私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
レビュー 恍惚の人
豊田四郎監督「恍惚の人」
有吉佐知子の名作を映画化!…とはいえ、この映画の情報を得るまでは、原作も知らなかったのですが。
きっかけは、長谷川式スケールで有名な長谷川先生の著書に触れたことです。認知症の歴史についても深く記述がされていました。この「恍惚の人」の原作がベストセラーとなり、映画化もされ、未だ「老人性痴呆症」「ボケ」などと言われていた時代、認知症や介護の問題につき提起し、政治でも取り上げられるようになったという流れがあるようです。
映画は全編白黒で、それこそ時代を感じさせますし、認知症患者と家族のかかわりというテーマからして、淡々と進んでいくような映画ですが、認知症のお義父さんの迫真の演技、これを介護する嫁(以前はお義父さんにいびられていた)のまた迫真の演技は見どころたっぷりでした。お義母さんの死をきっかけに、お義父さんに認知症の症状があらわれる。自分が食事をしたことを忘れ、すぐに腹が減ったといい(短期記憶の障害?)、息子の顔さえ忘れ、夜中に大騒動し(幻覚?)、息子を暴漢と間違え(妄想?)、「こんなばあさん知らん」と発言し(失見当識?)、徘徊し、骨壺内の妻の遺骨を食べようとし(異食)、急に怒り出し、便を周囲に塗りたくる。原作者は10年ほど取材して作品を世に出したそうですが、とてもリアルで勉強になりました。
衝撃を受けたのは、夫の役に立たなさ。「しょうがないじゃないか、親父はオレの顔も忘れてるんだから」「もう、殺してやれば」などと言って、すべて妻(嫁)に介護を押し付けている。いや、コレ、言っちゃったら私、妻に何を言われるか…他人ごとではないですね。横で一緒に見ていた妻が冷ややかな視線を向けており、他人事として処理をしてはいけないと自分を戒めました。
介護で疲弊して可哀そうな状態の際に、お義父さんが風呂場でおぼれかけ、「法的には、過失致死罪になるのよ。」などと発言しているところを見て、従前はいびられていたのに、これだけ身を粉にして介護して、挙句法的責任だけは負わされるのか…といたたまれなくなりました。
いまみても非常に勉強になる古典だと思いました。さまざまな問題点への気づきが得られます。DVDを購入したら映画評論家・佐藤忠男さんのコメントもついており、理解も深められました。おすすめの一作。次は原作を読んでみようかと思います。