私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
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DV パンデミック
昨日(4/19)の西日本新聞16版2面。「DV パンデミック」というセンセーショナルなタイトルが目を惹きました。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出制限により,DVが世界で急増しているとのことです。国連も警鐘を鳴らしています。
日本でも,DV相談のためのサイトが整備されるなど,対応が進んでいます。
我々法曹は,こうした問題に対応できるだけのノウハウを持っているわけですから,適切に対応できるようにしたいものです。
そもそも,DVとは,親密な関係における一方パートナーから他方パートナーに対する暴力のことです。身体的暴力,性的暴力,経済的な暴力,精神的な暴力など,さまざまな種類があります。加害者側にまま見られる行動として,①暴力を正当化,否定または過小評価しようとする,②暴力の原因が被害者にあったと主張して被害者を非難する,③非常に冷静で関係者には協力的であるかのごとく装う,④被害者について公的機関に不利な通告をしようとする,などの特徴が認められ,こうした特徴を踏まえた対応も必要になってきます。
DVに対応するにあたって,重要な役割を担うのが,配偶者暴力相談支援センターです。保護命令を申し立てる要件に,同センターか警察に対し,相談等をしておかなければならないというものがありますから,その意味でも重要です。警察の生活安全課に相談するのもよいでしょう。
DVから離れるには,物理的に距離をとるのが最も有効でしょうから,家を出ることを検討することになりますが,避難するに際しては,ある程度の現金,本人や子ども名義の預金通帳と印鑑,実印,印鑑カード,クレジットカード等の財産上の重要書類や,健康保険証や常備薬,運転免許証やパスポートなどの身分証明書,暴力を受けた証拠になる写真や日記,住所録や昔の手帳,携帯電話などの加害者が被害者の交友関係を知り得るもの,子どもにとって重要なものなどはできるだけ持ち出すとよいでしょう。避難後の離婚に伴う財産分与まで見越せば,財産分与で必要になってくる各種資料(のコピー)も持ち出せるとよいでしょう。子どもがいる場合,必ず一緒に非難します。いったん子どもと離れて自分だけ避難すると,後から子どもを取り返すのは,法的にも事実上も非常に困難です。
DV対応の際,非常に有用な対応手段として,保護命令があります。簡単に言うと,「更なる」暴力により生命身体に「重大な危害を受けるおそれ」が大きいときには,被害者への接近禁止命令等の強い効果を伴って裁判所が命令を出せるという制度です。
注意点として,配偶者相談支援センターか警察に相談が必要です。宣誓供述書を作成するという方法もありますが,スピードが求められる保護命令では,相談する方がよいと思います。DVの一般論として,被害者において住所地を知られたくないというニーズがある場合が多いので,バレないように,工夫して,必要な部分は抽象化して,申立書を起案することになると思います。モザイクアプローチ(いくつかの情報を組み合わせると居場所がわかってしまう)にも気を付けます。仮に,子への接近禁止命令を求める場合は子の同意書が,親族等への接近禁止命令を求める場合は対象者の同意書が必要になるとともに,これら親族の戸籍が必要になったり,親族も警察等に相談していなければならなかったりします。つまり,求める効果が幅広くなればなるほど,収集しないといけない書類が増えるわけですが,迅速に申し立てる必要がある手続ですので,すみやかに手続がとれるよう,段取りよくやるか,本当に欲しい中核的な部分に絞っての申立てをするなど,迅速さと求める効果を比較しつつ,適切な対応をすべきです。また,仮に,裁判所の心証が芳しくない場合は,保護命令を認めない決定が加害者の免罪符とならないよう,あえて取下げも検討した方がよい場合もあります(保護命令の効力が発生する前までは取下げが可能です。)。(なお,逆に,相手方の立場としては,裁判所から保護命令という形で効果が生じないよう,相手方の方から,DV保護命令の効果と同内容の誓約書を差し入れて対応するということもあります。)
離婚調停・訴訟においても,物理的に接触しないような配慮を欠かさず,手続を進めます。
刑事事件対応としては,暴行罪,傷害罪,脅迫罪,強要罪,強制性交等罪,強制わいせつ罪,DV防止法,ストーカー規制法等について検討する必要があるでしょう。
被害者のエンパワーメントとメンタルケア等も必要になってきます。適切な対応ができるよう,研鑽を積みたいと思います。
以上のように,DV対応は,総合力,柔軟な対応,迅速力というものが求められており,非常に法曹の力量が試されている者と思います。私も,事案がきたら,適切な対応ができるよう,これまでの経験も踏まえ,今こそ適切な対応を重ねていきたいと思っています。