私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

リフォーム工事トラブル

判断能力の乏しい高齢者等を対象として,訪問販売により執拗な勧誘を行い,不安をあおる言動や虚偽説明によって,必要のないリフォーム工事契約を締結させること等を特徴とする商法が,近年増加傾向にあります。

判断能力の乏しい高齢者,周囲にすぐに相談できる家族がいない一人暮らしの高齢者等を相手にするという特徴があります。さらに,不安をあおって強引に契約を締結させようとすることから,消費者側において,工事の必要性や契約内容を吟味せず,十分に理解できないままに契約をさせられてしまうこともあります。虚偽説明,詐欺的な勧誘等にも気を付けなければなりません。

その他,工事代金が不当に高額なケース,業者の技量不足や怠慢により極めて杜撰な工事しか行われないケースも多いです。

こうした消費者被害について,見守りなどによる予防の大切さは言うまでもありませんが,今回は,事後的に,どのような救済があり得るかを考えてみます。

まず,契約を解消することにより,代金を取り戻すなどして,救済を図る方向性があり得ます。特商法9条により,クーリングオフを検討します。訪問販売の場合,法定書面の交付から8日以内であれば,クーリングオフができます。法定書面が交付されているか,書面に不備がないかをしっかりチェックします。悪質な業者は,中途半端な書面を交付するのみで,法定事項をきちんと書いていないときもありますので,諦めずに検討します。

また,このような事案では,不実告知が認められることも多いですので,消費者契約法による取消しも検討できます。特商法9条の3による取消しも検討できます。

民法の意思表示規定に基づく取消し・無効,すなわち,詐欺取消し・錯誤無効も検討できるかもしれません(民法95条,96条)。

あまりに工事代金が高額である場合,暴利行為として,公序良俗違反の構成も検討してみましょう(民法90条)。

一連の勧誘行為が詐欺的だと評価できる場合,消費者が,業者に対し,不法行為に基づく損害賠償ができないか,検討の余地があります(民法709条)。

業者の工事が杜撰だという場合,債務不履行責任(民法415条)又は不法行為に基づく損害賠償責任を検討します。ただし,工事が一応の完成をしている場合,請負人の瑕疵担保責任(民法634条)の追及となる場合もあります。建物自体の損傷や,雨漏りの発生やその効果として損害が広がった場合などが例として挙げられます。

さまざまな法律構成が考えられるため,対処ができないわけではないですが,勝訴可能性とは別に,回収可能性も考慮しなければならないのが,消費者被害の難しいところです。弁護士費用の負担も考えると,ペイしない事案などは,やはり悩ましいですね。

そのような事態が避けられるよう,ひるがえって,法教育の浸透,地域ぐるみの見守りなどで,事前に予防ができるようになると,よいですね。

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特定商取引法

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)

第9条 販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは特定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない

2 申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。

3 申込みの撤回等があつた場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。

4 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者の負担とする。

5 販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは特定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利が行使され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。

6 役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない

7 役務提供契約又は特定権利の売買契約の申込者等は、その役務提供契約又は売買契約につき申込みの撤回等を行つた場合において、当該役務提供契約又は当該特定権利に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該特定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる

8 前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

第9条の3 申込者等は、販売業者又は役務提供事業者が訪問販売に係る売買契約又は役務提供契約の締結について勧誘をするに際し次の各号に掲げる行為をしたことにより、当該各号に定める誤認をし、それによつて当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 第六条第一項の規定に違反して不実のことを告げる行為 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

二 第六条第二項の規定に違反して故意に事実を告げない行為 当該事実が存在しないとの誤認

2 前項の規定による訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもつて善意の第三者に対抗することができない。

3 第一項の規定は、同項に規定する訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込み又はその承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の規定の適用を妨げるものと解してはならない。

4 第一項の規定による取消権は、追認をすることができる時から一年間行わないときは、時効によつて消滅する。当該売買契約又は当該役務提供契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする

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消費者契約法

(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

第4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 重要事項について事実と異なることを告げること

 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供****すること

 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。

二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。

4 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの分量、回数又は期間(以下この項において「分量等」という。)が当該消費者にとっての通常の分量等(消費者契約の目的となるものの内容及び取引条件並びに事業者がその締結について勧誘をする際の消費者の生活の状況及びこれについての当該消費者の認識に照らして当該消費者契約の目的となるものの分量等として通常想定される分量等をいう。以下この項において同じ。)を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、消費者が既に当該消費者契約の目的となるものと同種のものを目的とする消費者契約(以下この項において「同種契約」という。)を締結し、当該同種契約の目的となるものの分量等と当該消費者契約の目的となるものの分量等とを合算した分量等が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合において、その勧誘により当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときも、同様とする。

5 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項(同項の場合にあっては、第三号に掲げるものを除く。)をいう。

一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの

三 前二号に掲げるもののほか、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情

6 第一項から第四項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

駐車場の事故

駐車場内の事故というのは,ある意味で,よくある事故ではないでしょうか。駐車場内は,車も人も多いですし,出入りも激しく,それでいて交通整理ができているところとできていないところが千差万別ですから,やむを得ないかもしれません。

弁護士にとっての駐車場内の事故というのは,またある意味でやっかいな事故です。駐車場内は,そもそもその形状が千差万別。その上,場内の通行ルールが確立されているわけでもありません。その通路が,「道路」なのか(道交法の適用があるのか?)といったレベルで議論があったりします。実際に,事故にあたっての車種・走行態様・衝突態様は,多種多様です。それでいて,損害は高額ではなく,物損に限定されるということも多くあります。損害額は高額ではないが,責任論(過失割合)などに時間が掛かり,その判断が難しいというのが,実際のところではないでしょうか。高額でない物損の場合,対物賠償保険を利用して等級を下げ,向こう何年の保険料を上げるより,自己負担した方がよいと判断する依頼者も多く,そうなると,自分の手出しとなるだけに,1割2割であったとしても,激しく揉めるということも多いと思います。

この点,確かに,実務でよく用いられる別冊判例タイムズ38が一定の基準を示していますが,類型化が難しいからか,その数も多いとはいえず,実際の事案の処理にあたっては,その基準をそのまま用いても良いのか疑問を持つことも少なくないです。裁判例も調べてみましたが,示談や和解で終わっているものが多いのか,それほど数は見当たりませんね。

基準は,大きく,①駐車区画内の事故と,②通行部分における事故,に区別され,この観点から基準化がされています。四輪車同士の事故の場合,①通行部分進行中の四輪車同士の事故,②駐車区画進入・退出車と通行部分進行車との事故,③駐車区画進入・退出車同士の事故,といった感じで類型化しています。

とはいえ,さきに述べたとおり,通路状にない通行部分の事故などにあっては,その態様がそれこそ多種多様で,類型化が難しいので,安易に何かの基準にあてはめるだけで考えようとせず,柔軟な発想が重要ではないかと思います。

駐車場内事故は多種多様で,その事案ごとの判断の要請が強いため,専門家の適切な助言が必要な分野ではないかと感じます。必要があれば,幣所にもぜひご相談ください。

なぜ 倒産

幣所では,多くの債務整理事案を取り扱っています。個人のお客様の場合,経済的に破綻してしまった,その混乱状態を収束させ,経済的な立ち直りを図り,改めて前向きなスタートを切るためのお手伝いをさせていただきます。

そのなかでも,さまざまな原因で,経済的な破綻をきたしていく様子を目にしてきました。企業の破産は,個人の破産ほどは取り扱いが少ないですが,必死に企業を守ろうとするものの,残念ながら破綻してしまうということがしばしば。人間模様を観察していると,さまざまな人生を背景に,各種各様の理由で,法的な整理に至っているさまを目にします。

そのような業務に日々携わっているわけですが,先日,「なぜ 倒産」という書籍を読みました。「なぜ 倒産」は,帝国データバンクや東京商工リサーチの協力を得ながら,日経トップリーダーが編集した,「失敗」に目を向けた異作の本です。サクセスストーリーではなく,失敗に目を向けて編集しているのが面白いですね。反面教師となるかもしれません。大企業ではなく中小企業についてまとめているところもよいです。

内容は,社長自らが話していたり,法的整理の申立人代理人弁護士,管財人弁護士が直接話しているところが少ないため,やや物足りない面もないわけではないですが,淡々とコンパクトにまとめられていて,読みやすいと思います。

多くの事例では,「成功したビジネスモデルから変わることができず,変化についていけない」「新規事業に投資したが失敗」「1つの取引先に依存し過ぎ」などなど,よく言われる失敗ではあるが,具体的な企業名を挙げてケース紹介をしており,経営者には耳が痛いお話もしばしばです。

こういった話を参考にして,少しでも企業が学びを得て,元気を出し,活力ある経営ができればと思います。私は,数としては破産手続の経験が最も多いと思いますが,経営再建的な業務にも携われますので,これらの業務にも活かしていきたいですし,私自身が超零細の個人事業主として経営していますので,本書の内容を糧にして,大きな失敗のないよう,堅実な経営を続けていきたいと思います。

あえていうと,さらにもう少し小規模の個人事業主,法人の事案ばかりを集めたもの,地方の事案ばかりを集めたものがあるとよいなと思います。

「成功はアートだが,失敗はサイエンス」という,冒頭のフレーズが印象的です。一読の価値ありと思います。おすすめです。

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豊前 骨をうずめる覚悟で

弁護士は,日本全国の弁護士で構成する日本弁護士連合会と,各県を単位とする単位会(私の場合は福岡県弁護士会)に必ず所属しています(強制加入団体)。

その,通称日弁連が発行する書籍として,「自由と正義」という雑誌があります。最新の法的な議論について紹介や,連載,寄稿,研修情報,各種資料などさまざま有益な情報が紹介されています。

そのなかで,豊前,弊所の紹介のエッセイを執筆する機会をいただきましたので,ご紹介させていただきます。

以下,自由と正義2018年11月号(vol.69,No.11)の64頁~66頁を,文章のみ引用します。

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豊前 骨をうずめる覚悟で 〔豊前ひまわり基金法律事務所〕

1 法の支配の国民的浸透を目指して

 「いつでも、どこでも、だれでも、法的サービスを受けられる社会」を実現したい。私のテーマであり、原点です。  福岡県豊前市に赴任し、私自身が、その礎となることができました。司法へのアクセス障害を改善し、地域の方々に良質なリーガルサービスを提供できるよう、日々邁進しています。

2 これまでの歩み

 私は、長崎県長崎市に生まれました。長崎県は、歴史ある自然豊かな魅力的な地域です。高校を卒業するまで、この街で楽しく過ごしました。  家族ともども、映画が好きで、よく見ていたものです。中学生のころ、「評決のとき」(ジョン・グリシャム原作)を見ました。黒人差別を背景とした重厚な作品ですが、被告人のために懸命に弁論をする弁護士の姿が、とても印象に残りました。そこで、法律の世界、弁護士に、興味を抱くようになりました。  その後、熊本大学法学部に入学し、司法制度改革をテーマに、論文を書きました。そのなかで、司法過疎偏在問題についても研究しました。私は、この問題におおいに関心を抱き、「地方でもリーガルサービスを行き届かせたい」という意を強くし、その後の進路が決まりました。  長崎県と同じ被爆地として関心を寄せていた広島県に行ってみたいという想いから、ロースクールは、広島大学法科大学院を選択しました。その後、2012年に司法試験に合格し、長崎修習を経て、念願の弁護士になることができました(66期)。  地方へ輩出する人材を育成するという理念に共感し、2013年12月より弁護士法人あさかぜ基金法律事務所にて、約3年間、お世話になりました。その後、縁あって、2016年10月より、同じ福岡県内にある司法過疎偏在地域、豊前市にて、開所する運びとなります。

3 豊前市の紹介

 豊前市は、福岡県の東南端に位置する、人口約2万6000人(2018年9月現在)、面積約111.10k㎡ののどかな地域です。修験道の遺跡で知られる求菩提山(くぼてさん)、天然記念物「ツクシシャクナゲ」の群生する犬ヶ岳に囲まれた盆地であるとともに、豊前海と面しており、山の幸・海の幸の両方が楽しめます。まわりに築上町・上毛町・吉富町の3町がならび、人口約6万人の豊築地域を形成しています。これが弊所の主な活動エリアです。  山国川を挟み、大分県との県境に位置しており、文化圏・経済圏としては、むしろ大分県中津市寄りの地域と思いますが、裁判所の管轄は、北九州市寄りにある福岡県行橋市に所在する裁判所です。弊所から中津市の裁判所までの所要時間は、車で約15分ですが、行橋市の裁判所までの所要時間は、車で約40分かかります。  福岡県は、公共交通機関として、西鉄バスが大きなシェアを有していますが、豊前市からは、残念ながら撤退しています。JRも本数が少ないです。その影響からか、圧倒的な車社会となっています。 高齢者が人口の約4割とも言われていますが、とても元気のよい方が多いような印象です。澄んだ空気、のどかな風景のなかで生活していることが、無関係ではないように思います。  熊本といえば「くまもん」が有名ですが、豊前市といえば「くぼてん」くんです。豊前市は天狗の街であり、いたるところに天狗の置物が散見されますが、求菩提山(くぼてさん)+天狗=「くぼてん」ということで、地元民に愛されるご当地キャラです。弊所では、弁護士バージョンの「くぼてん」くんを、弊所のマスコットキャラクターとして利用させていただいています。

4 弊所の活動風景

 取扱事件は、交通事故が多いです。受任事件全体の3割は占めます。車社会のなかで、避けられないのかもしれません。むちうち、物損の事案が多いですが、相手方が任意保険に加入していない事案も比較的多く(自賠責保険にすら入っていない方も散見されます)、啓発活動(?)も必要なのかなと感じ始めています。重症事案など深刻な事件もあります。  次に多いのは、債務整理と家事事件がそれぞれ2割程度です。債務整理は、自宅不動産と車、そのほか退職金などが問題になることが多く、難しい案件ばかりです。家事事件は、離婚などデリケートな問題を含みますが、開所当初、警戒されていたのか、ほぼまったく相談を受けませんでした。半年を過ぎたあたりから増加し始め、いまではコンスタントにご依頼をいただくようになっています。地域になじめてきた証拠だとすれば、うれしい限りです。相続関係のご相談も、よくお受けしますが、温和な地域柄か、激しく揉める事案は稀のように思われ、受任にまで至るものは少数です。  刑事事件も、時期によって違いはありますが、ある程度、途切れなく担当しています。受任事件の1割弱はあると思います。在宅事件では飲酒運転と産廃法違反が多い印象です。身柄事件は多種多様で、否認事件も少なくなく、自白事件も地域のしがらみで示談が難しいなど一筋縄ではいかないものばかりです。  その他様々な相談をお受けしていますが、来るもの拒まずのスタンスで、「紛争を解決する」という観点から、柔軟な発想で工夫を凝らして、事件処理にあたっています。  講演会の依頼も多く、これまでに、後見、虐待、消費者被害、経営、ハラスメント、コンプライアンス、事業承継などの講演を担当させていただきました。  距離、アクセスのバリアを取り除くことで、ある程度の潜在的なニーズはあったのかなと実感しています。開所したことが地域のお役に立てているのであれば、これほどうれしいことはありません。

5 事務所経営等

 弊所は、新規開設の事務所であって、ほぼ前例がありません。おっかなびっくりで始め、走りながら考えて進んできました。 当初から、あまりにも売上が少ないときもあり、このままやっていけるのかと不安になったものです。しかし、地元のさまざまな会に出席し、イベントにも参加するなどして、徐々に知り合いが増え、事件に真剣に取り組んでいるうち、次第に紹介も増えました。 これからも、地域に密着して、頑張っていきます。

6 地方での生活

 開所と同時期、婚姻し、妻の理解を得た上、現地に連れてきました。現在、第一子を授かり、家族ともども、楽しく生活しています。  豊前市の誇る求菩提山では山登りやキャンプができます。20ヘクタールの面積を有する天地山公園は、日本都市公園100選にも選ばれている雄大な公園であり、よく利用させていただきます。うみてらす豊前では、1階において、魚を直接見て楽しみながら買い物ができ、その場でさばいてもらうこともできます。2階においては、食堂・豊築丸にて、海の幸をふんだんに利用した食事をいただけます。地域巡りをするだけで、自然を、美食を、観光を楽しむことができますから、家族で出かけて、充実した息抜きの時間をいただけます。そのなかで、地域の情報を得て、経営や事件処理に活かすことができ、よい循環を得られています。  地方で定着するには、家族の理解が必須です。妻も、住みやすい地域、あたたかい人にめぐまれたと大変喜んでおり、幸いにも協力が得られておりますが、連れてきた私の責務として、家族を幸せにできるように頑張ります。

7 さいごに

 私は、実際に赴任してみても、豊前市で活動を続けていきたいという気持ちは変わりません。任期後も、この地で活動を続けていく所存です。 初志貫徹、地方のため、これからも尽力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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当該エッセイの著作権は,執筆者にあります。出典は,冒頭に示した「自由と正義」です。無断転載は禁止されていますので,ご注意のほど,よろしくお願いいたします。

ジャスティス(アル・パチーノ主演の法廷ドラマ)

これまた古い映画ですが,アル・パチーノ主演,「ジャスティス」(1979年)を観ました。若干ネタバレになりますが,ネタバレしないとコメントがかけませんのでご容赦ください。

主人公の弁護士アーサー(アル・パチーノ)は,厳格な法の遵守ばかりを旨とする裁判官フレミングと何度も衝突する熱血漢。日々,信条に従う弁護活動に努めていた最中,くだんのフレミング判事が告訴される。さまざまな思惑がうごめくなか,弁護を引き受けることになったアーサーは,ラストシーン,正義,倫理観との戦いを強いられる。

ラスト近く,ある情報筋から仕入れた情報から,アーサーは,フレミングの有罪を確信,フレミング自身も否定しない。アーサーは,弁護人としての立場と,被害者の手前における,正義や倫理観と戦うことになるが,結局,弁護人として,被告人フレミングの有罪冒陳を行うという決断をした,,というものです。

映画を観終わって,いろいろとレビューを観ていると,それなりに好意的な意見もあって,確かに派手なシーンがないわりに(しかし,ラストの冒陳を含め,印象的なシーンは多数。),ラストは予想外の展開(てっきり,はじめは敵対していた判事と弁護人の溝が近まり,ラストは無罪を勝ち取るのかと思っていた。)であり,とても印象的な物語ではありましたが,弁護士としてはどうかと思いました。

アメリカと日本ではまた違うかもしれませんが,日本では,弁護士職務基本規定第46条・「弁護士は,被疑者及び被告人の防御権が保障されていることに鑑み,その権利及び利益を擁護するため,最善の弁護活動に努める。」(最善弁護義務)とされています。

被告人が(仮に裏では犯行を否定していなくとも)裁判上は無罪主張をしようとしている場合に,冒頭陳述で,「被告人は有罪」と述べたり,それだけでなく「検察官は被告人を有罪にできない,なぜなら私が有罪にするからだ!」などと述べるのは,どう考えても弁護人としては許されない行為だと思います。

もちろん,葛藤の上,許されない行為を乗り越え,被害者のために有罪冒陳をするという選択をしたというところに,映画としてのドラマ性があるのかもしれませんが,実際,これを日本でやったら,懲戒は間違いないでしょうね…

ドラマを純粋に楽しめない,無粋な弁護士による無粋なコメントかもしれませんが,今回はコメントせずにはいられず,筆をとった次第です。

刑事事件の難しさを,改めて考えさせられたような気がした作品ではありました。法科大学院の法曹倫理などで教材にしたら面白いのではないかと思います。

後遺症等級認定の争い方-むちうち損傷を中心に

幣所で扱っている交通事故事案の大半は,いわゆるむちうち事案です。むちうちというのは,いわゆる自覚症状が中心で,客観的な裏付け,原因がよくわからないものであって,それゆえに,評価的な部分が大きく,揉めやすいと言えます。いろいろな論点がありますが,特に,後遺障害等級認定を得られるかどうかは,最終的な損害賠償額の決定において,大きなボリュームを占めますから,非常に大事な論点です。が,実際は,被害者請求をしても,後遺障害と認められないことが多いです。この悩ましい問題につき,弁護士になりたてのころは,等級獲得のための明確な基準というものを示しているものがわからずに,四苦八苦していました。いまでも悩んでいるところではありますが,一般に言われている「むちうち損傷の後遺障害等級」について,多少のまとめをしてみたいと思います。

後遺障害の問題としては,そのほとんどが,非該当⇔14級⇔12級となると思います。

12級12号(局部に頑固な神経症状)と認められるのは,他覚的検査(画像診断や平衡機能検査など)で医学的に症状を説明できる異常所見が明らかに認められるものといわれており,症状の程度としては,通常の労務に服することはできるが,時には強度の症状(疼痛や眩暈など)のため,ある程度差支えがあるもの,と言われています。

14級10号(局部神経症状)と認められるのは,他覚的検査で明らかな異常所見は認められないが,症状が医学的に合理的に説明あるいは推定できるものといわれており,症状の程度としては,通常の労務に服することはできるが,受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものと言われています。

本来,後遺障害の概念として,永久残存性が言われるが,そうであればそのダメージは生涯負荷を与え続けるものでなければなりません。ところが,むちうち症起因の神経症状は,「捻挫」を中核とする多彩な症状(放散痛,痺れ感,肩凝り,抑うつ症状に至るまで)の集合であって,その障害の永続的残存性に確たる信念が持てるものではありません。そのため,法的な解決を図るには,①「障害の永続的残存性」を重視して,軽微神経症状の類の症例は,後遺障害として一切評価しないとする方向性,②軽微神経症状であっても後遺障害として評価する代わりに,「障害の永続的残存性」を緩く解釈して一定の年数のみ障害評価を行う方向性が考えられます。自賠責実務は①と厳しく,裁判実務は②と言われています。

厳格な自賠責での等級認定のなかでも,どういう場合に14級が認められるかは難しいところですが,

症状について医学的な証明まではできないが,医学的な合理的な説明ができる場合,あるいは自覚症状が故意の誇張でないと医学的に推定される場合といわれます。神経根症状型については,①画像所見上は,明らかな神経根の圧迫等は認められないが,頚椎椎間板の膨隆等による神経圧迫を示唆する程度の画像所見があり,かつ,②神経学的検査所見において神経症状を示す所見が得られている場合には,おおむね14級とされやすいと言います。

基本的には,12級を目指したいところですが,12級は,①画像から神経圧迫の存在が考えられ,かつ,②圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された場合に,医学的証明があったとされやすいです。

①については,X線,CT,MRIによって神経圧迫の存在が認められるかが重要です。ただし,画像から認められる神経根の圧迫と受傷によって出現した痺れ等の部位が当該神経の支配領域に合致している必要があります。②については,神経学的検査にはいろいろあるため,基準化は難しく,訴えられている症状と得られている所見との関係を考慮しながら認定をしていきます。

以上のような話は,ものの本に明確に書いてあるものも少ないと思いますが,実務家として,きちんと意識して活動しているところです。私の経験上も,むちうちで等級を獲得するのはなかなか骨が折れるところではあるのですが,きちんと検討しながら,ご依頼者様の最大の利益を得られるよう,これからも精進していきたいと思います。

自転車事故について

近頃,重大な結果を生じさせる自転車事故が報道されて注目を集めたり,事故の原因にもなる自転車運転のマナーについて議論されたり,新たに保険が整備されたりと,自転車事故については,注目すべき分野です。弁護士会の研修においても,取り上げられました。備忘の意味も込め,いくつかメモしておきます。

・自転車事故に特徴的な負傷部位として,「腕部」「脚部」の割合が比較的高い。重傷事故の場合,車の事故も自転車の事故も,頭部や頸部が多い。

平成28年の福岡県の交通事故多発交差点・第1位/湯川交差点・第2位/外環西口交差点・第3位/清水交差点

・自転車は,原則,「軽車両」(道交法2条1項8号,11号)として規制を受ける。ただし,特例として,自転車道の通行義務,普通自転車の歩行通行,横断・交差点の通行,普通自転車の並進,制動装置等,ヘルメット装着の努力義務などがある。軽自動車としての規制としては,路側帯の通行,車道の左側端通行義務,二段階右折義務などがある。自転車には運転免許制度がない。これらの違いを意識して,過失割合等を考えていく。

・自転車事故には,自賠法の適用がなく,自賠責保険の適用を考えられない。民法709条による。責任主体論が大きな意味を持つ。子どもの責任能力,親権者の責任(民法714条,709条)。子どもの責任能力が微妙なら,子と親と双方を訴える。通常共同訴訟,単純併合。①親が子の危険な運転を現認しているのに注意しなかった,②事故をおこす蓋然性の高い事故歴等があるのに,親が子の運転を禁止しなかった,③運転に支障を及ぼす子の体調不良等の状態を親が看過し運転を止めさせなかった,などの事情があれば,親の監督義務違反(民法709条)を問えるかも。

福岡県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例・第10条・児童等を保護する責任のある者(以下「保護者」という。)は,その保護する児童等に対し,自転車交通安全教育を行うよう努めなければならない。

条例のポイント:①夜間のライト点灯,傘さし運転の禁止など,自転車利用者の責務の明確化,②子どもや高齢者のヘルメット着用など,交通安全教育の充実,③自転車小売業者による保険加入や安全利用に関する情報提供の義務化,④自転車利用者(保護者,事業者)に対する自転車損害賠償保険の努力義務化。

・自賠責保険がないので,訴訟前に後遺障害を認定する機関がない。損保料率機構が判断をしてくれる車の事故と比べて,たとえば神経症状等は,裁判所でもなかなか認められないというような感触。

・自転車事故の特殊性として,自動車とは異なる法規制,特殊な運転慣行がある。歩行者に対する優位性,自転車の物理的特徴(小回りが利く,操作性が高い)などがある。自動車の過失相殺基準をそのままあてはめることはできない。自動車事故に比べると結果重大といえる事案が相対的に少なく,基準化も難しかった。

・過失相殺は,判タ38(自転車vs歩行者のみ基準化),第一次試案(自転車vs自転車にも言及)を参考にする。

・加害者側の保険として,①個人賠償責任保険,②TSマーク保険,などがある。

・被害者側の保険として,③傷害保険,④人身傷害保険,(TSマーク保険),がある。

・TSマーク保険は,「自転車」についている保険。TS=Trafic Safetyマークとは,自転車を利用する人の求めに応じて自転車安全整備店の自転車安全整備士が,自転車の点検・整備を行い,その自転車が道交法令等に定める安全な普通自動車であることを確認したときに,その証として貼付されるもの。

ふくおかの県民自転車保険の利用を検討する。

自転車事故についても,より理解を深めていきたいと思います。

だいじょうぶ!親の離婚

子どものためのガイドブック―「だいじょうぶ!親の離婚」という本があります。

たとえば,いまや弁護士向けの離婚に関する本,より一般人向けの離婚の本は多数あります。離婚を背景として,子どもを主人公とする絵本や物語もあるでしょう。

ところが,「子どもに向けて」親の離婚について考える,教える,教材として適切な本というのは,多くないようです。本書は,もとはアメリカの本を翻訳したものですが,夫婦の離婚を解決するために,「子どもに」向けて話をすべきことがよくまとめられていると思います。アメリカと日本では制度が違うので,ラストに「子どものための解説」として,日本の制度の説明もあります。

日本の離婚調停では,夫婦が一生懸命にお互いの主張を言い合っている様子が一般的に思うのですが,どことなく子どもが登場することが少ない。裁判所も,子の福祉,子の福祉というわりには,子どもに会ったこともないのに,子どものためになるからと言って面会させようとするということがしばしばです。きちんと会って,話して,子どもともコミュニケーションをとって,夫婦子どもともに勉強をして,将来に向けて,新たに良い関係を築いていくというのが理想だと思うのですが,なかなかそうはいかないようです。しかし,弁護士として,理想を実現できるよう,さまざまな工夫を凝らして,これからも,家族の在り方を模索していかなければならないのだと思っています。

本書は,子どもに対する説示,勉強に,とても役立つツールとなり得ると思います。私も,さまざま勉強して,よりよい弁護活動につとめていきたいです。

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仏の里くにさき・とみくじマラソン大会

国東(くにさき)半島は,九州の最東端にぽこっと飛び出た,特徴のある半島です。大分空港をご利用の方は,その周辺部として,把握されている方も多いのではないでしょうか。

平成30年11月11日(日),同半島で,「仏の里くにさき・とみくじマラソン大会」が開催されました。弊所からも弁護士・事務局ともども,参加してまいりました。

マラソン途中には,「開運橋」を通過するなど,弊所の今後の開運を記念してという意味も込めての参加です。

いきなりフルマラソンというのは,ハードルが高かったかもしれませんが,たまには大自然と触れ合いながら,自分の限界にチャレンジしてみるのもよいかと思いました。

一応,若いころは,陸上部(主に中距離走)だったのですが,運動不足には勝てないですね。息切れをするなどというより,とにかく,進めば進むほど,足が割れそうに痛い。体重のせいで足に負担がかかっているという面もあるでしょうが,犬鼻峠の上り坂は心を折るに十分な破壊力をもち,かなりしんどいマラソンでした。私は,残念ながら,午後2時までに30kmの関門を突破できませんでしたが,事務長は完走しました。おめでとうございます。

しかし,今回地獄を見た上(笑),開運橋もしっかりと通ってきましたので,これから1年,開運,上昇運となるばかりです。ご依頼者様への還元もできるはずです。「とみくじ」=富来路ですし,験担ぎはばっちり。体を鍛えて,また開運橋を通過しながら,完走にチャレンジしてみようと思います。

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いとこのビニー

「いとこのビニー」

かなり古い映画(1992年)ですが,なかなか面白かったです。

基本的なストーリーとしては,えん罪で裁判にかけられた2人の若者が,絶体絶命の中で,いとこのビニーによって無罪を勝ち取る物語。

えん罪という重いテーマを扱いながら,全体としては,弁護人のビニー(ジョー・ペシ)のキャラクター的に,コメディ・タッチで進行していきます。それでいて,都心部から田舎に来た若者がその地で殺人の罪を疑われるという構図上,地方における差別・偏見の問題など,深いテーマに挑んでいるような側面も垣間見えます。

どこまでがリアルなのか判断がつきかねますが,権威をふるう裁判官の様子も,日本とはだいぶ違いますね。本作の(法曹関係者における)最大の見どころは,反対尋問でどのように証人を突き崩すかというところですが,法廷でメジャーを持ち出して距離を測りながら視力の実験をしたり,視認状況につき,障害物となり得るものを1つ1つ質問を重ね,最後にそれでも見えたのかと追いつめる様子など(注:一般論としては,そんな質問しなくても,見えなかったのではという評価は弁論で意見すればよいのではと言われていますが。),なるほど~と思った突き崩し方も散見されました。

まあ,現実でこんなにうまくいくかはさておき,証人テストをみっちりやって尋問にのぞんだり,基本に忠実に,成功をおさめているようにも思いましたので,素直にいいところを吸収していきたいと思います。

そんな難しい話は考えなくとも,導入部から,かみあわない登場人物のやり取りがコメディ・タッチで描かれ,法廷初参戦のいとこのビニーが成長していき無罪を獲得する様は,とても痛快で,面白かったです。おすすめの一作。