私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。
福岡小5殺害事件控訴審
豊前市で起こった,いたましい事件。小5であった女児を殺害した被告人の事件につき,平成29年4月25日,福岡高裁にて,初公判が開かれると決まったそうです。第1審判決は,殺意を認めた上で,過去の判例の量刑と比較して,死刑ではなく無期懲役と判断していました。豊前の弁護士として,経過を追いかけたいと思います。
経営者のお話に触れて
㈱グループノーツ代表取締役会長佐々木久美子氏のお話を聴く機会があったので,参考までに記録しておきたいと思います。
佐々木氏は,小学生のころからプログラミングをおこなっており,IT関係業務を手掛けている会社の代表の1人です(代表がもう1人います。)。2児の母でもあります。創業して数年という企業でありながら,大変しっかりしたお考えで経営をされていることが伝わってきて,感嘆しました。ぜひ今後の業務の参考にしたいと思います。
佐々木氏が,経営において気を付けているということを,メモ程度ですが,記載してみます。
・財務と経理の違いを理解する
・データを見る,分析する,活かす
・HPは発信しないと見られない
・経理,財務は知人や家族に任せない,なあなあにしない
・「どうせ無理」という感覚は捨てる
・経済を知る
・出来ないことはやらない
・世界中の気になるニュースを読む
・人を悪く言わない
・勉強する
・無理をしない
・ピンチはチャンスだと思う
・自分が社長だから偉いと思わない
・常識に合わせずジブンたちに合わせる
・問いを立てる→解決する
・答えでなく問いを,解決策でなく討論を,利便ではなく意味を,市場ではなく社会のために(アンソニー・ダン著「スペキュラティヴ・デザイン 問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること」より)
・人の価値が問われている
・起業より経営(継続),誰のための起業なのか,誰が喜ぶのか
・「なぜ,会社を作りますか?」と自分に問い続ける
なるほどと思うものばかりで,耳が痛かったです。 佐々木氏からは,おすすめのツールについても紹介していただきました。
・HPは必須。スマホ対応必須。
・G suite
・クラウド型会計システム free
・クラウド型顧客管理 sales farce
同氏いわく,「唯一生き残るのは,変化できる者である。」(チャールズ・ダーウィン)だそうです。新しいものを取り入れてどんどん変えていくことも必要ということでしょうか。またまた耳の痛いお話でした。
いろいろと参考にさせていただき,私の業務もさらに充実させていければなと思います。
「同性婚のリアル」‐人権講演会を聴いて2‐
以前書きましたが,豊前市の人権講演会で,東京ディズニーリゾートで初の同成婚式を挙げた東小雪さんの講演を聴くことができました。その際に購入した「同性婚のリアル」。せっかくなので,法制度面にしぼって,書いてみたいと思います。私なりにQ&Aでまとめてみました。
Q 日本の同性のパートナーシップに関する法律は?
A なにもない。
Q では,同性婚の結婚って??
A 法律上は,残念ながら,「ルームシェアしているおともだち」ぐらいの意味しかないと言わざるを得ない。実態はふうふなのに。
Q 法律上の婚姻と認められないことによる不都合は?
A 同性パートナーに相続権がない。所得税の配偶者控除が受けられない。子どもの共同親権が持てない。特別養子縁組で子どもを迎え入れることができない。 そのほか,多くの公営住宅に家族としては入れない,外国籍のパートナーに配偶者ビザが下りない,などの不都合がある。
Q 民間サービスで不都合を感じることは?
A 民間サービスなので,お店・サービスによって取り扱いはさまざま。ただし,多くの場合,不動産購入時に2人の所得を合算してローンが組めない,不動産を共有名義にできない,賃貸契約を結びづらい,病院で家族として面会できない不安がある,同性パートナーの手術同意書へサインできない不安がある,企業の福利厚生が同性パートナーに適用されない場合が多い,などの不都合がある。
Q 2015年11月5日から東京都渋谷区で認められたパートナーシップ証明書には,どんな意味があるの?
A 残念ながら,法的な意味はない。しかし,たとえば,生命保険の死亡保険金受取人に同性パートナーを指定できるようになる方向で業界が動き出すなどの事実上の効果があった。大手通信会社でも,同性パートナーに家族割引を適用できるようになるなどした。家族向け区営住宅への入居が認められるようになったところもある。ただし,あくまで,証明書をもっているカップルの扱いについては,事業者の判断にゆだねられているところが大きい。
…
そのほか,生の声がてんこ盛りでしたが,やはり,現状では,同性でパートナー関係を築いているふたりには,住みにくい社会と言わざるを得ないようです。引き続き,この問題について,勉強し,考えていきたいと思います。
障がい者支援フォーラム「高次脳機能障害ってなに?」
平成28年12月4日(日),@アクロス福岡,障がい者支援フォーラム「高次脳機能障害ってなに?」が開催されました。
弁護士と高次脳機能障害とのかかわりとしては,交通事故の後遺症の問題などでかかわりになることも多くなっており,数ある障害のなかでも,「みえない障害」として,非常に難しい分野,浸透していない分野ではないかと思っています。今回,このようなフォーラムにより,高次脳に関する情報が,ご本人や支援者などの生の声を伴って発信されるにいたり,大変貴重な機会をいただくことができたなと思っています。
なかでも,東京慈恵会医科大学医師渡邉修先生の講演は,大変わかりやすく,感銘を受けました。備忘のためにも,レジュメに記載がないことを中心に,メモをしておきたいと思います。
・突然の激しい頭痛を伴うのは「くも膜下出血」。それ以外にはない。
・高次脳機能障害は,悪くならない。回復する。アルツハイマー型認知症は,どんどん症状が付加されていき,悪化していく。←高次脳の方が退院後悪くなったように見えたのは,入院中は病院というわかりやすい構造のなかにいて,遂行機能を使用しなかったからである。
・リハビリにおいては,ADLなどにとどまらず,「拡大日常生活」(訓練,料理,洗濯,買物,外出,電話,コミュニケーション,公共交通機関利用,金銭管理)などができるようになるのを目的にすべき。
・左脳は言語,右脳は図形。
・脳は,欠損を埋めようとする傾向がある。
・失語のある方は,助詞がわかりにくいので注意。短文で極力助詞を使わない。
・左脳が損傷している(言語に障害が出ている)人には,図形(右脳)で示す,左脳が損傷している(図形の把握に障害が出ている)人には,言語(左脳)で示す。
・海馬は,脳のなかでも,ぜい弱な部分。
・新しく学習するときは,はじめから失敗しないようにして覚える工夫を(失敗したことを覚えてしまうと,失敗し続ける。)。
・社会的行動障害に対しては,前頭葉損傷に対してはなすすべがなくても,環境の変化(役割の喪失,生き甲斐の喪失,能力の喪失)については,支援ができる。
・興奮性,易怒性について,よい行動(笑顔,協調性)には,目印を。
・するべき作業,望ましい作業は,楽しい,あるいは楽しいことが付随しているように工夫をしよう。
・支援者はどうしても審判的な評価をくだしてしまいがちだが,「一緒に頑張りましょう。」という姿勢が大事。
・家族,支援者自身が幸福感をもって障がい者に接すること。
このほか,盛りだくさんの内容を,わかりやすくご講義いただきました、ありがとうございました。 先生の著書「高次脳機能障害と家族のケア 現代社会を蝕む難病のすべて」も購入。引き続き勉強していきたいと思います。
被害者遺族の声と死刑制度の是非-宮崎家族三人殺害事件の報告を聴いて
平成28年12月3日,吉富フォー・ユー会館にて,「報告集会 Aさんの“今”と死刑制度の行方」が開かれ,私も参加させていただきました。
宮崎家族三人殺害事件とは,2010年に宮崎市で起きた,当時22歳の青年が,宮崎市の自宅で義母と妻,生後5か月を殺害した事件のことをいいます。当時はじまったばかりの裁判員裁判対象事件であり,公判はわずか20日のスピード審理を行った上で,九州初の裁判員裁判死刑判決がくだされました。
この事件では,妻の家族との間の複雑な背景事情があり,動機や被告人の精神状態を,慎重に判断しなければならないと思われる事件でした。控訴審では,心理鑑定なども行いましたが,結論は覆らず,最高裁も上告を棄却しています。
特徴的なのは,家族内の殺人ということに加え,なんといっても,被告人と被害者遺族との関係でした。被害者遺族は,第1審にて,「極刑を」と述べていたようですが,心境の変化があり,生きて償ってほしい,死刑では嫌だと思うようになったといいます。被害者遺族が,被告人と面会をしているというのですから,驚きです。最高裁には,死刑にしないようにという上申までしたといいます。被害者は,極刑を,死刑をと思うものだというのは,私の思い込みに過ぎず,被害者遺族の生の声,気持ちを,もっとよく聞いていかなければらないなぁと思ったところでした。
この事件を契機として,2016年10月に,日弁連が,人権擁護大会にて,組織として死刑廃止の方向性を決め,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言案」を提出することを決めたのです。
大変勉強になり,死刑制度の是非について,特に被害者感情という側面から,おおいに考えさせられた集会でした。
正直,私は,死刑の是非について,立場を決めかねているのですが,現段階では,少なくとも積極的には支持できないという立場です。 憲法31条は,適正手続によらなければ人の生命を奪うことはできないという趣旨のことを定めており,反対によめば,適正手続によれば死刑も許されるとも読めます。しかし,あくまで,適正手続によった場合ということなので,適正手続が定められ,実行されているかが問題になると思います。 この点,日本の罰金刑,禁固刑,懲役刑,死刑というのは,刑の種類がかなり異なるのに,基本的に同じルールのもと審理することになっています。しかし,刑の種類が違えば,検討しなければならないことも変わるでしょう。懲役刑は,何年か??という,量の問題になることが多いのに対し,死刑は,これにするか否かというAll or Nothingの問題であり,さらには,終身刑の検討まで視野に入れると,現行法の手続でもって,適切な手続が整備されているといえるのか,自信がないのです。したがって,少なくとも,死刑を選択できる土壌としての,適切な制度が整えられているのかという部分に自信がもてない限りは,国家の殺人である死刑を容認はできないのではないか。そのような意味で,消極的な反対をするという立場でいるのです。
しかし,このような議論は,技術的なものであり,我ながら,血の通った議論ではないような気がしていました。本日の報告会は,まさに「血の通った」報告をいただき,ご意見をいただいたことで,あらためて死刑制度の是非について考える機会をいただきました。ありがとうございました。
法曹人口増加問題と弁護士の在り方
非常に参考になったので,紹介と感想について,簡単に記載します。
「弁護士は増えたけど・・・ 法曹人口問題について考える市民集会」報告書
この報告書Q3によると,地方の方々の弁護士へのアクセスについては,弁護士の数が増えたことがプラスになっているという意見がありました。ニーズもあるという意見です。大変喜ばしいことです。 一方で,私の実感として,弁護士が増えたから,「さあ,地方に行こう!」という弁護士も増えるかというと,そういうわけでもないのかな,と思います。弁護士の志,生き方の問題ですから,なんともいえませんが,地方でやっていこうとするからには,それなりの勇気,覚悟,根性が必要だと思いますから,そういった人材の育成が課題かもしれませんね(もちろん,私も,そうありたいと,日々努力を続けています!)。
また,この報告書Q2によると,消費者相談の需要はあるのではないかということです。消費者分野は,それ自体が専門的で難しい分野である反面,業者側もいやらしく,弁護士費用や訴訟費用を考えるとペイしないような金額で被害を生じさせる傾向があり,費用対効果面も難しい分野です。弁護士として,関与の仕方が難しい分野といえます。しかし,報告書のとおり,消費者被害に苦しむ方は,現に存在しているのですから,私も,この現実を常に心に留めながら,いかにして弁護士として手を差し伸べていけるかを,日々考えていきたいと思います。
この報告書の末尾には,市民集会という企画が民主的で好感がもてる旨も記載されています。私も,地域の方と弁護士の距離を縮めるための企画を,なんらか考えてみたいなと思いました。
LGBTを理解する
平成28年11月26日13:00~,豊前市市民会館にて,人権講演会「LGBTを理解する」が開かれました。東小雪さんを講師として,大変興味深いお話をうかがうことができました。
LGBTとは,L=レズビアン,G=ゲイ,B=バイセクシャル,T=トランスジェンダーの略で,「性的マイノリティ」の総称の1つです。LGBTは人口の7.6%,実に13人に1人,学校のクラスに2人くらいの割合になるとのことです。それほどまでに身近な存在なのに,まだまだ広まっていないのは,「声をあげる」ことができない人々が多数いるのかな,と思ったところでした。今後の生活において,自分がかかわる方々に関しても気を付けていきたいと思いましたし,自分の子ども達にも伝えていってあげたいと思えるお話でした。
話のなかでは,学校教育において,先生自らが加害者にならないこと,積極的に関連書籍を備えることなどのお願い,「ホモ」「オカマ」「ニューハーフ」「オネエ」「レズ」「オナベ」などの言葉は用いず,「ゲイ」「レズビアン」「同性愛者」「バイセクシャル」「トランスジェンダー」「性同一障害」などのニュートラルな言葉を使うのがおすすめなどのご指摘,アウティング(カミングアウトしてくれた内容の言いふらし)をしないようにとの注意など,具体的なお話をいただいた上で,今後の生活上の指針になりうる示唆を多数いただいたように思います。
「性」とはなにか,「家族」のかたちは,といった,根源的でありながら難しい問題について,改めて考える機会をいただいたのは,とてもよかったと思います。 帰りがけに,販売されていた「女どうしで子どもを産むことにしました」「同性婚のリアル」も購入。ひとまず前者を読んでみました。東小雪さんと増原裕子さんの「妊活」についてのエッセイですが,そこで,多くの方々が,家族に大事なのは「Honest(誠実)」であると指摘していたところが印象深かったです。内容について詳細を知りたい方は,ぜひ1度読んでみることをおすすめします。
豊前市で,今回の講演会ような素晴らしい活動が行われていることを嬉しく思います。私も,これからも引き続き,積極的に参加していきたいと思います。
開所式・披露会の開催
本日,22日,築上館にて,豊前ひまわり基金開所式及び披露会を開催いたしました。豊前市長,吉富町長,上毛町長はじめ,たくさんの方にご来賓いただき,感謝の念に絶えません。ありがとうございました。
朝から,停電により,ソニックがまったく動かなくなるなど,トラブルもありましたが,それでもなお,予想を超えるたくさんの方にご列席いただき,地元や弁護士会のあたたかさを感じるとともに,今後,恩返しができるよう,市民の皆様の力になっていきたいと,決意を新たにしたところです。
あらためまして,今後とも,どうぞよろしくお願いします。
本人による成年後見申立て
先日の成年後見研修会における質問について,もう1つ,記事を書いてみます。
本人による後見申立ては可能か。
意外と難しい問題なのです。問題の所在は,以下のとおりです。
後見相当(財産管理能力・判断能力がない)の人が,成年後見の意味を理解して申し立てできるのか。仮に,弁護士に委任して申立てをするのであれば,弁護士と委任契約が結べるのか。
民法では,後見の場合も,本人が申立てできると書いてあります(7条)。私は,条文上,認められている以上は,基本的に可能という考えです。 たとえば,認知症高齢者の方がおられるとします。この場合,常時判断できないわけではなく,波があるのが通常です(研修会では,ことばは悪いかもしれませんが,「まだらボケ」ということもあり得るという指摘があり,なるほど,そのように考えると,イメージはわきやすいのかなと思いました。)。日によって場合によって,時には十分に物事を正確に理解し判断できることもあります。しかし,全体的にならせば,やはり後見相当と判断されることもあるでしょう。この場合,判断能力が比較的正常なタイミングで,後見申立てを決意し行えば,本人の意思尊重の観点からも,問題はないと思います。このように,後見申立ての意味を理解して意思決定し申し立てる可能性がある以上,申立てが許されないということはないと思います。 そもそも,実際に後見か,保佐か,補助か,はたまたそうでないかは,裁判所の判断事項です。実際に審理してみないとわからないといえます。その意味でも,申立てが門前払いで受理されないというのはおかしいと思います。 さらに,厳密には,財産管理能力と申立てを理解して行う能力は,内容も程度も違うでしょうから,財産管理能力の点で後見と判断されたとしても,申し立てる能力はあるということも考えられます。
以上のとおり,本人申立ては可能と考えますが,法律上できることと,実際に本人申立てでやるべきか,どのようにするかは別問題です。 周囲に適切な支援者がいる場合,その人に丁寧に説明の上,後見申立てにつき理解を得て,その人に申し立てていただくという方法もあります。支援者がいない場合,ひとまずあきらめず探してみることもあり得るでしょう。 実際に本人申立てをする場合は,本人の本意で行えているものなのか,主治医,家族,介護担当者などの意思も参考にしつつ,常にチェックする必要があるでしょう。
弁護士が申立てする場合は,そもそも手続申立代理人として受任できるのか,本人に委任する能力とその意思があるのかを,同じく,慎重にチェックする必要があると思います。 この点,委任契約は,比較的内容が難しい契約と思われますので(スーパーで買い物するのとは内容が全然違う),後見相当と思われる場合は,一切受任できないという方もいるようです。 法テラスは,後見の本人申立てについては,一切扶助の決定をしないという扱いをしており,参考になります。(法テラス・民事法律扶助のお話は,また別に書きたいと思います。)
ちなみに,認知症高齢者のお話をしましたが,知的障害・精神障害の方の場合,比較的,判断能力の変化に,波が少ないようです。もちろんケースによるのですが,後見の本人申立てのハードルは,さらに1段あがるかもしれません。
大阪の家庭裁判所は,後見の本人申立てを認めています。全国的にも,知的障害者による後見申立てが認められ,後見が開始された例があります。窓口で申立書の受理につき難色を示されたら,粘り強く説得することも必要かもしれません。仮に,申立てが却下された場合,不服申立て(即時抗告)ができます。
本人の申立てが難しい場合,本来は,市町村長が申立てをすることができます。しかし,この制度では,4親等内の親族の調査とその意向確認に時間を費やしたり,予算の壁があったりなど,迅速適正な保護が図れない実情があります。そのため,本人申立てを検討せざるを得ないことがあるわけです。 せっかく,地域の弁護士と赴任したのですから,このあたりの運用について,市と協議するなどの機会もつくることができたらと思っています。
研修会でもお話しましたが,高齢者・障害者問題については,まわりの人,支援者のお力添えが必要不可欠です。一緒に悩みながら,地域の問題を解決していけたらなと思います。
成年後見人と身体侵襲行為
本日,「成年後見のイ・ロ・ハ」という演題で,研修を行いました。 内容は,ごくごく基本的なものをベースにお話ししたのですが,質問のレベルが高く,驚かされました。
身体侵襲行為(医療同意)についての質問があったので,書いてみたいと思います。
本人に,手術など身体侵襲行為の必要が生じた場合,成年後見人は,医療機関側が求めてくる医療同意をできるか(どう対処すればよいか)という問題です。
法的な結論は簡明で,成年後見人には,そのような同意権はありません。 成年後見人は,入院するにあたって必要な病院との契約など(医療契約)の代理権を有することはあるでしょうが,身体侵襲行為についての同意権はありません。 しかし,医療機関側は,リスクヘッジのため,同意を求めることがあります。医療機関側も,軽々に,ご本人のお体に侵襲することはできませんから,事情は十分に理解できます。そのため,(ほかに身寄りがあればその人に求めればよいですが,身寄りがなく,成年後見人意外に同意を求めることができない場合,)成年後見人に対して,同意を求めるというわけです。
では,成年後見人は,同意書にサインをしていいのか? 対応は,ケースと成年後見人のスタンスにもよると思います。しかし,前提として,法律上,成年後見人に,そのような「権限」はありません。 なので,法的には,そのような同意をしても,無意味ということになるでしょう。その旨,医療機関側に丁寧に説明した上で,手術をしてもらうことになると思います。どうしてもと言われた場合,同意しても法的に意味はなく,気休めにしかならない(責任はとれないしとる必要もない)けれども,それでもいいならサインしますよ,という形で,サインをする成年後見人もいるようです。 医師には,治療の義務がありますから,患者を放置するわけにはいきません。医師の心配を取り除いてあげて,スムーズに手術を行うためには,あり得る対応だと思います。
ところで,この問題の一環として,しばしば問題になるのは,予防接種の問題です。予防接種も,身体的侵襲を伴う医療行為ですから,やはり成年後見人には,同意権はないと考えられます。しかし,予防接種法に,以下のような規定があるので,同意権があるという解釈をする方もいるようです。
【予防接種法】 (予防接種の勧奨) 第八条 市町村長又は都道府県知事は、第五条第一項の規定による予防接種であってA類疾病に係るもの又は第六条第一項若しくは第三項の規定による予防接種の対象者に対し、定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けることを勧奨するものとする。 2 市町村長又は都道府県知事は、前項の対象者が十六歳未満の者又は成年被後見人であるときは、その保護者に対し、その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの又は臨時の予防接種を受けさせることを勧奨するものとする。
私は,単に「勧奨する」という規定から,同意権を導くことはできないと考えます。しかし,成年後見人は,本人に対し,少なくとも,予防接種を受けるよう働きかける必要があるのではないかとも考えています。
これらの問題は,法的な観点だけから考えられる問題ではありません。場合によっては生命にもかかわりかねない重大な問題ですから,今後一層,議論が深まっていくことを期待したいと思います。