私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
いままでの投稿: 2021年4月
高齢者の交通事故1
幣所では,交通事故の取扱い件数が多いです。さらに,地域柄,高齢者の事故にも,比較的多く触れます。高齢者の事故は,一般成人の事故と比べて特有の問題もあり,これをまとめておくのは有益と思いますので,何度かに分けて,記事にできればと思います。
今回は,高齢者の家事労働に関する損害について。
これまでできた他人のための家事労働ができなくなったという点を損害評価できることは,比較的固まった考え方になってきています。高齢者の家事労働の場合,以下のような問題があります。
①家事労働につき逸失利益が認められるためには,他人のための家事労働を行っているといえることが必要であるが,たとえば高齢の二人暮らしの夫婦の場合には,その家事労働が「他人のための家事」といえるのか,単に自分自身の生存のための生活行為に過ぎないのか,評価が困難という問題がある。
→これについては,三庁共同提言が,一定の指針を示しています。
たとえば,
夫と二人で年金生活をしている88歳の専業主婦については,88歳という年齢及び夫と二人で暮らしていることを併せて考えると,そこにおける家事労働は,もはや自ら生活して行くための日常的な活動と評価するのが相当であり,逸失利益は認められない。
夫と二人で年金生活をしている74歳の専業主婦については,平均余命の半分の7年間は家事労働を行うことができ,これを金銭評価するのが相当である。
②高齢者の場合,健康状態や通院等による家事労働の制約があったり,仮に健康であったとしても全般的な体力等の低下がみられ,その家事労働につき通常の主婦と同程度の金銭的評価を与えてよいかという問題がある。
→これについても,三庁共同提言が,一定の指針を示しています。
基礎収入は原則として全年齢平均賃金による。ただし,年齢,家族構成,身体状況及び家事労働の内容などに照らし,障害を通じて全年齢平均賃金に相当する労働を行い得る蓋然性が認められない特段の事情が存する場合には,年齢別平均賃金を参照して適宜減額する。
上述のように逸失利益を肯定する場合,年齢と生活状況を併せて考えると,その間の家事労働を平均して金銭評価すれば,女性65歳以上の平均賃金の70%に相当する金額とするのが相当である。
なお,死亡事故の場合に,家事労働の逸失利益を認める際にも,生活費控除率は,一般の場合(赤い本の基準だと女性は30%)よりも生活費控除率を大きくする場合があります。理由は明確ではないものの,たとえば,配偶者を亡くした高齢者の生活環境をむしろ(独身)男性に近いものと捉えて生活費控除を考えていたり,高齢者の場合一般に基礎収入が定額になることや,年金逸失利益算定における生活費控除率が一般に高く認定される傾向にあることなどが影響しているようです。