私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
沈まぬ太陽 レビュー
山崎豊子原作「沈まぬ太陽」
先般,白い巨塔を見た影響か,山崎さんのドラマを見たくなって,最高傑作とも名高い「沈まぬ太陽」を見ました。
舞台はとある航空会社。ナショナル・フラッグ・キャリア。
第1部では,社内労働組合の委員長だったカリスマが,首相フライト阻止をストの戦略に用いたことから,以後会社に壮絶な差別的な扱いを強いられ,カラチ→テヘラン→ナイロビと,10年にもわたる僻地生活の様子を描く。
第2部では,520名もの死者を出した墜落事故への対応,会社の立て直しのために新たに就任した会長の奮闘,そこで明らかになる航空会社の腐敗について描く。
ドラマ(上川隆也主演)は,50分×20回の大ボリュームで,見ごたえたっぷりです。
対して,映画(渡辺謙主演)は,映画としては3時間半はある長編であるものの,やはりダイジェストのような感覚を持つことも否めません。といっても,決して映画はよくないと言っているわけではなく,たとえば,ラストの語りなどは,ドラマにはないものであって(ドラマでは同期の行天に対する手紙の内容が描かれているが,映画では事故被害者の坂口に対する語りが描かれている。),非常に印象的です。最初は僻地ナイロビに左遷されたとして気が狂うような経験をしている主人公恩地が,2回目のときには違った心境で,むしろ「アフリカに行きたい」という気持ちを大きくして,積極的にアフリカに行くという心の動きも印象的でした。
白い巨塔でもそうでしたが,山崎豊子作品では,対照的な2人の人物の交錯を通して物語を語る,という手段がよくとられるように思います。白い巨塔でいえば,財前教授と里見先生。同期の医師でありながら,そのポリシー,患者との向き合い方などは対照的でした。「沈まぬ太陽」では,恩地と行天。同期であり,当初は労働組合で一緒に活動していた同士だったにもかかわらず,途中で道をたがえ,恩地は僻地に流されようと信念を貫いて抗い,その信念に基づいて会社を変えようとしますが,行天は手段を択ばず出世を望み,その先に力を手に入れ,その力で会社を変えようとします。
結果は,恩地は再びナイロビ勤務へ,行天はこれまでの不当な行為が暴かれて起訴へということになってしまいます。
この作品,観ている途中は,てっきり,新会長が会社を立て直すのかと思いきや,さまざまな問題が噴出するだけ噴出した後,会長は更迭されることになるというもので,その先に会社が立ち直ったのかどうかは何ら描かれていないという展開でした。問題点を浮き彫りにした上,観ている者に考えさせる,「絶対安全」のために何をすればよいかを問いかけるといった意図があったのでしょうかね。
つらつらと書きましたが,ドラマと映画を見比べながら見ると面白いです。
ドラマ冒頭の団交のシーンは,「ほぅ。昔の団交はこういうものであったか」という感想で,あまり激しい団交というのを耳にしない現在において,弁護士としても,参考にさせていただける部分があったかなと思っています。
映画の最後で,行天に声をかける検察庁特捜の役が上川さんで,その上川さんがドラマでは主演を勤めているというめぐりあわせも面白いです。
観た人それぞれに感想があると思いますが,ぜひ意見交換をさせていただきたいと思います。