟マニュアル」を持ってない人はいないのではないでしょうか,というぐらいに有名ですね(同書籍は「マニュアル」という名前からして依頼者の前では使いにくいですが,なかみは非常に整理されていて,最初に調べるものとしては最適の書籍です。)。
「最高裁に告ぐ」は,先日発売されたばかりですが,すでに増刷になっているとか。報道等で断片的に追いかけていた岡口裁判官の分限裁判につき,本人からの非常に詳細な経緯の説明や解説付きで,同事件の理解を深めるのに非常に役に立ちます。といっても,岡口裁判官の恨み節が展開されているわけではなく,岡口裁判官が,法的な視点で問題と思われることを深掘りした上,さらに,近時の最高裁の動向にまで視野を広げ,広く司法の在り方について問題提起しているものといえると思います。
さて,本作で直接取り上げられているのは,とある裁判について,興味深い論点があるということで,これを140字の字数制限があるツイッターで要約した内容を示したところ,この内容の発信が裁判官の懲戒事由にあたるとして裁判にかけられたものです。広島大学の法科大学院で,公法系に力を入れて勉強していましたが,試験によく出るものの,学説と判例を何度読み比べても,当初うまく腑に落ちなかったのが,表現の自由の分野です(他の分野でもそうなんでしょうが,憲法では頻出論点の為,接する機会が多かっただけかもしれませんが。)。報道の自由は,表現の自由のなかでも,特別な意味を与えられているように感じていますが,裁判官の表現の自由についても,広く表現の自由の問題というよりは,固有の問題のようにとらえて考えていました。従来から,裁判官を含む公務員について,中立・公正といっただけでなく,それ「らしさ」まで厳格に求め,結果として,裁判官の表現の自由についても,通常よりは制約が許容されてしまうのかな,どうなのかな,寺西判事補事件から今に至るまでで変化はあったのかな(最高裁でも,しばしば「時の経過」論というものが展開されます。)といった種々の論点につき,整理ができないままでいたところです。この点,今回の決定では,何らか重要な判断が示されるのではなかろうかと注目して経過を見守っていました。ところが,実際は,表現の自由の話には,わずか数行しか触れず,実質何らの説明もしていません。岡口裁判官でなくても,肩透かしをくらったような印象を持ってしまうのではないでしょうか。そのような審理・判断の問題点について,改めて考えることができてよかったと思います。ロースクールでも,表現の自由を学び考える,格好の材料になりそうですね。
読みやすく,それでいて内容も濃く,一気に読み通すことができました。
何といっても,本書の最大の見どころは,度々,ロースクール時代の恩師,新井誠先生のご意見が紹介されていたところです。みなさま,どうぞご注目ください。
例によって,本書も,弊所の相談室に備置することになります。ご興味のある方は,ぜひともお声掛けください。