私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

法律のイメージ

日経新聞の名物コラム「私の履歴書」。

少し時間がたってしまいましたが,11/4(水)のコラムに興味深い記載がありましたので,ご紹介を。

三菱総合研究所理事長・小宮山宏氏の記事が展開されています。私が注目したのは。大学生のときの,法学を学んだときの話。

「法学も面白かった。教えてくれたのは伊藤正己教授。後に最高裁判事になる方である。最初の講義で「法律は言葉で表すが,言葉で全部書けるものではない。言葉の意味は時代によって変わるし解釈だ。結局,どう解釈するかで決まるから,判例の積み重ねで社会の法的秩序は維持されている」と述べられた。抱いていた法律のイメージが崩れた。」

もともと,法律にどんなイメージをもっていらっしゃったのでしょうね。何でもカチっと決まっていて,決まった法律の条文を読めば何でも解決するといったようなイメージでしょうか?そうであるとすれば,私も,確かに,勉強する前は,六法全書を全部覚えて,その知識で何でも対応できるのだろうくらいのことを考えていました。でも,世の中と人間いうのは,知れば知るほど複雑で,一筋縄ではいかなくて,法律も人間生活を円滑にした梨よりよくしたりするための道具でしかない。その法律も穴があることも多く,そのときは道具である法律そのものを変えていく。日々動いている法律の世界は,難しく,それでいて面白いものだと思って,実務に取り組んでおるところです。

伊藤正己教授の言葉となると,(主に法曹関係者において,)興味を惹かれる方もおられるだろうと思い,ご紹介いたしました。

弁護士に依頼するメリット・デメリット

ご依頼者様は,弁護士に対し,なんらかのメリットを感じて,依頼するものと思われます。弁護士も,それを受け止めながら,依頼者の利益が最大化されるよう,尽力します。その対価として,報酬をいただきます。

弁護士に依頼するメリット・デメリットとは,なんなのでしょうか。以下,少し,まとめてみたいと思います。 (①②③…のナンバリングは,それぞれ対応しています。)

メリット:①第三者の目から見た客観的な視点で事件を整理・処理できる。②専門家の方が,手際よく解決が期待され,すべて自分でやるよりも,時間も手間も省くことができる。③弁護士に一緒に考えてもらえる。それにより,自分の精神的負担も減らすことができる。④法治国家である日本において,法律に関する専門的知見をもとに,事件の解決を期待することができる。

デメリット:①事件の事実を経験し,事実をよく知っている当事者以外の人が判断する。②専門家の意見が本人の意向と一致するとは限らず,場合によっては,余計に迂遠な解決になる危険性も否定はできない。③事件が自分の手から離れる。(弁護士との信頼関係が重要。)④弁護士の法的知見について悖る可能性がないとはいえない。

弁護士の事件処理において,ご依頼者様との信頼関係は,必要不可欠です。私も,常々,①傾聴=事実についてよくお聞きする。②十分な説明を行う。③専門家としての意見は述べつつも,依頼者と一緒に考え,事件の解決を目指す。④常に研鑽を怠らない。ということを心がけ,その上で,ご依頼者様に,弁護士に依頼するメリットを感じていただきながら,気持ちよく,ご依頼をいただきたいと思っています。

ご依頼者様は,決して安くはない費用をお支払いいただき,弁護士に事件処理を依頼するのですから,弁護士の事件処理の内容を透明化し,弁護士が報酬にみあうだけの働きをしていることを実感してもらうということも,心がけています。弁護士は,ご依頼者様の人生の一大事,お困りごとによりそうものですから,ご依頼者様の意向を尊重し,法的に可能な範囲で,ご依頼者様の利益が最大化できるよう,努力することは,当然です。

一方,報酬に関し,安易な値引きは,まるでご依頼者様のお困りごとを安く見積もっているようで,抵抗があるものです。弁護士は敷居が高い,費用が高いという声は根強く,「市民に力を」を経営理念とする当事務所としては,大変悩ましいところですが,「適正」な費用の見積もりができるよう,常に頭を悩ませており,当事務所では,求めがあれば,できる限り詳細な見積書を作成させていただいているところです。

ご依頼者様には,気持ちよくご依頼いただき,強い信頼関係のもと,一緒に事件の解決を図っていきたい。なかなか難しいことではありますが,これからも悩みながら地域のために尽力していく所存ですので,どうぞよろしくお願いします。

紛争解決における「和解」との向き合い方

豊前地域に限られないとは思いますが,みなさん,紛争は一刻も早く解決したいと望むものだと思います。その際,和解というのは,非常に有効な手段になります。一方で,本来法定されている権利義務を不当に捻じ曲げることになりはしないかという点は,いつも気を付けています。Win-Winの解決ができるときはこれを目指し,ここまできれいに解決できない時も,当事者の望みをかなえ,かつ,両者納得のいく解決を目指します。

ところで,「和解」というと,「仲直り」というニュアンスでとらえられ,拒否反応を示す方もおられます。しかし,和解は,「紛争解決(終了)方法の1つ」に過ぎず,いつもそのように説明しています。要は,紛争の解決の仕方として,(訴訟という手段もあるけど,)和解という手段もありますよとのことです。和解は,「落としどころ」とも違うと思います。この言葉は,なんだか判断者に「落とされている」という感覚を与え,受けが悪いようです。私は,落としどころという言葉は使わないようにしています。和解は,「互譲」で成立するということは否定できませんが,「妥協」しましょうというと,これまた依頼者には受けが悪いようです。解決に向けた「歩み寄り」をするくらいの感覚でのぞむのがよいのかなと思います。

和解を目指すうえでは,その事件の問題の核心,その事件で当事者が最も問題にしている点を的確に捉え,これにメスを入れることが重要です。ここに一定の解がないと,到底当事者の納得が得られないと思います。そのためにも,当事者の話をよく聞きます。これが,言うは易く,行うは難しで,非常に難しい。日々,研鑽を積まねばと思っています。もちろん,大きい問題を解決し,実際に和解に向かう際は,細かな点にも配慮しながら,和解案を練っていきます。いわゆる付随的な条項で,和解が流れてしまったという事態は避けたいものです。

こうして和解を目指すうえでは,和解のメリットをよく理解しておく必要があります。和解は,訴訟(判決)と違い,①All or Nothingではなく,権利に相応する解決が得られる,②多様な出口(解決方法)がある,③請求原因,抗弁,再抗弁などという訴訟手続上の制約にしばられない判断ができる,④事情にも配慮できる,⑤三段論法にこだわらず,論理性以外の要素も取り込める,⑥一見偶然的に生じた事象なども考慮できる(ユングのいう「共時性の原理」),⑦顕在的な事情だけでなく,無意識化又は潜在的な事情にも配慮できる,⑧必ずしも請求権の有無にとらわれない,などといった,たくさんのメリットがあります。

では,なにを物差しにして,和解を目指したらよいか。ⅰ)成文法,ⅱ)判例,ⅲ)裁判上の和解・調停・仲裁の解決例,ⅳ)学説,ⅴ)諸科学の成果,ⅵ)慣習,ⅶ)道徳,ⅷ)自然法,ⅸ)生きた法(校則など),ⅹ)経済的合理性,ⅺ)ゲーム理論,,,,,などなど,いろいろとありますが,ときには,自ら新しく発見・想像した規範を用いることもあります。地方で難しいのは,ⅵ)慣習との向き合い方だと思います。たとえば,実定法の趣旨と慣習が食い違うような場面では,慣習を尊重しながら穏便に解決を目指すのがあるべき姿なのか,実定法の趣旨を浸透させるために話をするのがあるべき姿なのか,悩むと思います。しかし,いわゆる「悪しき慣習」が問題になる場合などがあれば,後者を浸透させられるよう,努力していかねばと思っているところです。

ざっくばらんに記載しましたが,和解のあり方は,弁護士として活動しながら,いつも頭を悩ませているところです。いろいろな弁護士が,いろいろな方法を実践しており,今後もますます精進せねばと思います。

「同性婚のリアル」‐人権講演会を聴いて2‐

以前書きましたが,豊前市の人権講演会で,東京ディズニーリゾートで初の同成婚式を挙げた東小雪さんの講演を聴くことができました。その際に購入した「同性婚のリアル」。せっかくなので,法制度面にしぼって,書いてみたいと思います。私なりにQ&Aでまとめてみました。

Q 日本の同性のパートナーシップに関する法律は?

A なにもない。

Q では,同性婚の結婚って??

A 法律上は,残念ながら,「ルームシェアしているおともだち」ぐらいの意味しかないと言わざるを得ない。実態はふうふなのに。

Q 法律上の婚姻と認められないことによる不都合は?

A 同性パートナーに相続権がない。所得税の配偶者控除が受けられない。子どもの共同親権が持てない。特別養子縁組で子どもを迎え入れることができない。 そのほか,多くの公営住宅に家族としては入れない,外国籍のパートナーに配偶者ビザが下りない,などの不都合がある。

Q 民間サービスで不都合を感じることは?

A 民間サービスなので,お店・サービスによって取り扱いはさまざま。ただし,多くの場合,不動産購入時に2人の所得を合算してローンが組めない,不動産を共有名義にできない,賃貸契約を結びづらい,病院で家族として面会できない不安がある,同性パートナーの手術同意書へサインできない不安がある,企業の福利厚生が同性パートナーに適用されない場合が多い,などの不都合がある。

Q 2015年11月5日から東京都渋谷区で認められたパートナーシップ証明書には,どんな意味があるの?

A 残念ながら,法的な意味はない。しかし,たとえば,生命保険の死亡保険金受取人に同性パートナーを指定できるようになる方向で業界が動き出すなどの事実上の効果があった。大手通信会社でも,同性パートナーに家族割引を適用できるようになるなどした。家族向け区営住宅への入居が認められるようになったところもある。ただし,あくまで,証明書をもっているカップルの扱いについては,事業者の判断にゆだねられているところが大きい。

そのほか,生の声がてんこ盛りでしたが,やはり,現状では,同性でパートナー関係を築いているふたりには,住みにくい社会と言わざるを得ないようです。引き続き,この問題について,勉強し,考えていきたいと思います。