私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

簡裁物損交通事故事件のあり方

福岡県は,全国的にも非常に交通事故の多い地域と言われています。豊前市は,西鉄が撤退し,バスなどの公共交通機関が発展していない関係か,車がインフラとして必要不可欠です。人口の4割とも言われる高齢者も運転し,細い,通りづらい道も散見されることから,例にもれず,交通事故が多いです。

なかでも,物損事故は,近年急速にその数が増しているといいます。物損事件の審理を考える上では,司法研修所編「簡易裁判所における交通損害賠償訴訟事件の審理・判決に関する研究」(法曹会)が非常に有用だと思います。その内容の一部について,以下,ランダムに紹介します。

まず,必ずといってよいほど問題になる,過失(割合)に関する論点。加害者側が過失相殺を主張するにあたっては,被害者側に,どんな具体的注意義務違反があるのか,明らかにする必要があります。いわゆる別冊判例タイムズ38号(緑の本)を引いて主張する場合も多いと思いますが,過失相殺という以上,被害者側の注意義務違反の指摘は必須でしょう。この点,道路交通法規は,日常生活の中で一般に生じうる典型的事故事例を想定し,そこからの交通関係者の保護を目的とした規範としての性格も有しているので,道路交通法違反等の注意義務違反(定型的有為義務違反)があれば,過失を認めることができます。したがって,過失の立証としては,事故態様を詳細に主張した上,定型的注意義務違反を主張すれば足りるといわれています。とすると,過失の主張においては,道交法の理解が,非常に重要だということになりますね。

事故態様が争われる事案では,事故現場の道路状況及び車の損傷状況という客観的事実にまずは着目し,信用性の高い書証によりこれを固めるところからはじめるべきです。当事者の供述も重要ですが,客観的事実に合致するか,双方の供述が一致するかどうか,不利な事実をあえて認めていないかなどに気を付けながら聞く必要があります。物件事故報告書には,事故後当事者が警察官に対しどのように述べていたかがわかることがあり,有用です。タコグラフは,事故時の速度の認定に役立ちます。一方で,車の損傷状況から事故態様を推認することには限界があること,生半可な認定は危険ともいえることなども理解しておくべきです。

次に,損害論。修理費,買替差額,評価損,代車料,休車損,慰謝料等があります。これらの問題を考えるにあたり,事故車両の時価額が問題になることがありますが,「自動車価格月報」(レッドブック),「中古車価格ガイドブック」(イエローブック,シルバーブック),「建設車両,特殊車両標準価格表」インターネット上での中古車価格情報等の価格を参考にします。評価損もよくもめますが,実務では,事故車両の車種,走行距離,初度登録からの期間,損傷の部位・程度(損傷が車体の骨格部分に及んでいるかどうか),修理の程度,事故当時の同型車の時価等諸般の事情を総合考慮し,修理費の一定割合(3割程度の範囲内)で評価損を認めることが多いです。

なお,車両の所有者以外の者が車両損傷による損害の賠償を求めるケースでは,その者がその損害賠償請求権を有する根拠について注意する必要があります。

ところで,物損事故では,加害者側から別訴・反訴が提起されることが多いですが,これも含め和解の中で話し合いたいと希望することもあります。裁判所はこれをよく確認し審理を適切に進めていく必要がありますし,代理人は,このような事態も含めて依頼者によく説明しておくべきでしょう。

物損事故をいかにして適切・迅速な解決を図るか,いつも頭を悩ませます。ご依頼者様とともに悩み,二人三脚で,ご依頼者様のための弁護士活動を展開していきたいと思います。

障がい者支援フォーラム「高次脳機能障害ってなに?」

平成28年12月4日(日),@アクロス福岡,障がい者支援フォーラム「高次脳機能障害ってなに?」が開催されました。

弁護士と高次脳機能障害とのかかわりとしては,交通事故の後遺症の問題などでかかわりになることも多くなっており,数ある障害のなかでも,「みえない障害」として,非常に難しい分野,浸透していない分野ではないかと思っています。今回,このようなフォーラムにより,高次脳に関する情報が,ご本人や支援者などの生の声を伴って発信されるにいたり,大変貴重な機会をいただくことができたなと思っています。

なかでも,東京慈恵会医科大学医師渡邉修先生の講演は,大変わかりやすく,感銘を受けました。備忘のためにも,レジュメに記載がないことを中心に,メモをしておきたいと思います。

・突然の激しい頭痛を伴うのは「くも膜下出血」。それ以外にはない。

・高次脳機能障害は,悪くならない。回復する。アルツハイマー型認知症は,どんどん症状が付加されていき,悪化していく。←高次脳の方が退院後悪くなったように見えたのは,入院中は病院というわかりやすい構造のなかにいて,遂行機能を使用しなかったからである。

・リハビリにおいては,ADLなどにとどまらず,「拡大日常生活」(訓練,料理,洗濯,買物,外出,電話,コミュニケーション,公共交通機関利用,金銭管理)などができるようになるのを目的にすべき。

・左脳は言語,右脳は図形。

・脳は,欠損を埋めようとする傾向がある。

・失語のある方は,助詞がわかりにくいので注意。短文で極力助詞を使わない。

・左脳が損傷している(言語に障害が出ている)人には,図形(右脳)で示す,左脳が損傷している(図形の把握に障害が出ている)人には,言語(左脳)で示す。

・海馬は,脳のなかでも,ぜい弱な部分。

・新しく学習するときは,はじめから失敗しないようにして覚える工夫を(失敗したことを覚えてしまうと,失敗し続ける。)。

・社会的行動障害に対しては,前頭葉損傷に対してはなすすべがなくても,環境の変化(役割の喪失,生き甲斐の喪失,能力の喪失)については,支援ができる。

・興奮性,易怒性について,よい行動(笑顔,協調性)には,目印を。

・するべき作業,望ましい作業は,楽しい,あるいは楽しいことが付随しているように工夫をしよう。

・支援者はどうしても審判的な評価をくだしてしまいがちだが,「一緒に頑張りましょう。」という姿勢が大事。

・家族,支援者自身が幸福感をもって障がい者に接すること。

このほか,盛りだくさんの内容を,わかりやすくご講義いただきました、ありがとうございました。 先生の著書「高次脳機能障害と家族のケア 現代社会を蝕む難病のすべて」も購入。引き続き勉強していきたいと思います。