私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
刑事責任能力
刑事事件において,その人が,是非の弁別ができない,又は,行動を制御できない場合に,犯行をしてしまったら… そんな場合に,その人を,法的に非難できるのか。 そのような場面が,刑事責任能力が問題になる局面であり,法律家にとっても非常に難解で,検討の難しい問題です。 今回は,刑事責任能力について,メモ程度ですが,ポイントをまとめてみました。必要があれば,参考にしてみてください。
1 責任能力の意義
責任能力を定義するのは難しい。そもそも,責任能力とは,法令上の用語ではない。刑法39条では心神喪失,心神耗弱ということばが使われている。条文に即して説明する方が,理解しやすいか。
心神喪失
①精神の障がいにより,
②良いことと悪いこととの区別がつけられない,あるいは,
③その区別に従って自分をコントロールすることができない
心神耗弱
これらの能力が著しく低下している
生物学的要素
精神の障がい(①に対応)
心理学的要素
弁識能力(②に対応)+制御能力(③に対応)
=動機の了解可能性,行動の合理性,犯行態様など
↓
2 責任能力の判断方法:
⑴ 責任能力の判断は,究極的には裁判所が判断する法律問題であるが,
⑵ 生物学的要素やこれが心理学的要素に与えた影響の有無,程度については,専門家たる精神医学者の意見が尊重される(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)。
⑶ これを前提に,「鑑定書全体の記載内容とその余の精神鑑定の結果,並びに記録により認められる被告人の犯行当時の病状,犯行前の生活状態,犯行の動機・態様等を総合して」行われるとする
のが,判例の考え方(最判S59.7.3刑集38巻8号2783頁)。そのなかでも,
⑷ 総合考慮を行う際に,中間的な要素として,病的体験の直接支配性・本来の人格傾向が重視される傾向にある(最判H21.12.8刑集63巻11号2829頁)。
3 鑑定の種類
⑴ 簡易鑑定 =起訴前に捜査機関が終局処分を決めるための参考にする目的で実施する簡易な鑑定で,鑑定留置を伴わないため通常の勾留期間中に行われるもの。
⑵(検察官の嘱託による)起訴前鑑定 =起訴前に捜査機関が実施する鑑定で,鑑定留置による病院施設での留置を含む本格的な鑑定。起訴前本鑑定。
⑶(弁護人による)当事者鑑定
⑷ 裁判所による鑑定(職権鑑定)
4 証拠開示の重要性
⑴ 類型証拠開示請求にて,鑑定書の開示を求める。
⑵ 鑑定書をみれば,鑑定において鑑定資料として用いられている資料が読み取り得るので,それらも類型証拠開示の対象となり得る。
5 検察官がよく主張する間接事実
⑴ 動機の了解可能性→間接事実レベルで問題になり易い
⑵ 犯行の計画性
⑶ 犯行後の事情 →間接事実レベルで問題になり易い
⑷ 犯行の人格異質性
6 検察側の鑑定を弾劾する反対尋問の視点(最判H20.4.25刑集62巻1559頁)
⑴ 鑑定の前提事実←証拠開示の有効活用
⑵ 鑑定の前提条件
⑶ 鑑定の論拠
7 その他参考
⑴ 7つの着眼点
⑵ 8つのステップ
…
以上,簡単ですが,ご参考までに。
当事務所の紹介いろいろ
いろいろなところで当事務所または当職が紹介されておりますので,以下記載させていただきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
裁判員裁判声掛け事件
平成29年1月6日,新年早々に,裁判員声掛け事件の判決が出ました。新聞記事をみた程度で,詳細を知っているわけでも,事件記録を見たわけでもありませんから,軽々なことは申し上げられませんが,裁判員制度の根幹である,裁判員の保護につき,あらためて考えなければならないですね。
ところで,先日,久しぶりに,三谷幸喜原作・脚本「12人の優しい日本人」を見ました。これは,著名な映画「12人の怒れる男」をベースに,仮に日本に陪審制度があったら…こうなる!という姿を描いたものです。三谷幸喜作品のなかでは,他の作品に比べてあまり知られていないように思われますが,私のおすすめです。「12人の怒れる男」は,ミステリー/シリアスタッチで,陪審員は真実を発見するものだという姿が全面に押し出されているように感じるところですが,対して「12人の優しい日本人」は終始コメディー・タッチであり,しかし結局真面目に議論して結論に到達するということで,非常に国民性やその国の考え方があらわれているのではないか,そのコントラストが面白いと思っています。ぜひ見比べてください。
さまざまな議論のある裁判員制度ですが,裁判員の多くは,「よい経験になった」など,前向きなコメントをしているようです。さきに紹介した「12人の優しい日本人」ではありませんが,日本人は,あまり争いを好まないながらも,いったん引き受けると,引き受けたからには真面目にやる(義理人情の世界?)というような国民性をもっているように思います。本件のような事件は,どちらかといえば例外的な事件なのでしょうし,普段裁判員は自分が危険いさらされることなどはあまりイメージしていないものではないかと思いますが,いったんこのような事件が報道されると,国民が不安に陥り委縮して,もともとの趣旨である「国民の常識を裁判に反映させる」という原点に,大きな支障が生じることになるものと思います。残された課題は大きいと思います。裁判員保護のため制度的な整備は必要ないのか,裁判所の個別の運用で見直すべき点はないのか,私も法曹の一員として,検討を続けたいと思います。
【参考:裁判員法】
第七章 罰則
(裁判員等に対する請託罪等) 第七十七条 法令の定める手続により行う場合を除き、裁判員又は補充裁判員に対し、その職務に関し、請 託をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 法令の定める手続により行う場合を除き、被告事件の審判に影響を及ぼす目的で、裁判員又は補充裁判 員に対し、事実の認定、刑の量定その他の裁判員として行う判断について意見を述べ又はこれについての 情報を提供した者も、前項と同様とする。
(裁判員等に対する威迫罪) 第七十八条 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員若しくは補充裁判員若しくはこれらの職にあった者又 はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかけることその他のいかなる方法をもってするかを問わず 、威迫の行為をした者は、二年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。 2 被告事件に関し、当該被告事件の裁判員候補者又はその親族に対し、面会、文書の送付、電話をかける ことその他のいかなる方法をもってするかを問わず、威迫の行為をした者も、前項と同様とする。
99.9-刑事専門弁護士‐
私は,映画鑑賞が趣味です。TVドラマも見ますが,毎週見るという習慣がなく,自分のペースに合わせて一気に見てしまうタイプなので,だいたい,リアルタイムではなくDVD/BDでみます。というわけで,今更ながら,99.9‐刑事専門弁護士‐を見ました。大ヒットで高視聴率だったらしいですね。
以下のとおり,弁護士としてみて,思うところがたくさんありました。
【見習うべきと思った点】 ・まずはすぐに接見に行く。 ・現場に足を運ぶ。 ・手間暇かかろうが再現をしてみる。 ・「なぜ?」を大事にして,事件の経過を1つ1つ検証していく。
【特に気になった点】 ・第3話 母が危篤の状態において,否認して徹底的に争うか,認めて示談して保釈を認めてもらって早期に身柄を開放してもらうかで悩んでいるが,勾留の執行停止は検討しないのだろうか。松尾浩也監修「条解 刑事訴訟法 第4版」(弘文堂)で確認してみたが,「執行停止が認められる場合」のなかに,「特に親しい近親者の病気」が挙げられている。ぜひ検討してみてはいかがだろうか。
… いろいろ描かれていましたが,本質的な問いとして,深山大翔弁護士(松本潤)と佐田篤弘弁護士(香川照之)の2人のやり取りを通し,「依頼者(被告人)の利益とはなにか」という難しいテーマに挑んでいるのではないかと思いました。端的には,ときに依頼者の表面的な意向に反してでも,1つしか存在し得ない事実(≠真実(ドラマの中でも,真実は人の数だけあるが,事実は1つしかないと述べられていました))と向き合って弁護するのか,(嘘にならない範囲で)依頼者の言うとおりに主張し弁護するのかといった点です。実務的にも,本当に難しい問題です。 総じて,楽しんでみることができ,勉強にもなりました。
ブログの趣旨に反しないよう,法的な問題に関する記事としますが,これからも,映画やドラマのことについても,コメントしていきたいと思います。
新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
当事務所開設以降,はじめて迎える新年です。感慨深いものがあります。 今年も,「市民に力を」与えられるよう,地域における良質なリーガルアクセスの向上に努めてまいります。
私は,毎年,新年において,目標達成シートというものを作成しています。これをつくるのは,なかなかどうして難しいものです。1つ2つはぱっと浮かぶかもしれませんが,すべて埋めようとすると,目標を達成するため,自分になにが必要なのか,かなり頭を悩ませなければなりません。おすすめです。新年の抱負を考えるよい機会になりますので,よろしければ,検討してみてください。
それでは,今年も,よい年にしましょう!
預貯金は遺産分割の対象となるか
先日,平成28年12月19日,遺産分割にとって非常に重要な最高裁判例が出ました。
「預貯金が,遺産分割の対象となる。」という判例です。
可分債権は,被相続人の死により,法定相続分により相続人に(遺産分割を経ず)当然に分割承継されるとされています。預貯金も同様に可分債権と考えれば,預貯金は遺産分割の対象とならない,ということになりそうです。
しかし,従来から,預貯金と現金のなにが違うのだ(現金は債権ではなく物ですから,遺産分割の対象となるとされています。),預貯金が遺産分割の対象とならないと柔軟な分割協議ができないではないかなどとして,「預貯金は遺産分割の対象ではない」という考え方に対し,批判が多くありました。
相続人全員が同意すれば,あえて預貯金を遺産分割の対象にするということはできるとされています。実務では,この同意により,被相続人の預貯金を利用した,柔軟な分割協議をすることもありました。
今回の最高裁の判断は,そのような実情を踏まえて,満を期しての判例変更だったと言ってもよいのではないかと思います。
法律家として気になるのは,その理論構成ですが,最高裁は,預貯金の契約の実態を,詳細に検討しています。このあたりはさすがだと思いました。 預貯金にかかる契約は,基本的には消費寄託契約だが,振替などさまざまな手続の代行を担っているから,準委任としての性質も持ち合わせている,決済方法の1つとしての性格が強い,現金との差も考え難い,口座自体は1つのまとまったものと観念されている(解約も相続人がバラバラにやるというわけにもいかないだろう),定期郵便預金の趣旨いかん…などなど,種々の観点から法的な検討を行っており,参考になります。
一方で,今回の最高裁の判例を前提にすると,遺産分割がおわるまで,なかなか預貯金を引き出せなくなって,急ぎ引出しが必要な事態が生じても,対応できなくなるのではないか,などといった懸念も生じるでしょう。最高裁は,補足意見にて,この点につき,「遺産の分割の審判事件を翻案とする保全処分として,例えば,特定の共同相続人の急迫の危険を防止するために,相続財産中の特定の預貯金債権を当該共同相続人に仮に取得させる仮処分(仮分割の仮処分。家事事件手続法200条2項)等を活用することが考えられ」るとしています。
いずれにせよ,今回の判例変更で,実務に大きく影響が出ることは間違いないでしょう。持っている書籍の体系的な考え方まで,変わったりするのでしょうかね…
補足意見,意見なども多数あり,大変勉強になる判例です。さらに判例を読み込んで,今後の活動に活かしていきたいと思います。
茶房 山帰来
本日の昼食は,茶房 山帰来(さぼう さんきらい)でいただきました。求菩提山のふもと,卜仙の里の少し先くらいに位置する茶房です。
なかは古民家の雰囲気たっぷり,おしゃれな喫茶店みたいな感じです。サラダそば定食をいただきました。パンは5種類を食べ放題。そばもおいしく,スープやデザート,飲み物までついています。飲み物は,自家焙煎のコーヒーや豊前名産のゆず,かぼすのジュースなど,いろいろ選べます。
とくにパンはおいしかったですね。栗の揚げパンはやみつきになりそうでした。
また行きたいです。
ハンセン病問題の解決を願うつどい
平成28年12月23日,豊前市同和福祉センターにて,「ハンセン病問題の解決を願うつどい 対談;ハンセン病家族裁判~地域が問われている」が開かれました。私も参加しました。
対談するのは,ハンセン病家族裁判原告団長の林力さんと、「生まれてはならない子として」の著者宮里良子さんです。
ハンセン病は,現在は完治する病気ですが,歴史的には,根強い差別にさらされ,隔離政策まで実施されてしまった病気です。私も,直接見たこともなく,司法試験の際に勉強した程度で,経験に基づく生の声を聴いたのははじめてでした。大変勉強させていただきました。
対談の中で,いまの日本の人権教育はつまらないというご指摘がありました。 日本の人権教育というのは,部落差別,同和問題に端を発しているといっていいと思う。教科書にも厚く書かれる。ただ,逆に,きちんと書いておきさえすればいいというようにもみえる。教科書には,差別はいけないよという趣旨のことが書かれる。国の責任などにはほとんど触れられない。一方で,ハンセン病の問題は,すでに解決済みの問題のような扱いだ。過去に,隔離政策をとったというような,歴史的事実は変えられない。なかったことにはできないのに。…
質疑のなかでも,日本の人権教育の在り方についての熱い議論が交わされており,大変参考になりました。
お話のなかでは,先般提起されたハンセン病家族裁判の弁護団の一員である松尾先生から,裁判の経過のご説明をいただきました。先日,国からの答弁が出ており,私が理解したところによると,「差別を助長したことは認めるが,差別をつくりだしたことは否認する。国が作り出すまでもなく,社会的に差別は醸成されていたものだ。」という内容だとのことです。こちらの裁判の経過も見守ります。
林力さんの著書「父はハンセン病患者だった」を購入したので,引き続き勉強し,裁判の経過も追いかけたいと思います。
うみてらす豊前
今日の昼食は,うみてらす豊前で。
私が訪れたときには,すでに30分待ちの状態。といっても,その間,1階の魚売り場をみてまわれるので,手持ぶさたというようなことはありません。
「秋さわら煮つけ定食」を食べたかったのですが,本日は切らしてしまっているとのこと。残念です。
それではということで,えび天丼を。歯ごたえあるえび,げそをいただくことができました。
「うみてらす豊前」,お食事処「豊築丸」は,連日大変な人気を博しており,TVでも紹介されている名所です。
豊前市外のみなさまもぜひ1度,いただいてみてください。
憲法の現在(いま)
平成28年12月9日,日本弁護士連合会憲法問題対策本部副本部長である弁護士伊藤真先生のご講演を拝聴しました。とても熱い,なかみの詰まった講演でした。
憲法の歴史,戦争法に関する問題,自民党改憲草案の話なども興味深かったですが,私のなかで1番の発見だったのが,「個人の尊重」の意味に関するお話の一説です。 いうまでもなく,現行憲法の最重要の条文は,憲法13条であり,「個人の尊重」の理念だと思いますが,そこには,いわゆる幸福追求権の規定も存在します。伊藤先生は,幸福追求権ではなく,幸福権だったらいいのに,というお話からはじめ,では「幸福」ってなんだろう,それは人それぞれ,自分の価値は自分で決める(自己決定権)ということなのだといいます。さらに,自己決定した価値を「追い求める」権利を保障し,自分が幸せになる国づくりりのために「選挙」に行くのだ,というお話されました。 憲法13条の,しかも全体を,うまく説明しているのではないかと思いました。
引き続き,学習を重ね,私なりの考えの礎を築いていきたいです。