私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

ハラスメント研修

平成31年1月23日14:00~15:15,@豊前市役所3F大会議室にて,「ハラスメント-実務対応の在り方ー」という演題で,講演を担当させていただきました。

豊前市人権センター及び企業と労働・人権啓発部会は、平成27年より,地方公共団体と企業のかかわりを強めていくための一策として,豊前市内企業人権研修会を執り行っています。このたび,「ハラスメント」について,「具体的な事例を交えて話してほしい」というリクエストのもと,講師依頼をいただきました。

ハラスメントの本質,判断方法などについて検討するのはもちろん,管理職の方が多く受講されていたため,日々どのような取り組みをしていけばよいかという点も考え,さらに,法改正の機運も高まっていますので,この点の解説もいたしました。

先般,公平委員会向けの講演の際も,世の中の関心の高まりを受け,ハラスメントの講演を行いました。そのころは,官のセクハラ問題・セクハラ発言問題がクローズアップされていました。その後今回までの間は,むしろ,スポーツ界でのパワハラ問題がクローズアップされているように思います。たまたま,演題が重複してしまったため,同じような話が続いてしまいましたが,聴講者が異なるため,今回は,管理職の方が明日からどのような意識で・どのようなアクションを起こしていけばよいかを考えながらお話しさせていただきました。

70~80名ほどの大人数での受講でした。緊張しました。少しでも実務のお役に立つ情報をつかんでいただけたなら,望外の喜びです。

反省点として,事前に事務局にデータはお渡ししていたのですが,私がうまく伝えきれていなかったようで,パワポスライドのレジュメを印刷したものが配布されていないというアクシデントがありました(きちんと確認できていなかった私のミスです。)。今回のパワポは,かなり細かいことも書いているので,持ち帰ることを前提に書いていたのですが,事前準備をきちんとしておかないといけませんね。パワポと私の話に集中していただけると開き直って,ポイントに絞って話せたので,これはこれでよく伝えられたのではないかと思っていますが,後でレジュメを見たいという方がおられたら,非常に申し訳ないことをしたと思いますので,今回のレジュメは,私の講演会履歴のページ(「弁護士紹介」ページの下の方)において,公開する扱いにさせていただいております。

聴講された方でなくとも,内容にご意見ございましたら,ぜひ後学のために,コメントをいただけますと幸甚です。

今後も,事件処理に加え,講演会活動も頑張っていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。

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スタンドアップ

セクシャルハラスメント-日本では,福岡セクシャルハラスメント事件において,晴野まゆみさんが,全国初のセクハラ訴訟を提起し,勝訴したことによって,広まったと言われています。平成元年1月には,流行語大賞にもなりました。

この事件において,弁護士は,外国ではすでにセクシュアルハラスメントという概念が広まっていたことを知ったといいます。では,そこでいう外国のリーディング・ケースとは?…映画「スタンドアップ」は,1984年にアメリカで初めてセクシュアルハラスメント(性的迫害)の集団訴訟を起こし,1998年に和解を勝ち取った女性の実話に基づいた衝撃作です。

【ネタバレ注意】 主人公は,レイプにより望まぬ出産を強いられた過去をもつ女性。息子にはそのことを話しておらず,衝突しながらも,大切に育てている。

生活の糧を得るため,鉱山で働くことになるが,そこでの労働環境は,ひどいものであった。入社前には妊娠していないかの検査をされ(妊娠している女性は働けないという意識のあらわれ?),入社初日に「医者に聞いたぞ。なかなかイイ体してるんだってな」とまで言われる。男性ばかりの職場で,女性職員は差別的な取り扱いを受け,汚物をまかれ,いつレイプされるか怯えながら過ごす…。相談しても聞き入れられず,「辞めるのを認めよう」と言われ,だれも助けてくれない,そんな毎日に耐えかねた主人公は,訴訟提起する決意をします。

彼女の望みは,きちんと仕事に就き,2人の子を育てていくことだけなのに。

訴訟では,主人公を悪者のように問い詰められ,必死に隠し通してきた過去を暴露される。同じく被害を受けているはずの同僚女性は,仕事を失い又は標的にされることをおそれ,嘘の供述をする。しかし,主人公の必死の訴えが奏功し,最後には,みなが立ち上がり(stand up),勝訴的和解を手にする,という物語です。

実話をベースにしているということですが,こんなことがわずか40年ほど前に起こっていたというのは,衝撃です。「言葉の暴力」などといったレベルではなく,明らかな迫害のように思えますが,女性の権利として声高に主張できるようになるまでの歴史の一端を見たような気がしました。

法廷でなされる主張も,セクハラの構造的な問題をよくあらわしているもののように感じます。たとえば,「本当に嫌ならば拒否しているはずだ」など,いまでもよくなされる主張ですが,本作でも声高に主張されていました(この点,最判H27/2/26にて,「被害者が明白な拒否の姿勢を示さなかったことを(加害者)に有利に斟酌することはできない。」とされています。)。

テーマは重く,楽しんで観れるというタイプのものではないですが,非常に考えさせられるものがあり,ドラマとしても見ごたえのあるものだったと思います。おすすめです。

許すな!パワー・ハラスメント

セクシュアル・ハラスメントは,英語圏で使われるれっきとした英熟語であり,アメリカ判例法も形成されてきたものです。一方,パワー・ハラスメントは,日本人によって英単語を組み合わせてつくられた造語です(弁護士になって初めて知りました。)。

バブルのころ。企業は目覚ましい発展を遂げ,労働者もその波に乗っていたといえます。ところが,バブルが崩壊し,リストラの波がおそいます。上司からのプレッシャーもきつくなってきます。メンタルヘルスのバランスを崩す社員が増え,社会問題化されました。そんななか,2003年,岡田康子著「許すな!パワー・ハラスメント」が出版されます。同氏は,「パワハラほっとライン」という電話相談を主宰する㈱クオレ・シー・キューブの代表取締役です。同氏が,パワハラの名付け親と言われており,本の出版から,徐々に言葉が浸透していき,いまではその言葉を知らない者はいないといってもよいでしょう。

その後,2012年,それまでの議論の蓄積を踏まえ,厚労省が,パワハラを再定義します。

2003年の本ですから,その後の議論は踏まえられていませんが,さすが原点ともいうべき,示唆に富む事例が多数掲載されています。電話相談の事例の蓄積をもとに記載されているため,説得力があります。「なぜ,この上司はパワハラをするのか」という背景事情,「もし,あなたがパワハラ被害に遭ったら」という対処法に至るまで,具体的に書いてあり,一読の価値ありです。

興味がある方は,ぜひ一読してみてください。

平成30年8月28日,ハラスメントに関する講演会のご依頼をいただいています。この機に,私自身が改めて学びなおし,身のある講演会にしていきたいです。

5時に帰るドイツ人,5時から頑張る日本人

「メメント・モリ」とは,ラテン語で,「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味です。ドイツ人は,この言葉を噛みしめ,若いころから,休暇を十分に楽しむ風習があるそうです。

ドイツと日本の働き方を比べながら,日本の労働環境に警鐘を鳴らす,興味深い本を読みました。熊谷徹「5時に帰るドイツ人,5時から頑張る日本人」。三波春夫氏が広めた「お客様は神様」といい言葉があらわすように,過剰ともいえるサービスを競い,顧客もそれを求める日本と,サービスはそこそこでも寛容なドイツ。労働時間の長さが評価されかねない日本の風土と,残業を許さないドイツの風土。ドイツは,1日10時間を超える労働は法律違反で,管理職も,徹底して,退社を推進しています。日本も「働き方改革」として,労働時間の制限を検討しているものの,とても十分な内容とは思えないのが現状ですが,ドイツのように法律で強制力をもって長時間労働の禁止を徹底するぐらいではないと,これまで築いてきた日本の風土を破って改革をするのは,難しいのかもしれません。

日本でNHK記者として働いたのち,実際にドイツで暮らしてきた経験を踏まえ,比較法的に働き方について考えていきます。日本においても長時間労働,残業を許さない風土,社会的合意を形成するためにどのような取り組みが有効か,考えていく上でのヒントになるかもしれません。高橋まつりさんの事件の教訓を風化させないよう,労働者皆が,そして使用者も,きちんとした関心をもって議論していく上で,このような本は大変参考になるのではと思いました。