私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
分類別: 犯罪・事件
自首について
自首(刑法42条)とは,犯人が捜査機関に自発的に自己の犯罪事実を申告し,その訴追を含む処分を求めることをいいます。
自首が認められると,裁判官の裁量により,減軽がされる可能性があります(自首の効果)。
こうした定めがある趣旨は,①犯罪の捜査及び犯人の処罰を容易にさせること,②無実の者の処罰の危険を避けること,③予備罪等について犯行の着手を未然に防止すること,③犯人の改悛による非難の減少などといわれています。
自首が認められるためには(自首の要件),①捜査機関に発覚する前に,②犯人が自発的に,③自己の犯罪事実を,④捜査機関に申告すること,が必要です。
④捜査機関に申告するにあたっては,代理人はNG(刑訴法245条が240条を準用していない)だが,使者によるのはOK。ただ,この場合は,使者の供述が本人の自首と解するより,本人が使者を介在して自首する旨の意思表示をしたと解し,本人による直接の申告によって,自首が完結したものと見るべきではないかと思います。
手続面では,刑訴法245条が,告訴の手続を準用しています。自首の方式としては,書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければなりません。
刑訴法335条2項の事項=「法律上の成立を妨げる理由…となる事実」「刑の加重減免の理由となる事実」にあたるか。自首は後者に当たるように見えますが,これは必要的加重減免事由に限るとされていますから,裁量的に減免し得るに過ぎない自首はこれに当たらない(特別に必要的減免が定められている罪であれば別)ということのようです。
最後に,捜査機関が従うべき犯罪捜査規範では,以下のような定めがあります。
第68条(自首事件の捜査) 自首のあった事件について捜査を行うに当たっては,次に掲げる事項に注意しなければならない。 ⑴ 当該犯罪または犯人が既に発覚していたものでないかどうか。 ⑵ 自首が当該事件について他に存する真犯人を隠すためのものでないかどうか。 ⑶ 自首者が,自己が犯した他の犯罪を隠すために,ことさらに当該事件につき自首したものでないかどうか。
ご参考までに。
弁護人(韓国映画)
釜林事件(ふりんじけん)-1981年に,韓民国の釜山で発生した事件。大学生や社会活動家たちが拘留され,尋問された。22人の被告のうち19人に1年から7年の有期懲役の判決が下されたが,事件の中では,逮捕した上での自白の強要があったとされる。「釜林事件」という名称は,同時期にソウルで行われた同様の捏造弾圧事件である学林事件を踏まえた「釜山学林事件」の意味。
ソン・ガンホ主演,2013年の韓国映画,「弁護人」。実在の釜林事件を題材にした映画です。劇中では,「読書会事件」と呼ばれ,単なる読書会がアカの集まりとして弾圧されていました。 ひとまず,映画のタイトルに惹かれて鑑賞しました。弁護士の生き方を考える上で,非常に響くものがある事件でした。当初は,不動産ブームに乗っかって司法書士の仕事を奪い,「あなたの大事なお金を守ります」と銘打って税務で財を築くなど,お金もうけに走っていた弁護士が,ある事件をきっかけに,いわゆる人権派弁護士として,国家権力と闘っていく。そんな物語です。韓国では,動員総数1100万人の大ヒットだったとか。
韓国の刑事弁護法制はわかりませんが,法廷の尋問等は,少なくとも日本の法制を参考にしたら相当に問題があると思いました。主尋問なのに誘導尋問。威圧的尋問。意見を押し付ける又は意見を求める尋問。そうした細かな点はともかく,しかし,談合・デキレースに近い公安法事件に一石を投じ,最後まで闘う姿は,考えさせるものがありました。
韓国映画は,,,とひとくくりにすると怒られそうですが,オーバーで演出過剰と思われるところもあるものの,ストーリーは実話を元に考えさせる内容で,ぜひ多くの人に見ていただきたいと思いました。(拷問のシーンなど,グロイシーンもありますので,ご注意を。)
コンプライアンス研修
平成30年2月28日,豊前市役所職員向けに,コンプライアンス研修の講師を担当させていただきました。
「不正のトライアングル」(①動機,②機会,③正当化)について紹介をした上,私生活上の事情が不正の背景となりやすいこと,陥りやすい私生活上の問題,不正防止の体制整備,最後に法規範を乗り越えて犯罪に走らない高い倫理観の涵養などの諸点について,具体的にお話しさせていただきました。
200名ほどを前にお話しするのは緊張しました。 少しでもご参考いただけると幸いです。
当事務所は,研修会・講演会の講師なども積極的に行っています。ご用命の方は,ぜひお声掛けください。
執行猶予取消請求事件の口頭弁論
弁護士のなかで,刑事事件をよく扱っている方は比較的多くいると思いますが,そのなかでも,「執行猶予取り消し請求事件」を経験した弁護士は多くないと思います。
被告人が,1度,裁判を受けて,有罪になったものの,執行猶予がついた。ただ,保護観察がつき,守るべき事項が課されて,これを破ったら,執行猶予取消しになるかもよ,と注意されていた。その上で,守るべき事項,たとえば被害者に近づくなとか,そういうことを守らなくて,保護観察/検察官から,執行猶予の取消しを求められた。そんな場合です。
事件の数自体が少ない上に,国選対象事件ではないので,そのような局面に遭遇すること自体が珍しいものです。私は,この事件に直面し,国選が使えないため手弁当で行いつつ,いろいろ手探りで手続きを行ったため,ほかに事件を担当される弁護士や,自分で対応せざるを得なくなった被請求者のために,雑感めいたことを記載しておきたいと思います。
珍しい手続だったので,法文,手続などを確認しますが,実務上の取扱いなどよくわからないところもあり,執行猶予取消請求事件の口頭弁論について検討されている弁護士のブログの記載を参考にしました。
手続は,こちらをみていただければ,詳しく記載されていますので,割愛します。
おそらく,イメージとしては,刑事の第1回口頭弁論手続に近いのかなと思いました。検察官が審理対象を示し,これに被請求者と弁護人が意見し,その後証拠調べを行って,保護観察官/検察官/弁護人/被請求者の最終陳述を行って,決定が出ます。冒頭手続→証拠調べ手続→弁論手続→判決と進む刑事事件の進行に似ているのかなとは思いました。
しかし,いくつか,やりづらいところがあります。まず,最初に,検察官の審理対象の示し(執行猶予は取り消されるべき)に対し,意見を求められます。おそらく,刑事事件でいう,罪状認否にあたるイメージだと思います。しかし,検察官が述べているのは,事実というより,「取り消されるべき」という評価であって,認否がしづらいものです。そのまま意見を述べると,その後にある最終陳述(刑事事件でいう弁論になるのでしょう)との区別がつかなくなってしまいます。実際,私が経験した事件では,最初の意見を双方が詳しく述べたため,のちの最終陳述については,裁判官が双方に,「詳しく述べられたので,同様ということでいいですか。」と述べていました。証拠調べする前と後で意見が同じでいいのか??という素朴な疑問が残ります。最初の認否,最後の最終陳述でペーパーを用意するか?も悩みます。どうしても重複してしまうような気がするのです。 あとは,「被請求人」というのが,どうしても呼びづらかったですね。
いまだに,どうするのが正解なのかはわかりませんが,逆に言えば,弁護士によっていろいろと工夫の余地があるのでしょう。私が相談したベテランの刑事の先生は,「前例がないということは,なんでもありということだ。創意工夫で,いろいろとやってみなさい。」とアドバイスいただき,そのとおりだと思いました。
裁判例等も調べてみましたが,やはり数は少ないですね。どこかに,まとまった参考裁判例集などがあれば,実際に担当するときには,非常に助けになるかもしれないと思いました。法律書籍を扱う出版社には,ぜひ検討していただきたいです。
少しでも,手続に直面した当事者等のお役に立てれば幸いです。
刑法改正について(主に性犯罪関係)
平成29年6月16日成立・平成29年7月13日施行,刑法が改正されました。感触として,この話,結構話題にのぼることが多いように感じるので,概略をメモしておきます。
改正の全体像; ①性犯罪の非親告罪化 ②「強姦罪」から「強制性交等罪」への変更 ③監護者による性犯罪に関する規定の新設 ④性犯罪に関する法定刑の引き上げ
①性犯罪の非親告罪化について; これまで,強姦罪などは,被害者の告訴がなければ,刑事裁判ができませんでした。被害者のプライバシー情報が,公開の法廷で公になってしまうからです。このたび,告訴がなくても,裁判ができるようになりました。被害者のプライバシーとの折り合いをどうつけるかが課題といえます。 改正刑法施行前に犯した罪については,施行の際すでに法律上告訴がされることがなくなっているもの(告訴が取り消された場合など)を除き,施行後は,告訴がなくても起訴が可能になります(経過措置)。 これまで,示談ができれば,告訴取下→起訴されないということがありました。しかし,今後は,示談したからといって,必ず起訴されないというわけではなくなったといえます。影響は大きいかもしれません。
②「強制性交等罪」へ; これまで,強姦の客体は女性に限られていましたが,これからは,暴行または脅迫を用いた「性交,肛門性交又は口腔性交」(性交等)を「強制性交等」と定義し,男女の別なく,刑法の適用があることになります。
③監護者による性犯罪に関する規定の新設; 18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者や性交等をした者は,暴行又は脅迫を用いない場合であっても,「強制わいせつ罪」「強制性交等罪」と同様に処罰されます。 性的虐待に対する厳しい姿勢を示した改正といえるかもしれません。
④性犯罪に関する法定刑の引き上げ; 強姦罪 3年以上の有期懲役 → 5年以上の有期懲役, (準)強姦致死傷罪 無期又は5年以上の有期懲役 → 無期又は6年以上の有期懲役, 従前の「集団強姦罪」「集団強姦致死傷罪」は,削除される。従前でいう強盗強姦罪も,強姦強盗罪(?)も,強盗・強制性交等罪(無期又は7年以上の有期懲役)で統一。
GPS捜査=強制捜査 判決 つづき
別件の調査のため,いろいろと文献をあさっています。福岡を代表する上田國廣先生,美奈川成章先生の記念論文集「刑事弁護の原理と実践」という本があります。つい最近出版されたものです。何気なくこれをチェックしていると,「追尾監視型捜査の法的性質ーGPS利用捜査をめぐる考察を通して」(指宿信)という項がありました。先日の最高裁判決を思い出しながら,目を通してみたものです。
GPS捜査が任意捜査か(必要かつ相当であればOK)強制捜査か(しかるべき令状がないとNG)という議論については,従来より両説あったようですが,X線検査を強制捜査として検証令状を求めた最決平成21・9・28にて,①捜査の技術的特質,②プライバシー侵害の大きさに着目した判断(X線捜査=強制捜査=検証令状必要)が示されたこともあり,可視性のない非接触型の捜査手法についても,一定のものさしが示されたといいます。加えて,平成24年,合衆国最高裁判所で,GPS発信装置を無断で警察が装着していた事案について修正4条違反であると示されたことで,学界での議論が活発になったとのこと。GPSは,ⅰ)長期性,ⅱ)包括性,ⅲ)記録性といった特徴をもち,プライバシーの制約が大きいので,強制処分であるという趣旨の見解も示されており,事前事後の法的規制が必要であるということを述べておられます。おおむね最高裁判決に沿うような見解だとお見受けしました。
やはり,判決が出るまでに,さまざまな議論の蓄積があるのだなと感じたところです。同判決の事案の弁護団長も,外国の違憲判決が出ているのに,日本では当然のようにGPS捜査が行われており,これは大変なことだと思ったとコメントしているようです。実務家として,ビビッドな情報を常に収集しておく必要があるのだなと,改めて感じた次第です。
GPS捜査=強制捜査 判決
すでに新聞等でも報道されていますが,平成29・3・15,最高裁大法廷にて,注目すべき判決の言渡しがありました。GPS捜査は強制処分=令状が必要であり,検証令状など現行法上の令状で十分か疑義があるので,立法的措置が望まれるという内容です。
この事案では,ある窃盗事件の,①(目的)組織性の有無,程度や組織内における被告人の役割を含む全容解明の捜査として,②(期間)約6か月半,③(範囲)被告人,共犯者,被告人の知人女性(交際相手)も使用し得る④(対象)自動車19台に対し,令状なくGPSで移動状況を検索しています。
感覚としては,期間,範囲,対象ともに数字が大きいように思います。なかでも,最高裁がわざわざ知人女性の車両を使用し得る蓋然性に触れているところからすれば,この点を特に重視されているのかなと思いました。余計な(犯罪捜査に無関係な)情報を広く取得してしまうことの問題性に対し,警鐘を鳴らしているものと思われます。
私が,司法試験受験時代,問題集などで検討した際は,機械を用いて追尾するという形での捜査は,任意捜査で必要かつ相当な範囲で認められるという筋での議論が多かったような記憶があります。GPS捜査は「尾行の補助手段」という説明も,よく見かけるところです。そうした説明と比べると,今回の最高裁判決は,確かに,これまでとは一線を画する,注目すべき判決なのだと思います。
最高裁が,特殊な局面で令状の話に触れるときには,いわゆる強制採尿令状(最決55・10・23,最決平成6・9・16。「強制採尿は,医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない。」「強制採尿のために必要があるときは,被疑者を採尿するに適する最寄りの場所まで連行することができる。」などといった条件を付した上での捜索差押令状により,強制採尿を行う実務が確立した。)の議論を思い出します。この議論においても,検証令状,捜索差押令状のどちらを利用するにも問題があったので,条件付捜索差押令状という形でその問題性をカバーし,最高裁が強制採尿令状という新たな令状を創造したとも評されているところです。一方,平成29・3・15最高裁判決では,さらに,既存の令状では疑義があり,立法的措置が必要だとまで判断しており,かなり踏み込んだ内容での判決になっていると思います。
X線検査を強制捜査として検証令状を求めた最決平成21・9・28など,近頃は,最高裁が,捜査の必要性に対し,人権の保護のために,かなり踏み込んだ判断をするようになってきていると感じます。報道をみていると,「捜査の現場をなにもわかっていない」という声もあるようですが,必要だから適法だという論法では,許容性の議論がかけています。最高裁も,必要性を否定しているわけではなく,「(令状という)やり方についてもっとよく考えてね」というメッセージを発しているに過ぎないので,むしろ立法府に,現場に対する理解を求めつつも,適切な「やり方」を考えるように求めてほしいと思いました。
この判決を勝ち取ったのが,登録後10年未満の若手弁護団だというのも,勇気づけられるところです。結局,被告人の無罪を勝ち取れなかった点は残念だと思いますが,少なくとも捜査法上の問題点に大きな一石を投じることができた点は,非常に意義があることと思います。私も,日々,小さな石でもいいので,一石を投じ続けていきたいと思いました。
「運命の逆転」
本日は,映画のレビューを書きます。 みなさんは,クラウス・フォン・ビューロー事件をご存知でしょうか。上級階級のスキャンダルということで世をにぎわせたという冤罪事件です。
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【クラウス・フォン・ビューロー事件】
大富豪クラウス・フォン・ビューロー氏が,突発性低血糖症を患っていた妻サニーに対し,インスリンを過剰投与することにより,妻を植物状態にしたという被疑事実で裁判にかけられた,殺人未遂被告事件。 被告人のカバンからインスリンの注射器が出てきたなどされていたが,当時のインスリンは要冷蔵であったため,カバンに入っていたインスリンに効力があるのかなど,いくつも疑問点があった。 クラウスは有罪とされたが,高名なハーヴァード大学教授アラン・ダーショウィッツを雇って控訴し,弁護団は,警察の捜査を丁寧に検討し,その杜撰さを証明した。 その後,被告人は,無罪となる。 妻サニーは,28年間植物人間のまま,平成20年12月に息を引き取った。
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映画は,植物人間になった妻の登場からはじまります。映画のなかでは,基本的に,クラウス・フォン・ビューロー氏やアラン・ダーショウィッツ氏視点で,裁判が進んでいく様子が描かれますが,時折,植物人間である妻目線(ナレーション?)のセリフがはさまり,錯綜する事実関係,思惑,深まる謎などが表現されます。みどころ満点のサスペンスです。ただし,映画が公開された時点において,当事者がほとんど生存していたこともあって,結末は,少々ぼかされていたようです。
弁護士目線でみても,アラン・ダーショウィッツ氏を中心に,衝突しながらも,多くの弁護士が,事実関係,法律関係,裁判例などを徹底的に洗い出し,取り組もうとする姿,一方で,依頼人を信じてよいものかどうかという葛藤のなかで,弁護活動を進めていく難しさなどが描かれており,考えさせられるところがありました。
この作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞した,ジェレミー・アイアンズ氏(クラウス・フォン・ビューロー役)の怪演もみどころです。 ぜひ1度,鑑賞してみてください。
刑事責任能力
刑事事件において,その人が,是非の弁別ができない,又は,行動を制御できない場合に,犯行をしてしまったら… そんな場合に,その人を,法的に非難できるのか。 そのような場面が,刑事責任能力が問題になる局面であり,法律家にとっても非常に難解で,検討の難しい問題です。 今回は,刑事責任能力について,メモ程度ですが,ポイントをまとめてみました。必要があれば,参考にしてみてください。
1 責任能力の意義
責任能力を定義するのは難しい。そもそも,責任能力とは,法令上の用語ではない。刑法39条では心神喪失,心神耗弱ということばが使われている。条文に即して説明する方が,理解しやすいか。
心神喪失
①精神の障がいにより,
②良いことと悪いこととの区別がつけられない,あるいは,
③その区別に従って自分をコントロールすることができない
心神耗弱
これらの能力が著しく低下している
生物学的要素
精神の障がい(①に対応)
心理学的要素
弁識能力(②に対応)+制御能力(③に対応)
=動機の了解可能性,行動の合理性,犯行態様など
↓
2 責任能力の判断方法:
⑴ 責任能力の判断は,究極的には裁判所が判断する法律問題であるが,
⑵ 生物学的要素やこれが心理学的要素に与えた影響の有無,程度については,専門家たる精神医学者の意見が尊重される(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)。
⑶ これを前提に,「鑑定書全体の記載内容とその余の精神鑑定の結果,並びに記録により認められる被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して」行われるとする
のが,判例の考え方(最判S59.7.3刑集38巻8号2783頁)。そのなかでも,
⑷ 総合考慮を行う際に,中間的な要素として,病的体験の直接支配性・本来の人格傾向が重視される傾向にある(最判H21.12.8刑集63巻11号2829頁)。
3 鑑定の種類
⑴ 簡易鑑定 =起訴前に捜査機関が終局処分を決めるための参考にする目的で実施する簡易な鑑定で,鑑定留置を伴わないため通常の勾留期間中に行われるもの。
⑵(検察官の嘱託による)起訴前鑑定 =起訴前に捜査機関が実施する鑑定で,鑑定留置による病院施設での留置を含む本格的な鑑定。起訴前本鑑定。
⑶(弁護人による)当事者鑑定
⑷ 裁判所による鑑定(職権鑑定)
4 証拠開示の重要性
⑴ 類型証拠開示請求にて,鑑定書の開示を求める。
⑵ 鑑定書をみれば,鑑定において鑑定資料として用いられている資料が読み取り得るので,それらも類型証拠開示の対象となり得る。
5 検察官がよく主張する間接事実
⑴ 動機の了解可能性→間接事実レベルで問題になり易い
⑵ 犯行の計画性
⑶ 犯行後の事情 →間接事実レベルで問題になり易い
⑷ 犯行の人格異質性
6 検察側の鑑定を弾劾する反対尋問の視点(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)
⑴ 鑑定の前提事実←証拠開示の有効活用
⑵ 鑑定の前提条件
⑶ 鑑定の論拠
7 その他参考
⑴ 7つの着眼点
⑵ 8つのステップ
…
以上,簡単ですが,ご参考までに。
99.9-刑事専門弁護士‐
私は,映画鑑賞が趣味です。TVドラマも見ますが,毎週見るという習慣がなく,自分のペースに合わせて一気に見てしまうタイプなので,だいたい,リアルタイムではなくDVD/BDでみます。というわけで,今更ながら,99.9‐刑事専門弁護士‐を見ました。大ヒットで高視聴率だったらしいですね。
以下のとおり,弁護士としてみて,思うところがたくさんありました。
【見習うべきと思った点】 ・まずはすぐに接見に行く。 ・現場に足を運ぶ。 ・手間暇かかろうが再現をしてみる。 ・「なぜ?」を大事にして,事件の経過を1つ1つ検証していく。
【特に気になった点】 ・第3話 母が危篤の状態において,否認して徹底的に争うか,認めて示談して保釈を認めてもらって早期に身柄を開放してもらうかで悩んでいるが,勾留の執行停止は検討しないのだろうか。松尾浩也監修「条解 刑事訴訟法 第4版」(弘文堂)で確認してみたが,「執行停止が認められる場合」のなかに,「特に親しい近親者の病気」が挙げられている。ぜひ検討してみてはいかがだろうか。
… いろいろ描かれていましたが,本質的な問いとして,深山大翔弁護士(松本潤)と佐田篤弘弁護士(香川照之)の2人のやり取りを通し,「依頼者(被告人)の利益とはなにか」という難しいテーマに挑んでいるのではないかと思いました。端的には,ときに依頼者の表面的な意向に反してでも,1つしか存在し得ない事実(≠真実(ドラマの中でも,真実は人の数だけあるが,事実は1つしかないと述べられていました))と向き合って弁護するのか,(嘘にならない範囲で)依頼者の言うとおりに主張し弁護するのかといった点です。実務的にも,本当に難しい問題です。 総じて,楽しんでみることができ,勉強にもなりました。
ブログの趣旨に反しないよう,法的な問題に関する記事としますが,これからも,映画やドラマのことについても,コメントしていきたいと思います。