私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
分類別: 法律全般
身近な事から、難しいことまで。法律全般を扱います。
近時の消費者問題雑感②
消費生活相談員との勉強会を終えての雑感②です。
②高齢者への与信,高齢者と過量販売
体の力が低下した方については,たとえばヘルパーさん等がその低下した部分を補って助けてくれます。判断能力が低下した方については,財産管理ができないとなれば,後見人が選ばれ,その方が財産管理してくれるというのが,法制度のタテマエになっています。
取引,契約には,それをするだけの能力=意思能力が必要ですが,これがない状態でした取引は無効です。ただ,取引ごとに,意思能力の有無を個別に判断するのは難しく煩雑でもあるので,判断能力がなくなったとされる場合には後見人を選任し,逆に言うと後見人がついている状態であれば本人は意思無能力状態なのだなとわかるようになります。ところが,本来意思無能力だったとしても,後見人がついていないと,外から見ても,本人が判断能力がある状態なのかどうかはわかりません。年齢が上がってきたというだけでクレジットを利用できるだけの能力がないとはされませんから,後見人がついてない事案では,よっぽど意思能力を疑う徴表がない限り,意思能力はあるものとして,支払能力の有無で与信判断してしまうのでしょう。「クレジット会社は,なんでこの人の審査を通したんだ。」と言いたくなるような事案もあるかもしれませんが,このような構造になっているものと思います。
こうして,支払いができる高齢者の方が,業者のすすめに応じ,必要以上に健康食品や布団などを購入してしまうというトラブルがあります。過量販売の問題です。
次々にいろいろな物を売りつけて被害が拡大するような類型を次々販売などと言ったりしますが,こうして不必要にたくさんの買い物をしてしまったというケースへの対処のため,「分量」という客観的な指標を根拠に,特商法に取消制度が導入されています(法9条の2過量販売解除制度)。
消費者にとって「その日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品・権利・役務」に関する契約を対象とし,これにあてはまれば,契約を解除することができます(クーリングオフの規定が準用されるため,同様の効果が得られます。)。この「分量」に関しては,①1回の契約で過量の場合,②当該契約により過量になる場合,③すでに従前の契約で過量になっている場合,がありますが,業者が複数関与し,②③の形で過量になっていると思われるときは,業者の認識が問題になります。
業者が,「以前うかがった〇〇さんから紹介を受けました」などといって訪問してきたケースなどは,すでにある程度購入していることを知りながらセールスしていることになるので,②③の過量の認識はあるといいやすいかもしれません。また,狭い家の場合,玄関からたくさんの段ボールが見えているような状況があれば,過量の認識も認めやすいといえます。
いずれにせよ,複数業者がからむ過量販売については,業者の認識が問題になり,難しい問題を含みます。
このような次々販売,過量販売の被害に遭われている方は,ある程度悪質業者からターゲットにされている可能性がありますし,自衛できるだけの判断能力がなくなっているということであれば,後見等制度を利用して,専門家第三者にブロックしてもらうということも検討すべきと思われます。
近時の消費者問題雑感①
平成29年度消費生活相談員等事例検討会に参加してきましたので,近時の消費者問題について,何回かにわけて,いくつかメモしておきます。
①自社割賦の問題
第三者である信販会社を利用して,クレジットで買い物する人は多くいます。この場合,クレジット業者には,支払見込額の調査の義務があったり,クレジット業者の苦情処理義務があったりするなど,割賦販売法などによりさまざまな規制がかかります。
一方,最近は,自社割賦が増えているように感じられるそうです。自社割賦というのは,商品を販売するその業者が割賦を組むことです。これを利用する業者側のメリットとしては,顧客と直接契約することで,第三者の信販会社を利用するより柔軟な契約ができ,機会ロスを防ぐことができること,これまで信販会社に支払っていた手数料を自分のものにできること,などのメリットがあります。顧客からしても,煩雑な信販会社の手続・審査を経なくてよいし,信販会社の審査が通らないようなケースでも業者との直接交渉で割賦にしうるなど,メリットがないわけではありません。ただ,業者は,割賦にすることで,代金回収不能のリスクを抱えることになりますから,手数料が高額になりかねないですし,そのことを明確に告げないなどして,トラブルが生じえます。
割賦販売法改正により個別クレジットの規制は強化されましたが,自社割賦の場合は業者自身が回収不能リスクを負担するという性質上,強い規制になじまないところがあり,現在,個別クレジットほどの規制はありません。実際,規制が強化されていない背景として,トラブルの数もそれほど多くないという認識があったようです。しかし,トラブル例が存在する以上,事前にどうやって法教育を浸透させるか,事後にトラブルになったらどう解決するか,を検討していく必要がありますね。
日本の司法のインフラ(日本経済新聞記事について)
本日の日本経済新聞13面(法務)では,一面,弁護士に関する記事や司法インフラに関する記事がありました。「企業が選ぶ弁護士ランキング」など興味深いデータもありました(日本企業の法務担当者に聞いたとのことですが,どういう基準でデータを取っているのかは気になります。)。
回答企業のほぼ半数が,インハウス(企業内)弁護士を3年以内に増やす予定だということがわかったとのこと。私が修習生だった頃も,企業内弁護士は人気だったので,新規登録弁護士について,企業とうまくマッチングするとよいですね。法務上の優先課題として「企業統治全般」「M&A」「傘下に加えた企業の管理」「外国法・国際法対応」「新事業進出時の法対応」などが連なっており,弁護士のフロンティアを見極める参考になるかなと思いました。
日本司法のインフラに関しては,企業の方,弁護士,ともに,審理のスピードが遅いということを不満に思っている人が多いということです。実感としても,特に企業の方とお話していると,なかなか進まない交渉などについて,不満を抱える依頼者は多いように思います(相手方があることなので,進まない時は本当に進みません。)。「ディスカバリーがない」「損害賠償金額が少ない」という項目がありましたが,これは主にアメリカ法との比較ではないかと思います。日本法を見直す契機として,アメリカ法を勉強するインセンティブになりそうです。個人的には,後者の問題として,懲罰的賠償について,深めてみたいと思っています。
人工知能(AI)が法曹界の未来にもたらす影響についても,言及がありました。「サービスが向上する」というプラス評価の反面,「パラリーガルなど支援業務従事者が職を失う」という懸念の声もあるようです。AIを使いこなせる弁護士(事務所)とそうでない弁護士(事務所)との格差が広がるという声もあるようです。 この点,いま,リーガルテック(リーガルテクノロジー,法律+技術の造語)について本を読み進めているところです。最近,AIやテクノロジーの話題は,よく議論にあげられているように思いますので,引き続き研鑽の上,また記事を書いていこうと思います。
広大ロー公法系科目・聴講
先週になりますが,平成29年7月8日(土)13:30~18:30,母校広島大学ロースクールで,公開講座及び講演を聴講しましたので,少し書いてみます。
憲法学者で著名な慶応大ロースクールの小山剛先生は,これまた司法試験受験会では著名な「『憲法上の権利』の作法」の著者であり,「権利の制限」と「制度形成(立法裁量)」の関係につき,踏み込んだ議論を展開されている先生です。1度,生の講演を聞いてみたいと思っていましたが,叶ってよかったです。権利が制約されているのか否かという問題につき,たとえば夫婦別姓の最高裁判例などを紹介しながら,わかりやすく説明いただきました。私が書きすぎると,内容が陳腐になってしまいますので,この辺りでとどめます。
こちらも公法界で著名な弁護士である,大島義則先生,伊藤建先生の講義も聴講しました。 大島先生は,改正個人情報保護法下において,匿名加工情報・ビックデータに関する問題を検討・開設されていましたが,大変勉強になりました。改正個人情報保護法では,いわゆる「5000人要件」が撤廃され,小規模で個人情報を扱う数が少ない業者でも法適用の対象になります。弁護士も,これまで,個人情報保護法が適用されづらかったですが,今後は,適用されることに争いがなくなると思います。よく勉強しておかなければと思います。 伊藤先生は,薬事法判例を詳細に分析しながら,経済的自由が問題になり,複合目的の法令の検討が必要な場合につき,深めていきました。とても話が上手で,いろいろ小ネタをはさみながら(笑),お話をされていました。私の今後の講演活動の参考にもなるなぁなどと感じながら,聞き入ったものでした。
たまには,人の話を聞きに行ってみるというのも,面白いですね。恩師から懇親会への参加許可までいただき,大変意義深い一日を過ごすことができました。
集中豪雨に関して
このたびの集中豪雨により,被害を受けられた皆様方に謹んでお見舞いを申し上げます。また,ご親族やお知り合いのなかで被害にあわれた方も多いかと存じますが,併せて心中をお察し申し上げます。
私も,福岡県弁護士会災害対策委員会の一員ですので,少しでも参考になる情報発信ができればと思い,寄稿します。
さて,地域における状況ですが,もちろん時間帯,場所にもよるものの,当事務所所在地の豊前市を中心に,おおむね,豪雨といってよいほど,ひどい雨が続いています。昨日,中津市においては,比較的小雨に近い程度でしたが,福岡県と大分県の県境にある山国川(一級河川)は,通常時と比べ物にならないほど水位が上がっていました。本日早朝においては,築上町付近において,極端な水位の上昇までは認められなかったものの,特に築城(自衛隊所在地付近)においては,かなりの豪雨で,前方が確認しがたい状況が続いていました。
本日早朝より,東九州自動車道のうち,北九州JCT⇔みやこ豊津IC間は通行止めだそうです。そうすると,一本道の下道(旧10号線)が 混雑することになりますが,実際,通行車両は多かったように思います。豪雨で前方が確認しづらかったこと,各所に水たまりができており足がとられる場面が多かったことから,事故が生じないよう,十分注が必要だと思います。下道が一本道の関係で,ひとたび事故が生じると,付近の交通は完全にストップしてしまうと思います。二次災害防止も重要だと思います。 JR九州のうち小倉⇔大分の部分も,運行見合わせや遅延があります。豊前市は,最寄り駅宇島駅に,ソニックが停車したりしなかったりという地でもあり,交通に関し受けるダメージは大きいかもしれません。
以下,豊前市-築上町-吉富町-上毛町-中津市-行橋市に関する情報のリンクをしておきます。
【交通状況】
【警報・注意報】
【ハザードマップ】
私のところにもいくつか安否確認の連絡がまわってきましたが,簡単でもよいので,報告をすると,情報もいきわたりますし,支援を考えている側も安心ができます。安否の情報確認の迅速さが,被害拡大を防止できることもあります。低地に行かない,落ち着いて避難するなど,できることから1つずつやっていくしかないのかなと思います。
金融機関は,融資や返済の延期などに関する相談の特別窓口をつくったり,保険会社は,保険料の支払い期限を猶予する検討をしたりなどもしているようで,お金の面での相談も,事情を説明して,可能だろうと思います。まずは,大事に至らないように,情報収集して,災害に対応することが重要かと思います。
今回の被害を巡って,法的にもいろいろと問題は出てくるでしょう。 ひとまず,当事務所HPのリンク集で,(主に熊本地震の際に集めたリンクではありますが,)災害関係で役立つものを集めていますから,必要があればご参照ください。
中津市については,災害救助法の適用もされたようです。条件はありますが,住宅の応急修理制度や「自然災害債務整理ガイドライン」など使える制度が増えるはずです。以下も参考になるかもしれません。
弁護士会の方でも,現在,対応策を検討中です。 当事務所も,豪雨災害に関することを含み,法律相談をお受けしますので,ご活用ください。
あまりまとまりがなくなってしまいましたが,必要に応じ,改めて,情報発信をしていきます。 少しでも参考になれば幸いです。
メンタルと法律問題
電通の過労死事件など,痛ましい事件が後を絶ちません。現代社会を生きる人々にとって,メンタルの問題は,避けて通れないようです。
メンタルの問題と法律がどうかかわるのか。たとえば,メンタルをやられてしまっている原因が借金にあるのであれば,債務整理という形で弁護士が関与し,その方のフレッシュスタートをサポートすることができます。以前,「お金のことで死ぬなんて,馬鹿らしい」と述べていた方がいたと思いますが(誰のことばかは忘れてしまいました。),弁護士の立場からは,少なくとも借金の整理については,贅沢を言わなければ,さまざま対応が可能な分野だと思います。離婚など,人生の一大事に関しても,できるだけ前向きな協議離婚/調停離婚ができるようにお手伝いするなど,弁護士が対応できることがあると思います。企業におけるメンタルヘルス対応に関しても,就業規則作成の段階で,どのようなメンタル対策の制度設計をすればよいか一緒に考えるなど,お手伝いできるものと思います。
では,実際,メンタルをやられてしまったら… 過労死に関しては労災民訴という形で対応したり,事後的な対応はあり得ますが,やはり,問題が生じる前に対処できるのが1番です。主に,個人個人での対応における参考になるものだと思われますが,最近読んだ本(マンガですが)で,「死ぬくらいなら会社辞めれば←ができない理由(ワケ)」「うつヌケ」という本が非常に参考になりましたので,一部ご紹介させていただいた上,本稿を締めくくらせていたきたいと思います。
・「死ぬくらいなら会社辞めれば←ができない理由(ワケ)」
ヤバイな,と思ったら,これだけは忘れないで欲しい。「世界は,本当は 広いんです。」 / こんなナゾナゾを思い出してほしい。「世界を一瞬で消す方法は?」-こたえ「その目を閉じればいいだけ」 / 「なにが君のしあわせ なにをしてよろこぶ」(byアンパンマンマーチ) / 「うらやむ」=自分をその人の位置まで高めたいと思う 「ねたむ」=その人を自分んオ位置まで落としたいと思う 「うらやむ」は自分次第,幸せになれるのは「うらやむ」 / 「命てんでんこ」の精神…地震や津波のときは「周囲の人間の安否よりまず自分の安全を確保する」という考え方 / がんばらない,無理しない,配慮しない,自己中心的,起きない,立たない,やらない,逃げる,寝る,さぼる,人まかせ /
・「うつヌケ」
うつの原因は「自分をキライになったこと」→自分を好きになればいい / アファーメーション(肯定的自己暗示)…朝目覚めた時「自分を誉める言葉」を唱えるだけでよい / うつには「突然リターン」がある / うつを重くしているのは「はげしい気温差」(?!) / ヒポコンドリー性基調者 / うつになってしまったら,自分を否定する者からは遠ざかり,自分を肯定してくれるものに近づこう / ささいなことでもいいので必要とされている役に立っていると実感できる瞬間を待とう!! /
ミイラとりがミイラにならないよう,私も,メンタルヘルスには気を付けたいと思います。
携帯電話の売買をめぐって
本日,平成29年6月28日の西日本新聞のコラム「ほう!」な話は,消費者委員会枠です。消費者の身近な携帯電話の売買をめぐる法律知識について,改正電気通信事業法の知識も交えながら,解説しています。少し時間は経過しましたが,改正法に関する話でもあり,知っていて損はないのかなと思います。ぜひご一読ください。(もちろん,私が執筆したものです。)
~新聞記事より~
Q 電話で「もう1台携帯を持って,使い分けてはいかがですか」と勧誘され,スマートフォン本体を購入しました。その後,家の近くの店で,スマホで通話できるよう契約を結んだのですがよく考えると,2台も必要ないことに気づきました。解約はできますか。
A 相談者の場合①電話機本体の売買契約②電話機を利用するための電気通信サービス提供契約-の2つの契約を事業者と結んでいます。 ①は電話勧誘販売ですので「クーリングオフ」(特定商取引法)を検討しましょう。契約書などの法定書面の交付を受けた日から8日以内であれば,理由なく契約を解除できます。 ②は勧誘によらず,相談者が店頭で契約しているのでクーリングオフは適用されません。しかし携帯電話の通信サービスなどについては利用者保護のため法律が改正され,一定の場合は解除できるようになりました。 利用者は,法定書面を受け取った日(サービスの提供がそれより遅いときはサービス開始日)から8日間は,理由なく契約を解除できます。ただし解除までの間通話などしていた場合は通話料などの費用は負担する必要があります。この点,支払った金額が原則すべて返金されるクーリングオフとは違い「初期契約解除」制度(電気通信事業法)と呼ばれています。 手続は,いずれも書面でする必要があります。配達証明付内容証明郵便がお勧めです。
~新聞記事より~
元最高裁判所裁判官 櫻井龍子先生 講演会
元最高裁判所裁判官・櫻井龍子先生のご講演を拝聴する機会を賜りました。先生は,主に労働関係の行政経験が豊富で,その経験が極めて有効に機能し,8年4か月の任期(本人いわく,刑期(?!))をまっとうできたとのことです。
いろいろなお話をいただきましたが,最後に,司法に残された課題等に関して,先生のお考えなどもお話しいただいたので,こちらを中心に,紹介させていただきます。
最高裁は,変わった(変わりつつある)と思っている。なんといっても,裁判員裁判の導入がもたらした変化は大きい。最高裁も,国民のためのサービス機関ということに目覚めた節がある。主文だけでなく,裁判官の裁量で,要旨も伝えよう。裁判員に対し,裁判終了後,所長名入りの感謝状をお渡ししよう。国民のためにわかりやすい判決にしよう。こういう努力もされはじめたところである。最高裁がやるべきことはやる。違憲立法審査権の行使についても,従前より,積極性がみられるようになった。
一方,民事訴訟制度については,第2の司法制度改革ともいうべき,新たな改革が必要ではないかと思われる。たとえば,欧米のアミカス・キュリエ(法廷助言人)制度を導入してはどうか。現行法でも専門委員制度はあるものの,十分かどうか検証が必要である。本人訴訟についてはどうか。最高裁にあげられる本人訴訟の比率は多い。最高裁は法律審なので,法律専門家の助力が望ましいのではないか。諸外国のIT化の波に比べ,日本はIT化が進んでいない。IT化を図るべきだ。
統計上,過払金訴訟の減少以上に,民事裁判の数は減少していない。しかし,それを手放しに喜べるわけではない。この間,弁護士の数は激増している。法テラスが設立され,市民は格段に法的手続を利用しやすくなっている。それなのに,どうして,裁判利用者は横ばいなのか。問題意識があるところである。市民における司法へのアクセスの問題をどう改善していくか。
最後の問題意識は,地方で活動する私も常に考えている問題意識です。なんでも訴訟をすればよいわけではないにせよ,法律という物差しを使った紛争解決という基盤をつくることは必要と思います。今回の講演で学んだことを,業務にも生かしながら,よりよい地方での司法サービスの提供に努めたいと思います。
弁護士に依頼するメリット・デメリット
ご依頼者様は,弁護士に対し,なんらかのメリットを感じて,依頼するものと思われます。弁護士も,それを受け止めながら,依頼者の利益が最大化されるよう,尽力します。その対価として,報酬をいただきます。
弁護士に依頼するメリット・デメリットとは,なんなのでしょうか。以下,少し,まとめてみたいと思います。 (①②③…のナンバリングは,それぞれ対応しています。)
メリット:①第三者の目から見た客観的な視点で事件を整理・処理できる。②専門家の方が,手際よく解決が期待され,すべて自分でやるよりも,時間も手間も省くことができる。③弁護士に一緒に考えてもらえる。それにより,自分の精神的負担も減らすことができる。④法治国家である日本において,法律に関する専門的知見をもとに,事件の解決を期待することができる。
デメリット:①事件の事実を経験し,事実をよく知っている当事者以外の人が判断する。②専門家の意見が本人の意向と一致するとは限らず,場合によっては,余計に迂遠な解決になる危険性も否定はできない。③事件が自分の手から離れる。(弁護士との信頼関係が重要。)④弁護士の法的知見について悖る可能性がないとはいえない。
弁護士の事件処理において,ご依頼者様との信頼関係は,必要不可欠です。私も,常々,①傾聴=事実についてよくお聞きする。②十分な説明を行う。③専門家としての意見は述べつつも,依頼者と一緒に考え,事件の解決を目指す。④常に研鑽を怠らない。ということを心がけ,その上で,ご依頼者様に,弁護士に依頼するメリットを感じていただきながら,気持ちよく,ご依頼をいただきたいと思っています。
ご依頼者様は,決して安くはない費用をお支払いいただき,弁護士に事件処理を依頼するのですから,弁護士の事件処理の内容を透明化し,弁護士が報酬にみあうだけの働きをしていることを実感してもらうということも,心がけています。弁護士は,ご依頼者様の人生の一大事,お困りごとによりそうものですから,ご依頼者様の意向を尊重し,法的に可能な範囲で,ご依頼者様の利益が最大化できるよう,努力することは,当然です。
一方,報酬に関し,安易な値引きは,まるでご依頼者様のお困りごとを安く見積もっているようで,抵抗があるものです。弁護士は敷居が高い,費用が高いという声は根強く,「市民に力を」を経営理念とする当事務所としては,大変悩ましいところですが,「適正」な費用の見積もりができるよう,常に頭を悩ませており,当事務所では,求めがあれば,できる限り詳細な見積書を作成させていただいているところです。
ご依頼者様には,気持ちよくご依頼いただき,強い信頼関係のもと,一緒に事件の解決を図っていきたい。なかなか難しいことではありますが,これからも悩みながら地域のために尽力していく所存ですので,どうぞよろしくお願いします。
紛争解決における「和解」との向き合い方
豊前地域に限られないとは思いますが,みなさん,紛争は一刻も早く解決したいと望むものだと思います。その際,和解というのは,非常に有効な手段になります。一方で,本来法定されている権利義務を不当に捻じ曲げることになりはしないかという点は,いつも気を付けています。Win-Winの解決ができるときはこれを目指し,ここまできれいに解決できない時も,当事者の望みをかなえ,かつ,両者納得のいく解決を目指します。
ところで,「和解」というと,「仲直り」というニュアンスでとらえられ,拒否反応を示す方もおられます。しかし,和解は,「紛争解決(終了)方法の1つ」に過ぎず,いつもそのように説明しています。要は,紛争の解決の仕方として,(訴訟という手段もあるけど,)和解という手段もありますよとのことです。和解は,「落としどころ」とも違うと思います。この言葉は,なんだか判断者に「落とされている」という感覚を与え,受けが悪いようです。私は,落としどころという言葉は使わないようにしています。和解は,「互譲」で成立するということは否定できませんが,「妥協」しましょうというと,これまた依頼者には受けが悪いようです。解決に向けた「歩み寄り」をするくらいの感覚でのぞむのがよいのかなと思います。
和解を目指すうえでは,その事件の問題の核心,その事件で当事者が最も問題にしている点を的確に捉え,これにメスを入れることが重要です。ここに一定の解がないと,到底当事者の納得が得られないと思います。そのためにも,当事者の話をよく聞きます。これが,言うは易く,行うは難しで,非常に難しい。日々,研鑽を積まねばと思っています。もちろん,大きい問題を解決し,実際に和解に向かう際は,細かな点にも配慮しながら,和解案を練っていきます。いわゆる付随的な条項で,和解が流れてしまったという事態は避けたいものです。
こうして和解を目指すうえでは,和解のメリットをよく理解しておく必要があります。和解は,訴訟(判決)と違い,①All or Nothingではなく,権利に相応する解決が得られる,②多様な出口(解決方法)がある,③請求原因,抗弁,再抗弁などという訴訟手続上の制約にしばられない判断ができる,④事情にも配慮できる,⑤三段論法にこだわらず,論理性以外の要素も取り込める,⑥一見偶然的に生じた事象なども考慮できる(ユングのいう「共時性の原理」),⑦顕在的な事情だけでなく,無意識化又は潜在的な事情にも配慮できる,⑧必ずしも請求権の有無にとらわれない,などといった,たくさんのメリットがあります。
では,なにを物差しにして,和解を目指したらよいか。ⅰ)成文法,ⅱ)判例,ⅲ)裁判上の和解・調停・仲裁の解決例,ⅳ)学説,ⅴ)諸科学の成果,ⅵ)慣習,ⅶ)道徳,ⅷ)自然法,ⅸ)生きた法(校則など),ⅹ)経済的合理性,ⅺ)ゲーム理論,,,,,などなど,いろいろとありますが,ときには,自ら新しく発見・想像した規範を用いることもあります。地方で難しいのは,ⅵ)慣習との向き合い方だと思います。たとえば,実定法の趣旨と慣習が食い違うような場面では,慣習を尊重しながら穏便に解決を目指すのがあるべき姿なのか,実定法の趣旨を浸透させるために話をするのがあるべき姿なのか,悩むと思います。しかし,いわゆる「悪しき慣習」が問題になる場合などがあれば,後者を浸透させられるよう,努力していかねばと思っているところです。
ざっくばらんに記載しましたが,和解のあり方は,弁護士として活動しながら,いつも頭を悩ませているところです。いろいろな弁護士が,いろいろな方法を実践しており,今後もますます精進せねばと思います。