私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

「争族」の火種~新型コロナ/相続税改正編~

新型コロナと相続。一見関係なさそうな2つが,実は新たな火種を呼んでいるそうです。どういうことか。相続税評価は今年の1/1時点の「路線価」で評価されます。コロナの影響は織り込んでない価格です。しかし,いま相続が発生したら,いま不動産の価格は下落する一方のようなので,実際の相続では評価の下がった不動産しかもらえないのに,相続税は高騰していた頃の評価で納めないといけないという形になります。コロナの影響がこんなところにも。

2019年7月(注:遺留分侵害額請求権が金銭債権化されました。寄与分制度が特別寄与料請求権になりました。故人の口座の預貯金の仮払い制度ができました。特別受益となる贈与に時効を創設しました。結婚20年以上の夫婦の自宅贈与を遺産分割の計算対象外とできるようになりました。),2020年4月(注:配偶者居住権が創設されました。)に始まり,2020年7月にも新法が施行される(注:自筆証書遺言が法務局で保管できるようになります。)改正相続法も,場合によっては,新たな火種となり得る様です。

たとえば,預貯金の仮払い制度。今までは相続人全員の印がなければ払い戻しができないのが通常でしたが,1行150万円を上限に,相続人単独で預貯金の払い戻しができるようになりました。預貯金が遺産分割の対象になるという最高裁判決の変更に伴い,遺産分割がまとまるまでいつまでたっても払い戻しができずに,たとえば相続税を払えない相続人が出て困窮してしまうことなどを回避すべく導入されたものと思いますが,逆に言えば,相続人1人の判断でさっと払い戻してしまって,後で相続人間で揉めることが考えられます。

配偶者居住権は,配偶者と他相続人があまり仲の良くないケースを想定して,本来は配偶者を保護する制度として創設されました。しかし,いま,節税目的での利用に注目が集まっていると言います。配偶者居住権は,原則として配偶者の死亡時に消滅します。二次相続まで考えると次のようになります。一時相続:配偶者居住権を設定。結果不動産の価値が減少。配偶者は配偶者控除があるため,ほとんどの場合,配偶者居住権(居住権)の取得に相続税がかからない。子どもは,価値の減少した不動産(所有権)を相続。評価の下がった不動産分の税金を納めればよいことになり,節税になる。二次相続:残った配偶者が亡くなると,原則として配偶者居住権は消滅する。二次相続では相続の対象にならない。不動産の所有権は既に子どもが取得しているため,相続税は課されない。トータルで見ると,配偶者居住権を利用しないケースより節税になる。

しかし,配偶者居住権は1度設定すると基本的に譲渡,売却できず,資金化できなくなるので,老人ホームへの入所資金など工面に困ることもあり得るようです。配偶者居住権の途中解除はできますが,所有者に贈与税がかかりますので,新たな火種になり得る様です。


ブロガー: 弁護士西村幸太郎

豊前の弁護士です。