私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2019年9月
「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」
大和ハジメ「交通事故で頭を強打したらどうなるか?」
高次脳機能障害などの障害を把握する。実際に体験した方のリアルな経験談を聴くことにより,事故に遭うということがどういうことか,障害をもつということがどういうことかを,もちろん一端に過ぎないのでしょうが,これを知ることができる貴重な一冊です。漫画なので比較的読みやすいとも思います。独特な絵が,ある種のリアリティを感じさせるものでもあります。
特に,病院から復帰して,学校に赴いたとき,「普通のことが普通にできない」ということに気が付いたとき,,といった局面での本人の心情が,ものすごく印象的でした。
交通事故を扱う弁護士としては,読んでおきたい一冊と思いました。
「万引き家族」
リリーフランキー主演,「万引き家族」を観ました。
感想は…。深すぎて,ヨクワカラナイ。
いつも笑いの絶えない家族は,しかし老婆の年金と万引きのお金で生計を立てていて,物語後半では,まったく血のつながりのない疑似家族だったことも判明していきます。物語前半で一緒に連れて帰ったじゅりさんは,DV被害を受けているということで,ここでも複雑な家庭環境が見て取れる。家族とは何かという深遠なテーマに挑み,幸せとは,生きるとはといった内容も描きたかったのかなと思います。
生活の描写は,生々しいというか,観ていて気持ちのいいものではないですが,リアリティある緻密な描写がなされており,見ごたえがありました。これを見るだけでも一見の価値あり。この映画で,どんなことを投げかけたかったのかは,鑑賞者によってとらえ方が違うかもしれませんから,議論の場があるとよいですね。
正直なところ,おすすめはできませんが,家族の形を改めて考えさせられる作品でした。
「相続道の歩き方」
弁護士 中村真先生 「相続道の歩き方」
特徴的なイラストで有名な,現役の弁護士による,相続の解説書です。たくさんのイラストに目を奪われ,それだけでも楽しめるのですが,本文の内容は,かなり高度で細かな内容も記述されています。
全体的な感想としては,民法の教科書的な並びでもなく,実務のフローにあわせた流れというわけでもなく,独自の視点で相続法を整理して記述したもののように思われ,まずはその体系的描写が斬新だと思いました。内容的には,もちろん実務的に役立つ描写は満載なのですが,どちらかというと概念整理,概念の深掘りなどをしっかりしている書籍ではないかと思われ,改めて頭の中を整理するのに最適な書籍ではないかと思われました。
「特定遺贈と包括遺贈を区別する必要性はどこにあるか」(包括遺贈の場合,相続人でない受遺者も相続人と同じ扱いを受け(民法990条),包括遺贈の放棄も相続放棄の手続に従うなどしなければならない。),「法定相続情報証明制度の活用」,「相続で引き継がれる財産には,財産法上の法的地位なども含まれる」(本人の無権代理人相続と,無権代理人の本人相続),「生命保険金の受領は,判例上特別受益に該当する場合があるが,その場合に,持戻しの範囲をどう考えるかは別の問題」(被相続人が払った保険料額の総額説,被相続人死亡時の解約返戻金相当額説,総保険料額に対する被相続人が死亡時に支払った保険料総額の割合を保険金額に乗じた額説など。),「相続前における遺留分の放棄は,家裁の許可の上で一応認められているが,裁判例上,遺留分放棄者が,遺留分権利者の自由な意思に基づくものであるかどうか,その理由が合理性もしくは田労政,必要性ないし代償性を具備しているかどうかを考慮すべきとされている。」………
などなど,いろいろと知識・理解を深めていくことが出来ました。
入門書としては,やや難しいかな?という気もしますが,イラストの楽しさと相俟って,サクサク読めるだろうと思いますので,幅広い層の方におすすめの一冊です。
「死刑基準」
水谷俊之監督「死刑基準」
かつての同級生3人が,被害者遺族,検察官,弁護人として,ある裁判で衝突。その裁判は,被害者遺族の妻を殺されたというもの。被害者遺族(弁護士)は,それまで「ミスター死刑廃止」とまで言われていたのに,加害者とされる男に死刑を求める。親友(被害者遺族)が失意の中,弁護人として被告人を弁護できるか。捜査過程に疑問を呈しながらも組織の論理につぶされそうになる検察官はどうするのか。三者三様の人間模様を描きながら,死刑廃止の是非について深く考えさせる内容。
「死刑基準」というタイトルですが,内容的には「死刑廃止の是非」です。永山事件判決の基準のように,どのような場合に死刑をくだすかということを問うものではありません。多少ミスリーディングかなと思いますが,「死刑基準」というのは,主人公の1人が研究のテーマにしていた内容をそのまま引用したものです。
真に被害者の痛みを知らずに,死刑廃止の是非については議論できないというのも正論だと思いますし,被害者保護の法整備と死刑はまた別問題という意見も,そういった側面はあると思います。最後に,弁護人は,真犯人への証人尋問の際,「死刑は,国家が報復を手伝うものではない。しかし,被害者遺族の痛みをやわらげるには,加害者の死をもってしかなし得ない場合もあるから,死刑は存置されているのではないか。」などと,初めて私見を述べ,物語は幕を閉じますが,これも1つの考えに過ぎませんから,皆さんで議論するようにと投げかけているのでしょうね。
全編,明るいドラマではありませんが,法廷ドラマとして見ごたえは十分であり,おすすめです。
「税のタブー」
三木義一「税のタブー」
なかなか面白かったです。切り口が斬新で,「宗教法人はなぜ非課税なのか?」「暴力団の上納金には課税できるのか?」「政治団体と税」など,これまであまり語られてこなかった税の話が,読みやすく,それでいて基礎から説き起こす充実した内容で解説されています。
特に,暴力団の上納金については,税務署が暴力団に介入して調査しづらいという実際的な話だけではなく,根強い「暴力団の上納金=サークルの会費」論にみる理論的問題の壁が大きいことがよくわかりました。
ほか,印象的だったのは,印紙税の話でした。印紙税という制度は,明治に作られた制度で,農民の納税に頼るだけでなく,商工業者にも負担してもらうために導入した制度だそうですが,課税の範囲が不明確で,前々から納税者とトラブルが絶えず,法改正後も同様の状態が続いているそうです。著者は,不合理な制度でなくすべきだと述べています。その不合理さは,いくつかの新聞記事を取り上げて紹介していますが,なるほどと思わせるものです。ここまでダイレクトに,印紙税はいらないと述べる本も珍しいのではないでしょうか。
宗教法人と税,政治団体と税,暴力団の上納金と税,必要経費,交際費の範囲,印紙税,固定資産税,酒の販売と免許,特別措置法,源泉徴収,国境を越えた場合の税など,興味深いさまざまなテーマを取り扱っており,平易な文章で基礎から説き起こして学べる,興味深い一冊です。
税金は,社会生活を営む上で支払うべき会費などと言われることもありますが,その会費のシステムがどうなっているのか,身近で興味があると思いますから,どんな層の方でも発見がある本ではないかと思います。おすすめです。
九州大学法科大学院生訪問
本日,令和元年9月1日,九州大学の法科大学院(ロースクール)の生徒7名と,私の恩師である新井先生(広島大学法科大学院)により,幣所をご訪問いただきました。
事務所見学,公設関係の制度の説明,幣所の概要・説明,質疑応答など,充実した議論ができたように思います。
その後は,マルティーニで懇親を深めながら,さらに質疑応答をしたり,普段の学習に関する話などを深めていきました。
自分が学生の頃を思い出しながら,懐かしい気持ちにもなりました。新井先生とお話しできて,またまた公法系を勉強していこうという意欲もわきました。
幣所では,希望があれば,事務所見学等,いつでも受け付けておりますので,お気軽にご連絡ください。これまで,さまざまな人にお世話になってきました。少しでも後進に還元出来たら幸いです。
写真を撮り損ねてしまったので,掲載できないのが残念です。
皆さま,ご足労いただきまして,ありがとうございました。
相続に特化したページを公開しました。
先般,相続に特化したページを公開しました。
家事事件は一般的に増加傾向と言われますが,幣所の実感としても,特にここ最近,相続に関するご相談が顕著に増加しております。
ご依頼者様への参考にもしていただけると思いますし,同業者に参考にしていただくことも可能な水準で,記事を執筆しているつもりです。
ご相談のアクセスを容易にするための取り組みの一環ではありますが,今回は,あえて相談地域を限定する形でアンケート機能をつけました。地元地域のために尽力する弁護士ですので,他の地域の弁護士が十分対応できる場合は,私が対応する必要はないだろうという考えです。
今後とも,どうぞよろしくお願いいたします。
三度目の殺人
福山雅治主演,映画「三度目の殺人」。
法廷サスペンスかと思って観ましたが,むしろ大事な被告人質問が一部しか映されないなど,法廷の描写は一部であって,淡々と進む人間ドラマが大半でした。深いような気もしますし,ただ,淡々と進むストーリーはつまらなく映る人も多いだろうなという印象。後味はあまりよくない映画です。
全編で描かれているのは,ある殺人事件です。被疑者は身柄拘束され,事実を認めています。前科あり。弁護側は,戦術として,減軽酌量を求めていこうとしますが,調査を進めていく中,新たにわかった事実から,「真実はこうでないか」と思われるストーリーが次々にあらわれ,最後には被告人自身が犯人性を否認する。被告人と被害者の子の間に接点があり,被害者の子にはある秘密があることがわかる。「真実はこうでないか」とさまざまな想像を掻き立てられますが,結局,検察官の起訴どおり,被告人は有罪判決となる。そんなストーリーです。
まるで羅生門のように,事実の多面性を扱った作品。弁護人は,結局本当のことはわからないのだから,被疑者に有利になるようにすればいいと述べますが,一方で,動機すら二転三転するなかで,真実を追い求めずしてよいのかというような葛藤にもさいなまれます(真実はわからないと言っていた主任弁護人自身が,最後は真実を追い求めているように見えた。)。裁判がある意味,「阿吽の呼吸」で進んでいくさまも描いており,忙しすぎる裁判官,被告人ではなく裁判員の方を向いている裁判員裁判など,日本の裁判制度の問題点も浮き彫りにするかのようです。
スカッとしたいというような方にはおすすめできませんが,ゆっくりじっくり見て,瞑想にふけりたいという方にはおすすめの一作です。