私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2018年
休車損について
物損でそう頻繁にお目にかかる費目ではないと思いますが,休車損という論点があります。
休車損(休車損害)とは,交通事故により損傷を受けた自動車(以下「事故車」といいます。)を修理し,又は買い替えるに相当な期間,事故車を運行に供することができないことによって被った得べかりし利益相当額の損害のことをいいます。平たく言えば,車がつかえていればこれだけ儲かってたのに,といった類の話です。
事故車が営業用車両(緑ナンバー)の場合,自家用車と異なり,レンタカーによる代用が難しいであろうことから,主に営業用車両につき,このような損害も賠償の対象として認められています。
では,どのようなとき,休車損が認められるのでしょうか。
①事故車を使用する必要性があること
②代車を容易に調達することができないこと
③遊休車が存在しなかったこと
・行政的規制の検討
・実働率の検討
※立証責任(被害者負担説が支配的見解)
④(?)事故後の売上高(運賃収入)が事故前のそれと比較して減少したこと(要件とすべきか争いあり)
問題になりやすいのは,③④かと思います。
③については,乗合バスは予備車を保有していることが事業許可の条件となっているため,事故車が出た場合には,特段の事情が認められない限りは,保有している予備車の活躍が期待され.休車損が否定されます。これに対し,貸切バス,タクシー,ハイヤー,トラックは,予備者の保有が事業許可の条件にはなっていないので,延実在車(保有車)の台数に対する延実働車(稼働車)の台数の比率(実働率)をチェックすることになろうかと思います。しかし,この実働率が何%以上であれば休車損を認めてよいのかというのもまた,難しい問題です。
④については,単に売上高の増減のみに着目するのではなく,その原因に目を向けるべきです。いわば戦力減の状況ではあったものの,偶然需要が高まることによって,事故前と同じ水準を確保でき,仮に事故車を稼働させて入れば,売上高を増加させることができたであろうという場合などは,休車損を認める余地があります。危機感を抱いた被害者が,顧客の維持を図ろうとして,事故前と比較して多額の経費を投入した結果,事故前と同じ売上高を確保することができたが,営業利益ベースでは減益になったという場合なども同様です。
なお,②に関連しますが,代車を用意できる場合は,代車代が問題になるだけで,休車損は認められません。
休車損の発生が認められる場合,その算定方法が,次に問題になります。
休車期間は,代車使用期間と同様に考えるべきとされています(代車代については,またそのうち記事にしたいと思います。)。
一般的に,その算定式は,以下のように考えられています。
(事故車両の1日あたりの営業収入-変動経費)×休車日数
営業収入や経費の金額は,事業者が運輸局長に提出することを義務付けられている「事業損益明細表」「実績報告書」などを参照するのが有用です。監督官庁に提出されるものだけに,客観性も担保されているということができるからです。そのほか,国土交通省自動車交通局編「自動車運送事業経営指標」も,一応の参考になります。
控除すべき経費は,変動経費とされています。変動経費は,たとえば,①燃料費,②修繕費,③有料道路通行料などが挙げられます。固定経費は,たとえば,④車両の減価償却費,⑤自動車保険料,⑥駐車場使用料などが挙げられます。
休車損は,得べかりし利益を損害として請求するものであり,「本来得られていたはず」というフィクションを立証するものでありますから,実損の議論に比べると評価もわかれ,難易度も高いと言えると思います。裁判例のなかでは,被害者側の立証活動が不十分であるがために休車損の請求が認められなかったものもあるようですから,積極的に裏付けとなる客観的な資料を収集し,証拠として提出する心構えが必要になります。
きくいもシンポジウム
平成30年12月22日(土),13時~,@コマーレ(福岡県築上郡築上町椎田962-8),「きくいもシンポジウム」が開催されました。
「きくいも」って,みなさまご存知ですか?私は,実は知人に教えてもらうまで,知りませんでした。会でも,まだまだマイナーな野菜ですが…ということでしたので,これから浸透していく野菜なのかなと思いました。そもそも,言葉の響きから「芋」だと思い込んでいましたが,イモ類ではあるものの,花は菊,根元の形はしょうがに似ている珍しい野菜ということです。私も,先日初めて食しましたところ(妻にきんぴらにしていただきました。)思ったよりも甘くて美味しかったです。
そんなきくいも,会のなかで紹介された「ここが凄い!」ですが…
①イヌリン含有量が野菜の中で1番!(ゴボウ10%,キクイモ20%)
②カリウム含量も高い!(生100gあたり…ジャガイモ410mg,キクイモ610mg)
③低カロリー!(生100gあたり…ジャガイモ76kcal,キクイモkcal)
④皮を剥かずに簡単調理。生でも,煮物,揚げ物でも!
⑤栽培しやすく,たくさん採れる!(1aで200kg以上の収量)
凄いじゃないですか。いかにも健康的なラインナップです。実際,食後血糖値の上昇を抑える,血中中性脂肪を低下させる,腸内環境を整える,高めの血圧を低下させるなどといった効用があるとのこと。調理しやすい,入手しやすいというのも魅力的。
きくいもに含まれるイヌリンは,お湯に溶けやすい性質があるため,煮物・汁物などにした場合は,煮汁も飲むようにすると,イヌリンをしっかり吸収できるとのことでした。
このように魅力あふれるきくいも,約30年前に,とある農家が,この味に感動して,中山間に栽培をはじめたということ。時は流れ,近時では,佐賀・福岡を中心に研究が進み,メディアにも取り上げられ,生産量も右肩上がり,その魅力が広まってきているとのこと。築上町は,まさに,町をあげて,「元気」な体,「元気」な街,「元気」な産業の発展に取り組んでいるところです。ただ,会のなかでは,「私たちは,ブームをつくりたいのではない,きくいもを定着させていきたい」という趣旨の発言もあり,このシンポジウムも,その一環として位置づけ,今後益々発展させていく旨の決意も示されていたところです。
築上町は現在,きくいも生産量西日本一となっています。みなさま,盛り上がっています築上町を,どうぞよろしくお願いいたします。
地元の名所「メタセの杜」でのお買い物,ふるさと納税などにも注目していただけますと幸いです。きくいもにもお目にかかれそうですね。
写真は,きくいものレシピと,会で現地販売されていたきくいも。堪能いたします。
弁護士としては,町の産業の発展のため,経営のサポートや,取引関係のリーガルチェックなどでトラブルを防止するなど,今後,機会があれば,何らかお役に立てればいいななどとも思いました。
古民家食庵 伝法寺庄 (旧竹内邸)
築上町。築城駅から、ずっと山の方に走っていくと…。
伝法寺圧(でんぼうじのしょう)に行ってまいりました。伝法寺が,平安時代に,宇佐神宮の荘園(神領)で,「伝法寺庄(でんぼうじのしょう)」と呼ばれたことにちなんで,ネーミングしたとのことです。
グーグルマップで見ると,ぽつんと表示される隠れ家的なお食事どころであり,地元では有名な,ランチが評判のお店だとか。ランチの予約は,今日の時点で,最速で4月にしか取れないほどの人気だそうです。金・土・日のみの営業で,今年はもう閉めるとのこと。予約が取れないとなると,なんとしても行きたくなって,予約を取りたくなりますよね。
今日は,夜の利用でしたが,鍋も非常に美味で,いま話題のきくいものきんぴらも美味しかったです。明日は,コマーレで,きくいものシンポジウムも開かれます。
みなさま,築上町は,築城基地だけではありません。さまざまなスポット名所に,各種イベント,ぜひぜひ盛り上がっている築上町を,これからもよろしくお願いいたします。
※夜のため建物の写真が撮りづらかったため,京築まるごとナビの写真を拝借して1枚張り付けておきます。
学問のすすめ
新聞は,主に前日のニュースの一覧性に優れており,新聞をめくり,見出しやレイアウトを確認するだけでも,ざっとニュースを概観できる点で,非常に優れていると思っています。なかみを詳しく読んで,興味がわいたら,関連書籍などを確認するきっかけにもなります。
雑誌もよく目を通しますが,雑誌の面白いところは,特集が組まれることです。特集では,読者の興味が高いと思われる内容につき,深めるような形で,記事がつくられています。
2018年12月22日号発行(17日発売)の週刊ダイヤモンドは,「学問のすすめ」の特集でした。なかなか面白かったので,備忘のため,記しておきます。
学問のすすめは,現代の大人にこそ読んでほしい,実用的な内容の書です。なによりも「独立せよ!」という内容を強調していますが,福沢諭吉の10の教えを列挙すると,以下のとおり。
①独立せよ!
②アリになるな!
③まず,やれ!
④実学が大事!
⑤知識を活かせ!
⑥交流・議論せよ!
⑦うらみは最悪だ!
⑧見た目は活発に!
⑨人望を高めよ!
⑩カネに支配されるな!
なかでも,人間社会において,最大の害になるのが,「怨望」であるとの教えは,印象に残りました。恨みは,言論と行動の自由が妨げられたときに生まれると分析。人間本来の自然な働きができず,運任せの状態になると,恨みが流行する。相手を恨まないでよいために,論破しようとしない。福沢諭吉が何より重視するのは「独立」ですから,それが害されるような場合にまで,他人と付き合う必要はありません。
古典の教えはさまざまなビジネスや,ひいては現代社会の企業又は個人の日々の生活において,大変参考になると思います。年末の時間があるときに,あなたも書に触れてみてはいかがでしょうか。
ふるさと納税
年末ですね。自営業者は,確定申告ひいては来年の税金を見越して,必要な節税を考える時期かもしれませんね。必要もないのにキャッシュを垂れ流すのはNGですが,必要な備品を年内に購入しておいたり,節税としての各種制度をうまく利用したり,いろいろ考えるかもしれません。
ふるさと納税も,よく知られた制度です。支払った金額は,控除の対象となり,豪華な返礼品がいただけます。故郷の発展に寄与もでき,大変良い制度ですね。最近は,返礼品合戦が問題視されるなど,ネガティブな話も多いですが,もともとは,地域の発展に寄与できる大変すばらしい制度です。
私も,活動エリアの品,施設利用について,いくつかふるさと納税をさせていただきました。ゆずの甘酒,温泉施設など,素晴らしい返礼品も用意されておりますので,豊前市,築上町,上毛町,吉富町のことも,ぜひよろしくお願いいたします。
新たな世界情勢の中で考える9条・戦争・平和・国民・自衛隊
北九州部会が定期的に開いている憲法市民講座。今回は,北九州市立男女共同参画センター・ムーブにて,柳澤協二さん(内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当していたとのことです。)に基調講演をいただきました。
新たな世界情勢の中で考える9条・戦争・平和・国民・自衛隊と題して,お話をいただきました。
私がまとめてしまうには,なかみの濃いものでしたので,メモ程度に記載をしておきます。
・改憲派の大きな論拠は,自衛隊を憲法に明記することが「抑止力」になるというもの。しかし,抑止の論理は,「着弾すればアメリカが報復する」(17年2月首相答弁)というもので,危険になったら助けてくれるというものであって,抑止=安全というものではない。
・抑止=より強い暴力による戦争意思の抑圧。戦争の不安があるから,力(抑止)による平和を目指してきた。これまでは。しかし,さきに見たとおり,抑止というのは,安全ではない。
・和解による平和は,戦争の不安からの解放。これを目指すべきではないか。
・トランプは,北朝鮮に対し,抑止ではなく,利益誘導(報償)(体制保障)により核の動機をなくした。このような外交手法は,評価しても良いのではないか。
…などなど。
大変勉強になりました。
最後に,委員長の挨拶がありました。弁護士ドットコムのランキングによると,今年のニュースの1位は,岡口裁判官の戒告処分でしたが,これは,現代社会のSNSの影響力の大きさの裏返しではないかとのこと。私のこの発信も,微力ながら,憲法に興味を抱いていただける人を1人でも増やしていけるよう,何かのお役に立てれば幸いです。
「押し買い」で宝石を失った
平成30年12月12日の西日本新聞に,私が書いた記事が掲載されていますので紹介します。コラム・ほう!な話です。
国民生活センターの最近の被害の情報を意識して,いまだ被害のある訪問購入について記事にしてみたものです。以前,訪問販売についても記事を書き,私も事件・訴訟で取り扱ったことがありますが,クーリングオフは無理由解除できる点で非常にすぐれた制度ですから,ぜひご活用いただければと思います。
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「押し買い」で宝石を失った
Q 1人暮らしの祖母が、「不要品を買い取る」と言って訪問してきた業者に、形見として大切にしていた宝石や貴金属を5万円で買い取られました。翌日、祖母が業者に電話し、宝石を返してと訴えましたが「もう遅い。クーリングオフはできない」と言われました。宝石を取り戻せませんか。
A 「押し買い」とも呼ばれる訪問購入の事案です。1人暮らしの女性や高齢者を中心に、考える余裕を与えず、高価なものが買い取られる被害が多発し、特定商取引法が改正され規制対象になりました。
買い取る際、業者は業者名や物品の種類、特徴、価格などを記した書面を交付しなければいけません。消費者は書面を渡された日から8日以内であれば、クーリングオフで契約を解除して物品を取り戻すことができます。「クーリングオフはできない」などと事実と異なることを告げられたり、すごまれたりして、クーリングオフを妨害された場合は、8日を過ぎても可能です。
ご相談のケースは、そもそも書面を受け取っていないようですから、クーリングオフができるでしょう。仮に書面を受け取っていても、法律上細かく決められた事柄が全て記されていないなど、書面に不備がある場合もクーリングオフが可能です。正しい書面を受け取っていたとしても、「クーリングオフはできない」とうそを言っているので、やはり可能です。
各地の消費生活センターや弁護士会などにも相談して対応を考えましょう。(西村幸太郎)
リフォーム工事トラブル
判断能力の乏しい高齢者等を対象として,訪問販売により執拗な勧誘を行い,不安をあおる言動や虚偽説明によって,必要のないリフォーム工事契約を締結させること等を特徴とする商法が,近年増加傾向にあります。
判断能力の乏しい高齢者,周囲にすぐに相談できる家族がいない一人暮らしの高齢者等を相手にするという特徴があります。さらに,不安をあおって強引に契約を締結させようとすることから,消費者側において,工事の必要性や契約内容を吟味せず,十分に理解できないままに契約をさせられてしまうこともあります。虚偽説明,詐欺的な勧誘等にも気を付けなければなりません。
その他,工事代金が不当に高額なケース,業者の技量不足や怠慢により極めて杜撰な工事しか行われないケースも多いです。
こうした消費者被害について,見守りなどによる予防の大切さは言うまでもありませんが,今回は,事後的に,どのような救済があり得るかを考えてみます。
まず,契約を解消することにより,代金を取り戻すなどして,救済を図る方向性があり得ます。特商法9条により,クーリングオフを検討します。訪問販売の場合,法定書面の交付から8日以内であれば,クーリングオフができます。法定書面が交付されているか,書面に不備がないかをしっかりチェックします。悪質な業者は,中途半端な書面を交付するのみで,法定事項をきちんと書いていないときもありますので,諦めずに検討します。
また,このような事案では,不実告知が認められることも多いですので,消費者契約法による取消しも検討できます。特商法9条の3による取消しも検討できます。
民法の意思表示規定に基づく取消し・無効,すなわち,詐欺取消し・錯誤無効も検討できるかもしれません(民法95条,96条)。
あまりに工事代金が高額である場合,暴利行為として,公序良俗違反の構成も検討してみましょう(民法90条)。
一連の勧誘行為が詐欺的だと評価できる場合,消費者が,業者に対し,不法行為に基づく損害賠償ができないか,検討の余地があります(民法709条)。
業者の工事が杜撰だという場合,債務不履行責任(民法415条)又は不法行為に基づく損害賠償責任を検討します。ただし,工事が一応の完成をしている場合,請負人の瑕疵担保責任(民法634条)の追及となる場合もあります。建物自体の損傷や,雨漏りの発生やその効果として損害が広がった場合などが例として挙げられます。
さまざまな法律構成が考えられるため,対処ができないわけではないですが,勝訴可能性とは別に,回収可能性も考慮しなければならないのが,消費者被害の難しいところです。弁護士費用の負担も考えると,ペイしない事案などは,やはり悩ましいですね。
そのような事態が避けられるよう,ひるがえって,法教育の浸透,地域ぐるみの見守りなどで,事前に予防ができるようになると,よいですね。
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特定商取引法
(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第9条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。
2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。
3 申込みの撤回等があつた場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者の負担とする。
5 販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利が行使され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
6 役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
7 役務提供契約又は特定権利の売買契約の申込者等は、その役務提供契約又は売買契約につき申込みの撤回等を行つた場合において、当該役務提供契約又は当該特定権利に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該特定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる。
8 前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
第9条の3 申込者等は、販売業者又は役務提供事業者が訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し次の各号に掲げる行為をしたことにより、当該各号に定める誤認をし、それによつて当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 第六条第一項の規定に違反して不実のことを告げる行為 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 第六条第二項の規定に違反して故意に事実を告げない行為 当該事実が存在しないとの誤認
2 前項の規定による訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。
3 第一項の規定は、同項に規定する訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。
4 第一項の規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間行わないときは、時効によつて消滅する。当該売買契約又は当該役務提供契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする
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消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 重要事項について事実と異なることを告げること。
当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供****すること。
当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。
5 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第三号に掲げるものを除く。)をいう。
一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの
三 前二号に掲げるもののほか、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情
6 第一項から第四項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
駐車場の事故
駐車場内の事故というのは,ある意味で,よくある事故ではないでしょうか。駐車場内は,車も人も多いですし,出入りも激しく,それでいて交通整理ができているところとできていないところが千差万別ですから,やむを得ないかもしれません。
弁護士にとっての駐車場内の事故というのは,またある意味でやっかいな事故です。駐車場内は,そもそもその形状が千差万別。その上,場内の通行ルールが確立されているわけでもありません。その通路が,「道路」なのか(道交法の適用があるのか?)といったレベルで議論があったりします。実際に,事故にあたっての車種・走行態様・衝突態様は,多種多様です。それでいて,損害は高額ではなく,物損に限定されるということも多くあります。損害額は高額ではないが,責任論(過失割合)などに時間が掛かり,その判断が難しいというのが,実際のところではないでしょうか。高額でない物損の場合,対物賠償保険を利用して等級を下げ,向こう何年の保険料を上げるより,自己負担した方がよいと判断する依頼者も多く,そうなると,自分の手出しとなるだけに,1割2割であったとしても,激しく揉めるということも多いと思います。
この点,確かに,実務でよく用いられる別冊判例タイムズ38が一定の基準を示していますが,類型化が難しいからか,その数も多いとはいえず,実際の事案の処理にあたっては,その基準をそのまま用いても良いのか疑問を持つことも少なくないです。裁判例も調べてみましたが,示談や和解で終わっているものが多いのか,それほど数は見当たりませんね。
基準は,大きく,①駐車区画内の事故と,②通行部分における事故,に区別され,この観点から基準化がされています。四輪車同士の事故の場合,①通行部分進行中の四輪車同士の事故,②駐車区画進入・退出車と通行部分進行車との事故,③駐車区画進入・退出車同士の事故,といった感じで類型化しています。
とはいえ,さきに述べたとおり,通路状にない通行部分の事故などにあっては,その態様がそれこそ多種多様で,類型化が難しいので,安易に何かの基準にあてはめるだけで考えようとせず,柔軟な発想が重要ではないかと思います。
駐車場内事故は多種多様で,その事案ごとの判断の要請が強いため,専門家の適切な助言が必要な分野ではないかと感じます。必要があれば,幣所にもぜひご相談ください。
なぜ 倒産
幣所では,多くの債務整理事案を取り扱っています。個人のお客様の場合,経済的に破綻してしまった,その混乱状態を収束させ,経済的な立ち直りを図り,改めて前向きなスタートを切るためのお手伝いをさせていただきます。
そのなかでも,さまざまな原因で,経済的な破綻をきたしていく様子を目にしてきました。企業の破産は,個人の破産ほどは取り扱いが少ないですが,必死に企業を守ろうとするものの,残念ながら破綻してしまうということがしばしば。人間模様を観察していると,さまざまな人生を背景に,各種各様の理由で,法的な整理に至っているさまを目にします。
そのような業務に日々携わっているわけですが,先日,「なぜ 倒産」という書籍を読みました。「なぜ 倒産」は,帝国データバンクや東京商工リサーチの協力を得ながら,日経トップリーダーが編集した,「失敗」に目を向けた異作の本です。サクセスストーリーではなく,失敗に目を向けて編集しているのが面白いですね。反面教師となるかもしれません。大企業ではなく中小企業についてまとめているところもよいです。
内容は,社長自らが話していたり,法的整理の申立人代理人弁護士,管財人弁護士が直接話しているところが少ないため,やや物足りない面もないわけではないですが,淡々とコンパクトにまとめられていて,読みやすいと思います。
多くの事例では,「成功したビジネスモデルから変わることができず,変化についていけない」「新規事業に投資したが失敗」「1つの取引先に依存し過ぎ」などなど,よく言われる失敗ではあるが,具体的な企業名を挙げてケース紹介をしており,経営者には耳が痛いお話もしばしばです。
こういった話を参考にして,少しでも企業が学びを得て,元気を出し,活力ある経営ができればと思います。私は,数としては破産手続の経験が最も多いと思いますが,経営再建的な業務にも携われますので,これらの業務にも活かしていきたいですし,私自身が超零細の個人事業主として経営していますので,本書の内容を糧にして,大きな失敗のないよう,堅実な経営を続けていきたいと思います。
あえていうと,さらにもう少し小規模の個人事業主,法人の事案ばかりを集めたもの,地方の事案ばかりを集めたものがあるとよいなと思います。
「成功はアートだが,失敗はサイエンス」という,冒頭のフレーズが印象的です。一読の価値ありと思います。おすすめです。