私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2020年
レビュー 死ぬこと以外かすり傷
幻冬舎編集者 箕輪厚介 「死ぬこと以外かすり傷」
タイトルに興味を惹かれ,積読していたところ,ようやく読むことができました。目まぐるしい変化がある昨今のビジネスの現場において,変化に適応したスピード感のある仕事をするためのヒントが詰まっているように感じました。
それ自体も興味深く読ませていただいたのですが,私が特に注目したのは,以下の部分です。
69頁~「インターネットの出現によって職業や業種による縦の壁はどんどん消滅しつつある。たとえば自動車運転が導入されたら自動車からハンドルがなくなる。そうすると自動車は「走る家」のようなものになるかもしれない。そうなったら自動車業界も建設業界も不動産業界も境目はなくなる。2020年に5G(第5世代移動通信システム)が導入されたらほぼノーストレスで電話会議もできるようになる。移動中でもどこででも仕事ができるのであれば,そもそも「移動」という概念自体がなくなる。会社から近いという理由で住む場所を選ぶことはなくなる。すると地方の価値があがる。気候に恵まれていたり食べ物がおいしい地方で人は生活するようになる。そうなれば地方の隠れた資産を再発見するコンテンツやサービスが求められる。このように自動運転,5Gという技術革新だけをとっても各業界に無限の変化が起き,横の関係で連動していく。」
裁判のIT化ひとつとっても遅々として進まない日本では(注:私は,特にIT化を推進しているというわけではなく,セキュリティの問題を含め多くの課題があるIT化について,なかなか進んでいないという現状認識を示しているに過ぎません。),そうドラスティックに変化が生じるとまでは考えていないのですが,上述のような指摘のように,地方の価値が上がっていく未来を創っていけたらというのが地方で活動する者としての願いでもあります。
ところで,裁判のIT化においても,2つの考え方があります。①IT化が進むことによって,弁護士が業務をするにあたって距離の障害がなくなり,中央の弁護士が地方の業務も担うようになって,支部での事件が減り,ひいては支部がなくなってしまうのではないか。もうひとつが,②支部の弁護士こそが距離の障害を最も直接的に受けていると言えるだろうが,支部の弁護士の活動がしやすくなって,支部の活動が活性化する。
①により裁判所支部が消滅してしまう未来が懸念され,議論されているところですが,私個人としては,IT化の流れ自体は,現代社会において変えがたいものであると思いますので,そうであれば,②支部活性化の一助ともなるよう,制度を改革していくべきだと考えています。
…といっても,何か妙案があるわけではないのですが,支部で活動する弁護士として,支部を,地域を盛り上げていく力になりたいと考えるのは当然です。
今後も,さまざまな議論を通して,地方のために尽力していきたいと思います。
全国倒産処理弁護士ネットワークに登録しました。
私は,弁護士となった当初から,多数の倒産事件を取り扱ってきました。現在も,個人・法人の破産申立代理人業務,管財人業務,小規模個人再生申立人代理人業務を,ほぼ間断なく行っています(さすがに通常再生事件などの経験はほとんどありませんが,研鑽は重ねておきたいと思います。)。
特に,現在,行橋管轄の管財事件,中津管轄の管財事件の双方を取り扱っており,さらに件数が増えているように感じています。管財業務は多大な手間暇がかかって敬遠されがちとお聞きしますが,民事法分野の幅広い知識とスキル,そして商売人魂が必要で,非常にやりがいを感じる業務の1つです。裁判所から信用を失わないように1つ1つにしっかり取り組み,今後も精進していく所存です。
その一環として,全国倒産処理弁護士ネットワークに登録させていただきました。略して「全倒ネット」などと呼ばれますが,これは,倒産事件処理に携わる弁護士に広く研鑚と意見・情報交換の場を提供することを目的として築かれたネットワークです。ML上でさまざまな意見交換がなされたり,研修会が開かれたり,成果を書籍として発行したりと,幅広い活動をしています。研修会に参加したことがありますが,深遠な議論に圧倒されたことを覚えています。
もともと,全倒ネットが編集している「破産法実務Q&A220問」をよく活用していました。今後は,会員として,情報をキャッチアップして,よりよい倒産処理業務を実現できるよう,さらに精進してまいりたいと思います。
レビュー リウーを待ちながら
朱戸アオ「リウーを待ちながら」(1~3巻,完結)
今思えば,予言的(?)な作品。3年ほど前の作品ですが,そこで描かれる感染症の拡大は,現在の新型コロナウイルス蔓延を彷彿とさせるもの。本作でも,新型インフルエンザ特別措置法に基づき緊急事態宣言が出されています。コンビニで,店員が,「感染症対策のためにお釣りがないようにお願いします」と述べていたり,妙にリアル。(実際は,さすがにそこまでの声掛けはきいたことがなくて,トレーで受け渡して「ご協力ください。」くらいですね。)
物語は淡々と,だからこそ忍び寄る恐怖を掻き立てながら進みます。富士山のふもとに広がる横走市において,原因不明の急病患者が急増。次第に,それがペストによるものと判明。紛争地帯から持ち帰ってしまった自衛隊駐屯地から広がり,同市はパニックに。懸命に感染を抑え込もうとする医師の奮闘を描く半面,同市からの脱走,脱走者に対する周囲の迫害などの負の部分も描く。
事実は小説より奇なりと言いますが,現実の日本の現状は,小説で描かれている一市のアウトブレイクをはるかに超える規模で感染の問題が生じています。そうであっても,重なる部分も多いです。設定に「?」と思わせるところも少なく,特に今は引き込まれる内容になっていると思います。
感染症の蔓延により悲劇も起こる中,それを乗り越え,新たなる一歩を進み始めるまでの話。タイトルは,古典・カミュ「ペスト」のリウー医師を意識したものですが,今だからこそこの古典もチェックしてみたいと思いました。
今だからこそ読んでみたい一冊です。
レビュー 恍惚の人
豊田四郎監督「恍惚の人」
有吉佐知子の名作を映画化!…とはいえ、この映画の情報を得るまでは、原作も知らなかったのですが。
きっかけは、長谷川式スケールで有名な長谷川先生の著書に触れたことです。認知症の歴史についても深く記述がされていました。この「恍惚の人」の原作がベストセラーとなり、映画化もされ、未だ「老人性痴呆症」「ボケ」などと言われていた時代、認知症や介護の問題につき提起し、政治でも取り上げられるようになったという流れがあるようです。
映画は全編白黒で、それこそ時代を感じさせますし、認知症患者と家族のかかわりというテーマからして、淡々と進んでいくような映画ですが、認知症のお義父さんの迫真の演技、これを介護する嫁(以前はお義父さんにいびられていた)のまた迫真の演技は見どころたっぷりでした。お義母さんの死をきっかけに、お義父さんに認知症の症状があらわれる。自分が食事をしたことを忘れ、すぐに腹が減ったといい(短期記憶の障害?)、息子の顔さえ忘れ、夜中に大騒動し(幻覚?)、息子を暴漢と間違え(妄想?)、「こんなばあさん知らん」と発言し(失見当識?)、徘徊し、骨壺内の妻の遺骨を食べようとし(異食)、急に怒り出し、便を周囲に塗りたくる。原作者は10年ほど取材して作品を世に出したそうですが、とてもリアルで勉強になりました。
衝撃を受けたのは、夫の役に立たなさ。「しょうがないじゃないか、親父はオレの顔も忘れてるんだから」「もう、殺してやれば」などと言って、すべて妻(嫁)に介護を押し付けている。いや、コレ、言っちゃったら私、妻に何を言われるか…他人ごとではないですね。横で一緒に見ていた妻が冷ややかな視線を向けており、他人事として処理をしてはいけないと自分を戒めました。
介護で疲弊して可哀そうな状態の際に、お義父さんが風呂場でおぼれかけ、「法的には、過失致死罪になるのよ。」などと発言しているところを見て、従前はいびられていたのに、これだけ身を粉にして介護して、挙句法的責任だけは負わされるのか…といたたまれなくなりました。
いまみても非常に勉強になる古典だと思いました。さまざまな問題点への気づきが得られます。DVDを購入したら映画評論家・佐藤忠男さんのコメントもついており、理解も深められました。おすすめの一作。次は原作を読んでみようかと思います。
感染対策について
緊急事態宣言が解除されるも,比較的近しい北九州市では立て続けにクラスターが起こっているとのこと,不安な日々が続きます。宣言解除後も,手指消毒,マスク,アクリルボード,Webを活用した打ち合わせ,ペーパーレス&IT化の試みなど,対策は続けています。ここで改めて,感染対策について勉強してみたので,まとめてみます。
感染に至る簡単なモデルを示すとすれば,「病原菌→感染→感染症」という流れをたどると思います。「病原菌→感染」の流れを食い止めるために手指の消毒,マスクなどの対策をとることになります。「感染→感染症」の流れを食い止める意味では,規則正しい生活により免疫を上げることも重要です。
上述の感染について,感染経路の三パターンが,①接触感染,②飛沫感染,③空気感染です。
①接触感染について,結核菌以外の多くの菌,たとえば疥癬(要はダニ),ノロウイルス感染症,緑膿菌感染症,MRSA(メチリン体制黄色ブドウ球菌)などの感染経路は接触感染です。接触の主役は「手」になります。結核菌以外のほとんどの菌は手を介してうつります。床や壁を消毒してもほとんど役立たず,手洗いが重要になってきます。洗浄・消毒が不十分な医療器具から病原体がうつってしまうこともあるので気を付けます。
②飛沫感染について,「飛沫」とは,咳やくしゃみのしぶきのことです。たとえば,一般の風邪のウイルス,インフルエンザウイルス,風疹(三日はしか)ウイルス,流行性耳下腺炎(おたふく風邪)を起こすムンプスウイルス,マイコプラズマ,溶結性連鎖球菌,髄膜炎金,百日咳金などがこれにより感染します。飛沫が付着したものに手で触ってそれを介して感染することもありますので,飛沫感染するものは,接触感染にも気を付けなければなりません。サージナルマスクなどによる対策が効果的です。
③空気感染について,たとえば,結核菌,麻疹(はしか)ウイルス,水痘(水疱瘡)・帯状疱疹ウイルスなどはこれによる感染です。飛沫と違って同じ空間にいるだけで感染しますので,隔離などの措置が必要になります。
その他,B型・C型肝炎,梅毒,エイズなどは,粘液や血液中の病原体が別の人の血液に入って感染します。
新型コロナウイルスは,空気感染はしないようなので,飛沫感染・接触感染に気を付けることになります。
アメリカの専門組織から提唱されているスタンダード・プリコーション(標準予防策)が参考になります。基本として,病原体は,「しっとり,ヌルヌル,べちょべちょ」の①血液,②体液・分泌物(汗を除く),嘔吐物,排せつ物,③傷害のある皮膚,④粘膜に含まれることが多いので,これを扱う時こそ,「感染のリスクがあるもの,感染する可能性があるもの」として注意をするように促しています。素手で触らない,手袋をする,すぐに手を洗う,手袋をしていても外した後は手を洗う,マスクやゴーグルの活用,使い捨てガウンの活用,使用後の注射針はリキャップせず,所定の容器に捨てるなどです。咳エチケットももちろんですが,スタンダード・プリコーションでは,手洗いは,「ほかのいろいろな予防策とは独立した,もっとも重要な感染防御手段である」と述べられています。しっかり手洗いすれば20~30秒はかかるでしょうし,溜めた水ではなく流水を使う,固形石鹸ではなく液体せっけんを使う,手首や親指の付け根は意識してあらう,よく拭くなど細かい点も気を付けるべきとのことです。手袋,うがい,マスク,エプロンなどの活用も図るべきです。
洗浄(汚れを洗い落とす),消毒(病原菌を殺したり弱らせたり),滅菌(完全な無菌状態)の区別があります。消毒なき洗浄はあるが,洗浄なき消毒はない。注射針や手術道具には滅菌が必要。昔からやられていた①消毒薬を服や靴に噴霧する,②部屋の前などに粘着マットを敷く,③グルタールアルデヒドやホルマリンによる人体や部屋の消毒は効果がないんだそうです。
これを機に感染対策について勉強してみましたが,なかなか奥が深いです。さらに理解を深めていきたいと思います。
レビュー 改正民法のはなし
内田貴「改正民法のはなし」
改正の中心になった著者が,改正の経緯,背景,結果などについて,わかりやすく解説。比較的薄く,1つ1つの項目の分量もさほどでなく,読みやすい。私が勉強してきた改正本のなかでは最も読みやすい読み物だったと思います。改正のストーリーがあって,頭にも入ってきやすかったです。
深めるのは別の書籍に譲るとして,まず改正の概要を押さえるには最適ではないかと思います。
大学時代,私は内田先生の民法の教科書で勉強していました。設例が多く,民法の条文の並びではなく教育的観点から並び替えた順番での解説で,工夫を凝らしており,わかりやすかったです。大学院では,内田先生が民法改正にかかわるようになって以降,書籍の改訂がなされず,情報が古くなっていたため,佐久間先生,道垣内先生,潮見先生,二宮先生らの教科書を利用するようになりましたが,この度,内田先生の民法の教科書も改訂されたようです。初心に戻って,基本法の勉強を進めていきたいと思います。
海事関係の注力ページを作成しました!
弊所の1つの特徴として,海事代理士が弊所事務長を兼務しているという点が挙げられます。
弁護士も,弁護士資格に限らず,海事補佐人として活動できる資格を有しています(登録が必要です。)。
これらを活かして,海のリーガルサービスも充実させたいという想いで,海事注力ページを作成いたしました。
特に,放置艇,船の相続,海難事故などでお困りの際は,ぜひ弊所にご相談ください。
4月の交通事故最少 日経新聞記事
日経新聞・令和2年5月17日(日)記事。
記事によると、4月に同月で起きた交通事故は、前年同月比36%減(?!)・2万0805件とのこと。警察庁に月間のデータが残る1989年以降、月間で過去最少を更新したそうです。
コロナの関係で交通量が減ったからと分析されていますが、一方で、死亡事故が増えた地域もあり(原因:信号無視や速度超過が多い)、外出自粛による気の緩みから、油断を招いたのではないかと分析されています。
事故が減るのはよいことだと思います。私の実感でも、ここ最近の交通事故の新規受任は少なくなっているように思います。 しかし、その原因が、コロナによる一過性のものとすれば、根本的な交通事故の原因は根絶できておらず、たとえば、コロナ疲れをしている人々がいずれ解放されて交通渋滞を招くなどした際には、むしろ事故が増えてしまうことさえ懸念されるところです。
まだ勉強を始めたばかりなので、これから記事にもしていきたいと思いますが、交通心理学についても勉強をしています。人間の心の動き、特に事故の際の心理状態を知ることが、翻って交通事故を防止するための役に立つかもしれないという想いからです。
事故が減少するよう、私も、私の立場から、日々いろいろと考えていきたいと思います。
中小破産回避へ特例 日経新聞記事コメント
令和2年5月8日(金) 日経新聞一面 「中小破産回避へ特例 独やインド倒産基準を緩和」
ドイツは、支払い不能などに陥ってから3週間以内としていた破産申請の義務付けを、9月末まで停止するそうです。コロナが原因であれば倒産を事実上棚上げする異例の措置とのこと。
外国法はあまり詳しくないですが、各国、倒産回避措置をとられているようですね。日本は5月7日までに帝国データバンクが把握しているだけで、コロナの影響で倒産した会社が119社もあるとのこと。日本では、破産申立ての時期について義務付けはありませんが、どうやって倒産を回避していくか、対策が急務なのは各国と変わりありませんね。
今朝の西日本新聞・北九州京築版(16面)を見ていますと、大変お世話になっていた築上館が破産申立てをしたとのこと…驚きを隠せません。
開所式・定着式等も行った思い出の場所ですし、各種会合でもお世話になっていました。本当に残念です。
現在の社会の中で、私にできることを見つけて、しっかりと対応していきたいと思います。
レビュー 交渉力
橋本徹著「交渉力」
弁護士は裁判ばっかりやっていると思われていることもありますが(実際にそう言われたことがあります。),弁護士はむしろ裁判を回避していかに交渉でうまくまとめるかということも問われているものと思います。裁判が簡単なんてことは決してありませんが,裁判所が指揮して進めていく裁判手続と,自らがリードして依頼者の利益を最大化するためにやり取りを重ねる交渉とを比べて,交渉の方が簡単なんてこともまたないと思います。
弁護士,府知事,市長として活躍している橋本弁護士のしたためた「交渉力」。内容は,実例を挙げたかなり具体的なものでした。
本書で紹介されている交渉の極意自体は,抽象的にはシンプルですが,じゃあ実際に実行するとなると,これがなかなかできないものです。
交渉には,敵対的交渉と協調的交渉しかない。協調的交渉の場合,対等に話をしないと,話はまとまらない。相手を動かすには,①利益を与える(譲歩する),②合法的に脅す,③お願いする,の3つしかない。①交渉を成功させるには,こちら側がマイナスにならずに,相手には利益になるものを見つけ出す作業が大切である。「仮想の利益」を作り出すノウハウも重要になってくる。②交渉前に圧を掛けておくことも効果的。法律の範囲内で喧嘩を辞さない覚悟も必要である。自分に力がなければ,いったんひいて,力を蓄えることも必要。③まずは脅し,その後多少の譲歩をして,どうしても歩み寄れなければお願いするしかない。纏まらない場合やお互いに別の途を歩むことになったとしても,握手して終わることが必要。
エッセンスをまとめると,こんな感じでしょうか。内容が濃いですので,ぜひ一度読んでみられてください。