私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
分類別: 法律全般
身近な事から、難しいことまで。法律全般を扱います。
レビュー 改正民法のはなし
内田貴「改正民法のはなし」
改正の中心になった著者が,改正の経緯,背景,結果などについて,わかりやすく解説。比較的薄く,1つ1つの項目の分量もさほどでなく,読みやすい。私が勉強してきた改正本のなかでは最も読みやすい読み物だったと思います。改正のストーリーがあって,頭にも入ってきやすかったです。
深めるのは別の書籍に譲るとして,まず改正の概要を押さえるには最適ではないかと思います。
大学時代,私は内田先生の民法の教科書で勉強していました。設例が多く,民法の条文の並びではなく教育的観点から並び替えた順番での解説で,工夫を凝らしており,わかりやすかったです。大学院では,内田先生が民法改正にかかわるようになって以降,書籍の改訂がなされず,情報が古くなっていたため,佐久間先生,道垣内先生,潮見先生,二宮先生らの教科書を利用するようになりましたが,この度,内田先生の民法の教科書も改訂されたようです。初心に戻って,基本法の勉強を進めていきたいと思います。
レビュー 交渉力
橋本徹著「交渉力」
弁護士は裁判ばっかりやっていると思われていることもありますが(実際にそう言われたことがあります。),弁護士はむしろ裁判を回避していかに交渉でうまくまとめるかということも問われているものと思います。裁判が簡単なんてことは決してありませんが,裁判所が指揮して進めていく裁判手続と,自らがリードして依頼者の利益を最大化するためにやり取りを重ねる交渉とを比べて,交渉の方が簡単なんてこともまたないと思います。
弁護士,府知事,市長として活躍している橋本弁護士のしたためた「交渉力」。内容は,実例を挙げたかなり具体的なものでした。
本書で紹介されている交渉の極意自体は,抽象的にはシンプルですが,じゃあ実際に実行するとなると,これがなかなかできないものです。
交渉には,敵対的交渉と協調的交渉しかない。協調的交渉の場合,対等に話をしないと,話はまとまらない。相手を動かすには,①利益を与える(譲歩する),②合法的に脅す,③お願いする,の3つしかない。①交渉を成功させるには,こちら側がマイナスにならずに,相手には利益になるものを見つけ出す作業が大切である。「仮想の利益」を作り出すノウハウも重要になってくる。②交渉前に圧を掛けておくことも効果的。法律の範囲内で喧嘩を辞さない覚悟も必要である。自分に力がなければ,いったんひいて,力を蓄えることも必要。③まずは脅し,その後多少の譲歩をして,どうしても歩み寄れなければお願いするしかない。纏まらない場合やお互いに別の途を歩むことになったとしても,握手して終わることが必要。
エッセンスをまとめると,こんな感じでしょうか。内容が濃いですので,ぜひ一度読んでみられてください。
民法改正(労働法含む) 其の二(賃金債権の消滅時効)
民法改正と言いながら,関連する労働法の関係の記事です。
先般,時効に関する改正がありましたという記事を書きました。関連して,賃金債権の消滅時効につき従来2年だったのが,3年に改正になりました。これは,本来,民法で改正した主観的起算点から5年という規定にあわせて5年としようとしていたようですが,いきなり倍以上にすると影響が大きいということで,当面3年ということのようです。そのうち5年になるかもしれませんね。
実務上の影響はかなり大きいかもしれません。 現状,2年の残業代請求でも,かなりの金額になることもありますし,検討する資料の精査,計算も大変です。期間が延びると,会社の負担が大きくなるかもしれませんね。「いや,残業させてるんであれば払わないといけないでしょ」という,もっともな意見もあると思いますが,日本の実情を踏まえると,やはり影響は大きいのではと思います。
経済界でも,5年にするのは,結構な反対があったようです。時間管理の証拠保存も,少なくとも3年間はしておかなければなりませんね。労働基準法109条で,「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。」とされていますが,3年間という数字は,これも参考にしたのかもしれませんね(この部分は,裏はとっていない,感想みたいなものです。)。
民法改正施行 其の一(消滅時効一般)
本日の日経新聞,西日本新聞を見ていると,民法改正の施行の記事が見当たらない…
いわゆる債権法改正につき,2020年4月1日から施行となっているはずです。それだけ,突如生じた新型コロナウイルスの猛威がものすごく,他の話題がかすんでしまっているような社会情勢なのだと感じました。日本の基本法の大事な転換点のはずなんですが…
それはともかく,今後しばらくは,改正された民法の記事を細切れに挙げていきたいと思っております。弊所において交通事故の取り扱いが多いため,これを中心に。
大きな改正のひとつが,時効です。従来から,時効期間が統一されておらず,弁護過誤の温床などとも言われてきた,複雑でわかりにくい部分です。今回の改正である程度整理されています。
改正民法では,消滅時効の規定は,次のようになりました。
交通事故の際に用いる不法行為に基づく損害賠償請求につき,「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時」(主観的起算点)から3年,「生命又は身体の侵害による損害賠償請求権」については主観的起算点から5年,さらに,「不法行為の時」(客観的起算点)から20年とされました。 最後の,20年の期間は,従来,除斥期間と解されてきましたが,今回の改正で時効期間に改められました。これにより,時効の更新,完成猶予,あるいは信義則・権利濫用などの適用が考えられるようになり,柔軟な解決が可能になるものと言えます。
他の記事も随時挙げていきます。
海事補佐人
海事補佐人に登録しました。
海事補佐人は,海難審判において代弁活動をいたしますが,当事者らにとっては,戒告や業務停止を出されてしまうと,本来業務を圧迫される大問題になります。
海事代理士と協力しながら,適切な弁護活動ができるよう,活動の幅を広げていきたいです。
育徳館高校 消費者被害出前授業
令和2年2月14日,福岡県立育徳館高校にて,消費者被害に関する出前授業を行ってまいりました。
いま,令和元年度巣立ち応援事業が実施されています。2020年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられることを1つの契機として,高校生が自立した消費者になるために必要な知識や,悪質商法などのトラブルへの対応方法を身に付けるために,実践的な消費者教育講座を実施しています。
時間が限られていますので(高校生の授業は1コマ50分。紹介とか教員コメントとかいろいろやっていると,実質話す時間は40分くらい。),講座で伝えたい内容をしぼって,契約とはどういうものか→未成年の場合どのような保護があるのか→成人したら自衛しないと→もし被害に遭ったらどうする→どんなところに相談したらよいか,というようなことをお話ししました。冒頭,契約内容に争いがある実際の事件の経験をお話しすると,比較的真剣に聞いていただいたような気がしました。不当請求事案(ワンクリック詐欺)などの話も興味をもっていただけたようです。未成年者取消しの一般的知識,動画再生も含めたマルチ商法の例,クーリングオフの概要などを説明の上,社会人になるということが,自由とともに責任も伴う,みなが認識している以上に重大な変化であることをお話ししてしめくくりました。
消費生活センターや法テラスの宣伝も忘れずに。
今回のお話が,少しでも生徒の今後の生活の糧になっていただければ幸いです。
なお,弁護士の仕事に興味がある人は,ぜひ事務所の見学にお越しください!
卓話「知らないと怖い法律」
本日,令和2年1月16日,豊前ロータリークラブの卓話において,「知らないと怖い法律」と題して,豊前で開所して以降約3年ちょいの間で実際に経営者及び職員から受けた相談をもとに,知っておいて損しない事柄についてお話しさせていただきました。
内容は,おおむね以下のとおり。 ・よくある架空請求に騙されないようにするためには… ・第三者が従業員の給与を請求してきたら… ・求人広告を作成するときは注意! ・固定残業代性はオススメしない。 ・休暇(生理休暇,年休など)を与えないと… ・団交拒否すると違法です! ・団交対応のコツ ・名ばかり取締役も責任を負う?! ・危機時期における自力救済は許される? ・会社役員の交通事故…休業損害・逸失利益 ・自営業者の交通事故…休業損害・逸失利益 ・休車損-予備車があったら使わないといけないの? ・評価損-愛車の格落ちを請求できない!
(以下時間が足りなかったもの) ・法人への遺贈は税金のトリプルパンチ ・「7人の侍」を放置すると? ・ヤミ金に負けるな!
少し補足します。 訴訟管理センター,民事訴訟通事務局なるものから意味不明なはがきが来ることについては,裁判所からも注意喚起がなされています。 解雇紛争については触れるべきだったかと思いました。日本の解雇法制がいかに厳格であるか,一方で解雇が認められるのはどのような場合か,機会を作って発信していきたいです。 交通事故は取扱件数が多いこともあってかなりお話ししたかったのですが,時間の関係で駆け足でした。交通事故などに遭っても,役員報酬は税務上減額しない場合が多いので,損害がないとして保険会社に争われます。減額があった場合も,1人株主やそれに近い同族企業などは,恣意的に下げたんだろうなどと言われてしまいます。いずれにせよ揉めます。さらに,利益配当部分は賠償の対象にならず労務対価だけが賠償の対象になるという理論があるため,なお賠償を認めていただくハードルが高くなります。個人事業主は,多かれ少なかれ節税のための工夫(売り上げをできるだけ低く,経費をできるだけ多く)をしており,確定申告上の所得が圧縮されていることが多い。これをベースにすると低額の休業損害になりやすく,よく揉めています。賠償額に不満がある人はご相談ください。
最初は簡単に話し終わるかな?と思ってましたが,話始めると結構話せるものですね。それだけ真面目に仕事をしてきたのだと思っておきます。 教科書的にまとめたものでなく,ある特定の方々に役に立つように考えてお話しするのもなかなか面白いと思いました。機会があればまた続けていきたいです。
みなさま,ご清聴いただいていたように思います。少しでもお役に立てると幸いです。
I am Sam/アイ・アム・サム
I am Sam/ アイ・アム・サム。知的障害者である父親が,娘の養育権を得るために奮闘する物語です。養育権争いと言っても,夫婦間の争いではありません。母親は,映画の冒頭で,子を産んですぐに失踪します。父親は,娘を大切に,大切に育てます。そんな彼を温かく見守る周囲。しかし,7歳ほどの知能しかもたない彼のことを,7歳に至る娘は,「周囲と違う」と感じるように。そのことを話すと,悲しそうな父親。娘は,父親への罪悪感からか,積極的に学習するのに抵抗を感じるようになります。それを見た周囲が,ある事件を契機として,父と娘を引き離そうとするのです。父親は,弁護士とともに,娘の養育権を主張して,奮闘するのです。
この映画は,カメラワークが独特です。手持ちのカメラでしょう。不安定な視点という表現なのでしょうか。若干酔ってしまうのがたまにキズですが,表現方法としてはありかなと思います。
主人公サムが勤めるのは,スターバックス。スターバックスは,積極的に障害者雇用をしており,そのような制度もあるようなのですが,「特別なことはしてない」ということで,あまりアピールしていないのだとか。映画では,そんなスタバで,従業員やお客様から見守られるサムの図がほほえましいです。
随所にビートルズの音楽,小ネタが。私は,全部が全部わかるわけではないですが,探してみると面白いかもしれませんね。
障害者・親権争い・親子の絆といった,重いテーマに挑む映画ですが,親子の絆って素晴らしいということを,改めて感じさせられます。健常者でも,子育てや,親子の関係は,難しいものがありますよね。では,障害者は?映画を見ながら,親子関係について,改めて考えてみませんか。
憲法市民講座-楾大樹先生講演会
福岡県北九州部会では,定期的に,憲法市民講座と題して,市民も交えた憲法の勉強会を行っています。平成30年3月27日18時~20時30分,広島弁護士会・楾大樹先生をお招きして,憲法に関するわかりやすい講演をいただきました。
以前,私のブログでもご紹介していますが,「檻の中のライオン」という斬新な憲法の書籍を執筆されている先生です。クイズ形式で,さまざまな憲法の問題につき,一般の方に誤解を招きやすい部分を紹介しながら,講演が進んでいきました。ときには,小学校の公民の教科書がいかに曖昧につくられているか,厳しいご指摘をいただきながら,お話しいただきました。自民党憲法改正案なども紹介され,参考になりました。 2013年の参院選で争点となった,「憲法96条改正論」。2015年に成立した安保法制。緊急事態条項をつくろうとしたり,特定秘密保護法で選挙の前提となる情報収集が困難になったり…。2012年の自民党改憲草案は,国家が国民を縛るという逆転の発想でつくられているのではないか。最近の議論も踏まえ,大変勉強になりました。
詳しくは,→檻の中のライオンプロジェクトも参照。
ぜひ,多くの人に,興味をもってもらいたい。講演を聞いてもらいたい。書籍を読んでもらいたい。そんな内容です。
私も,「憲法紙芝居」を購入しました。豊築地域の憲法教育に,利用させていただき,主権者である皆様への情報提供の一助となればと思っています。
よろしくお願いいたします。
近時の消費者問題雑感③
消費生活相談員との勉強会を終えての雑感③です。
③業務提供誘引販売取引
仕事を提供して収入が得られることを誘引文句に,その仕事をするために必要だとして商品や役務を販売するというもの。楽して儲けれるなら…とか,いますぐお金が手に入るなら…とか,消費者心理に付け込んで,利得を得ようとする商法です。(消費者に対しても,安易に乗っからないように法教育の必要性はあると思います。)。内職商法やモニター商法がその典型です。
特商法は,これに当たる場合,概要書面・契約書面をそれぞれ交付するべきこと,クーリングオフができること,クレジットを利用した場合は,業務の提供に関する債務不履行を理由にクレジット会社への支払拒絶の抗弁が主張できる(抗弁の接続)などの定めをしています。
「収入が得られますよ」とのうたい文句で,収入が得られるようななんらかの仕事の記載もないようなマニュアルを提供しているようなケースもあるようで,そのような場合は,もしかしたら,不実告知,詐欺などといった構成で,契約を取り消すという方が,実態にあっているかもしれません。
いずれにせよ,消費者側の自衛策としては,安易に儲かる手段などないと自覚して甘言に惑わされないようにすること,いざ業務提供誘引販売取引に引っかかってしまう場合にはひとまず早急にクーリングオフを検討するなどすべきということを押さえておけばよいかと思います。