私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2019年7月
交通事故の被害者側代理人が知ってお得な経験知識
今年の日弁連夏季研修では,交通事故に強い菅藤浩三先生により,「交通事故の被害者側代理人が知ってお得な経験知識」と題して,研修が行われました。私も,交通事故を数多く扱っておりますので,ぜひともお聞きしたいと思い,遠路はるばる,福岡市六本松まで,足を運んできました。
もちろん,これですべてではありませんが,気になったことをメモ程度に。
・交通事故から1か月以内くらいの早期相談者…被害者にノーマルストーリー,弁護士を介入させる意味を理解してもらう。
・治療打ち切りへの対策としての転医は,おすすめしない。後医が,症状固定を判断するのが,難しいから。
・一括対応の時期延長交渉を希望する方は多い。しかし,せいぜい1か月くらいが限度で,劇的に伸長は難しいのではないか。骨折などの場合は別。打ち切り後も通いたい場合は,健康保険を使う。この場合,第三者加害行為による傷病届の提出を忘れない。
・通院交通費などについては,自己申告をうのみにするのではなく,しっかり調べることも重要。こういうところで信用を落とさないことが,全体として解決水準を下げないようにするために重要。
・裁判により等級を上げようとして,返り討ちにあう事案もある。訴訟提起する場合は注意。
・一括払いしていた相手方損保が訴訟で施術期間を争うのは信義則違反か?→信義則違反ではない(福岡高判2004.2.28,東京高判2015.2.26)。
・治療途中に別の交通事故に遭い同一部位を負傷した場合…第2事故に遭遇した日以降の損害はどちらの当事者が分担負担する?…連帯責任にはならない。各事故の寄与度を自由心証で定める。訴訟も覚悟せざるを得ない。具体的には,赤本2016年下巻講演録参照。
・担当医が非協力的な場合,転医による対応を考える場合は,できるだけ早期に行う。
・分損の適正修理費用の紛争については,①そのキズが当該事故によるものか(事故とキズとの因果関係),②板金修理で済むか部品交換が必要か(選択する手段の適正),③標準作業点数との乖離,さらにはレバーレートの違い(単価の適正)が問題になり得る。
・レバーレート(工賃単価)×標準作業点数(指数)=作業工賃
・標準作業点数は,自動車整備標準作業点数票でわかる。
日常的な業務のなかで,共感できるところ,参考にできるところ,応用できるところがたくさんありました。この研修内容も生かして,より充実した弁護活動を行っていきたいと思います。
検察側の罪人
「検察側の罪人」
キムタクと二宮さんのダブル主演のリーガルサスペンスです。タイトル借りで見てみましたが,なかみはなかなか難解でした。
エッセンスとしては,時効で裁かれない者を放置するのは不正義ではないかという観点から,ついには自ら手を汚してしまう検事と,自らのストーリーに固執して捜査をすすめようとする検事に疑念を抱く検事の間で,それぞれの正義の形を描きながら,捜査機関が追い求めるべき「正義」とは何かを考えさせる映画かなと思いました。
語りつくされたと言えば語りつくされてきたテーマかもしれませんが,それだけに深いような。しかし,取調べシーンは,いまどきこんな取調べしてたら大問題だろうというぐらいリアリティのない叫んでばかりの取調べで,あまり共感できませんでした。むしろ,いまでも重大事件だと,あんな極端な取調べがあってるのかしら。
全体的に重苦しく,結末も気持ちのよいものではないので,観てて楽しくなるような感じの作品ではないですが,検事が追い求めるべき「正義」について考えたい方にはおすすめです。
「民事紛争ネットで解決」日経新聞記事の感想
令和元年7月7日(日)日経新聞の一面に,木になる記事がありました。先般行った支部交流会(裁判のIT化)にもかかわる内容ですので,取り上げます。
記事によると,政府は,離婚や交通事故といった民事紛争を,インターネット上で解決する仕組みづくりに乗り出すとのこと。記事の書きぶりからは,裁判のIT化の話をしているのか,裁判外の紛争解決のための仕組みの話も含むのか,判然としないところがありましたが,おそらく裁判のIT化の話をしているのでしょう。
ネット上で手続ができること自体は,悪いことではないと思いますが,情報管理の問題やシステム構築をどうするのかなど,課題は山積みのように思います。また,紛争を解決するという事柄の性質上,すべてネット上で行って当事者の納得のいく解決ができるのかも,疑問がないわけではありません。ある程度は,出頭・対面なども併用していくことは必要ではないかということも踏まえて,検討していただきたいと思います。
仕組みが出来上がることで,支部機能が縮小し,支部のハコがなくなり,ハコがなくなることでより司法が遠くなり,結局司法的な解決を選択しなくなるという悪循環も考えられますから,そのような問題はないかということも,支部の弁護士から声を上げていかないといけないかもしれませんね。
支部交流会 2019
令和元年6月29日(土)13:30~17:00,恒例となっています支部交流会が開催されました。九州弁護士会連合会の協議会が主催するもので,支部の弁護士が集まり,年1回,本庁にはない支部特有の問題について議論する交流会です。今年で10周年となり,感慨深いものがあります。私も,毎年,参加させていただいております。
今年の大きなテーマは,裁判のIT化と支部機能の縮小の懸念についてでした。そもそも,支部にはなかなか情報が伝わらないところがありますので,まずは情報共有のため,議論状況にお詳しい方々の報告をいただきました。これを踏まえ,支部に与える影響という観点で,活発な意見交換がなされております。最高裁は,IT化が支部の統廃合にただちにはつながらないというものの,IT化によって支部の事件数がさらに減っていけば,必然,統廃合の対象になるのではないかという懸念もあり,みなさん真剣に議論いただきました。大変有意義な意見交換ができたのではないかと思います。西南学院大学の民訴法の先生にもコメントいただくなどでき,大変貴重な機会となりました。
私は,ディスカッションの司会役を仰せつかっております。IT化に関して盛り上がったところで,関連する,支部の非常駐の問題を取り上げて議論いたしました。現在,支部では,平戸,壱岐,佐伯,竹田,山鹿,阿蘇,知覧,八女が,裁判官の常駐しない地域になっています。なかなか期日が入らずに進行が遅延するなどの問題があり,填補の裁判官の負担も重くなるため適切な審理ができるのかという懸念もあります。ここ最近では,中津の簡裁が,これまで常駐の裁判官がいたにもかかわらず,非常駐になってしまい,支部には裁判官がいても,簡裁にはいないという新たな(?)問題も生じているように思います。そのようななかで,運用の改善につき努めている支部もあり,これらを紹介いただくなどして,今後の運動のための参考とすることができました。
その他,現在,中央一極集中の傾向が強まり,過疎偏在地域はおろか,地方都市でも登録者が減っているような現状もあるようで,地方で志をもって活動する弁護士を採用するため,どのような努力・工夫があり得るかなどを議論しました。
毎年,支部の状況について勉強させていただき,最近では運営側にもかかわらせていただいておりますが,これからも,弁護士過疎偏在問題への対応を続けていき,そので学んだことを,豊前での弁護士活動にも還元していきたいと思います。
パブリックロイヤーのすすめ @九大ロー 2019
令和元年6月28日,九大ロースクールにて,公設関係の事務所の説明会を行いました。私はひまわりLOの説明担当で,弊所の取り組み,地方で活動する魅力・やりがいをお話ししてまいりました。
参加者は,しきりにうなずいてくれたり,反応も良かったと思いますし,「どんな弁護士になりたいのか」という問いかけがすごく響いた,興味をもったというご意見もあり,お話しした甲斐もあったかなと思っています。
昨今は,弁護士の志望についても,中央一極集中の傾向が強まっており,地方で働くことに意義を見出す方は減少傾向と聴いています。現地で働いている私たちが,しっかりと情報発信し,興味をもっていただいた方が,その道を歩むことにつき,サポートができるよう,私も努力していきたいと思います。
私は,九州管内での弁護士過疎・偏在問題に対応していくことを,弁護士人生のテーマにしていますので,今回のような機会も大事にしながら,引き続き活動していきます。