私(西村幸太郎)の一連のブログ記事です。私がどういう人間なのか、どういう活動をしているのか、どんなことを考えているのか、どんな知識やスキルを持っているのか、信頼に足る弁護士か、などなど、たくさんの疑問をお持ちの方もおられると思います。そのような方々は、是非こちらの記事を御覧ください。

防災フェス@築上町中央公民館

平成29年8月27日@築上町中央公民館,防災フェスが開催されました。防災に関する講演会と並行して,マルシェも行い,集めた資金を利用して,防災のための原資にするのだということです。築上町中央公民館も,このため,場所を提供するなど,大変協力的だったということでした。地域の暖かさを感じます。

各種お買い物も楽しめましたが,防災の講演も,大変役に立ちました。食料をため込むより,食料をスムーズに購入できるように道具をそろえておく方が有用であるといったお話。トイレの使用に関しては大量の水が必要になるため,水の確保が重要だというお話。真面目な人ほど水を飲んでトイレに行くと迷惑を考え,脱水や各種病気の温床をつくってしまいやすいため,やはり水の確保と,それを自由に利用できる環境づくりが大事であるというお話。トイレは菌のたまり場なので,そこで利用した靴などを避難所に持ち込まないことが重要だといったお話。マスコミが無断で現場を映して回ることについては,「スッピンを写さないでほしい」「寝ているところなど写さないでほしい」といった声を無視しているなどという問題がある反面,報道されないと支援も受けられないという側面もあって,両側面があるというお話。…

さまざまアドバイスいただき,勉強になりました。興味をもっていた,災害時のドローンの利用につき,質問をしましたが,現状,3年ほど前から,利用がされるようになってきており,消防なども利用しているということです。マスコミによる利用なども検討されているようですが,現状では,民間での利用は進んでいないとのことです。ただし,災害時,大量の「災害ごみ」が出るにもかかわらず,これらの処理がうまくいかず,道をふさぐなどして大きな問題になっているところ,災害ごみの処理にドローンを利用するという試みが進んでいるとのことでした。

災害は,いつ起こるかわかりません。豊前市とその周辺は,災害のない安全な地域とされていますが,備えあればうれいなし,しっかり勉強しておきたいと思います。

enter image description here enter image description here enter image description here enter image description here

湯布院&湯平温泉 旅行(大分)

地域に貢献できる事務所になるためには,まずは地域を知ることが必要。ある先輩の教えです。私は,九州で生まれ育ち,九州の地方で活動する弁護士になりたいと考えて活動を続けています。九州管内のいろいろな地域で見分を広め,知見を広げるとともに,業務にも役立てられればと思っています。豊前からある程度近い距離ということで,今回,湯布院&湯平温泉旅行に行ってまいりました。湯布院ではいろいろと食べ歩きが楽しかったですし,湯平温泉では,落ち着きのある雰囲気の民家が並んでおり,たまたま,自衛隊のパレードなども見物することができました。湯平温泉は,ほとんど,家族経営が多いそうですね。アットホームで親切な対応で好印象でした。いろいろな温泉巡りができるのも醍醐味です。少しずれますが,城島高原を通ったところ,絶景で,大変気に入りました。また行きたいスポットですね。

この頃,宇佐のお寺巡りの面白さなどもお聞きしたところです。弁護士は現場主義。実際にたくさんの場所を訪れ,自分の幅を広げていければなと思いました。 enter image description here enter image description here enter image description here enter image description here enter image description here enter image description here

和風味処 鬼太郎(中津)

本日は,中津で夕食を。名物はもを使用した,贅沢鱧かつ丼です。大変おいしゅうございました。この店は,ボリュームたっぷり,個室・カウンターそれぞれ雰囲気がよく,しかも比較的安価ということで,コスパが良いのではと思います。鬼から定食も,巨大手羽先ともいうべきからあげ(?)が現れ,大変食べごたえがありました。

中津にも,からあげをはじめ,たくさんの名物があります。豊前市から,わずか7kmに位置する中津についても,ぜひ,探索していきたいところです。

最近,ブログの更新をさぼり気味でしたが,いま豊前市で注目を集めるドローンをめぐる法規制の問題,トラブルが深刻になりやすい請負をめぐる法的問題などを扱った記事を投稿する予定です。お楽しみに。 enter image description here enter image description here

憲法記念日(災害のことなどについて)

憲法記念日ですね。報道をみると,憲法の平和主義は,押し付けではなく,日本が言い出したものだという説が有力(になった)とか。この美しい憲法を守っていかないといけないですね。仮に,改正を考えるにしても,憲法の基本理念につき,改めてよく確認した上,それを損なわないような議論が必要と思います。

私は,災害対策委員会として,たとえば熊本自身の関係の相談対応を行ってきたりしました。災害に関しては,それなりに興味をもっています。そこで,憲法上の問題として,「緊急事態条項の創設」について述べてみます。

緊急事態条項というのは,戦争などの緊急事態が起こったとき,国家の存立を維持するため,行政に権力を集中させるなど,立憲主義を一時停止させる条項です。つまり,予想の斜め前を行く事態が生じた場合,国を守るため,憲法はさておいた超法規的な措置を可能とする条項です。熊本地震の経験なども踏まえ,地震などの自然災害に対処するため,緊急事態条項が必要という意見があります。

少し考えていただければわかるとおり,せっかく憲法で国家権力をしばっていたのに,それを停止してしまうとなると,権力者が濫用しないか?ということが深刻な問題になってきます。そもそも,地震などの自然災害に対処するためにそんな条項は必要ないという見解が多いです。これまでに,数々の災害を経験し,その度に,場当たり的にではあっても,ある程度の法整備はなされていますし,災害への対処は,事前準備こそが重要で,これがなされていないと,中央集権的な措置をしても,適切な対応ができるかは疑問であるとされています。(話はそれますが,昨年,「シン・ゴジラ」が大ヒットしました。突如現れた天災的な怪獣になすすべもなく右往左往する様子,あれこそが,事前準備のない場合の対応の難しさをよくあらわしているのではないかと思います。ぜひ1度ご覧ください。)緊急事態条項により,権限を政府に集中させるより,むしろ現場の自治体に権限や裁量を与えるべきともいわれています。

したがって,緊急事態条項は必要なく,むしろ,さらなる事前準備を進めていくべきだと思います。幸い,豊前地域は,災害の少ない土地柄ではありますが,引き続き,私も勉強していきたいと思います。

災害関係の第一人者,津久井進先生のご講義を拝聴する機会をいただきました。先生は,「災害のときこそ人権感覚,人権の意識が重要だ」と説いておられ,「憲法をリア充しよう」と言って,以下のような説明をしておられました。感銘を受けましたので,これをご紹介させていただき,締めさせていただきます。

1人ひとりが大事にされ(13条)

 ↓

安心して暮らし(平和的生存権)

 ↓

望むように住み(13,22,25条)

 ↓

命が大切にされる(13,9,25条)

 ↓

そんな社会を自ら創る(国民主権)

麺処 くらや

今日のお食事は,吉富町「くらや」にて。 豊前地域は,うどんやからあげのお店が多いですが,そばもいけましたよ。 また行きたいです。 enter image description here enter image description here enter image description here

「知ろう!考えよう!障害のこと」

平成29年2月3日(金)18:30~20:30,@北九州市立商工貿易会館,「知ろう!考えよう!障害のこと」に参加しました。

内容は,2部構成。第1部は,基調講演として,毎日新聞社論説委員野澤和弘氏による,「障害と障害者差別解消法~障害のある人もない人も暮らしやすい街に~」というお話をいただきました。第2部は,野澤氏がとりまとめる東京大学の自主ゼミ「障害者のリアルに迫る」東大ゼミ生のお2人と野澤氏の対談が行われました。

とても内容の濃い2時間でしたが,私が印象に残ったのは,とにかく,最後の質疑応答でした。質問者から,「結局,障害とはなんだと考えているか。」という質問がありました。自らも精神障害当事者であると語る女子学生の回答は,以下のとおりです。

私が,障害とは何かという問いに答えるとき,いつも,2つの回答を用意している。 1つ目は,障害は「グラデーション」であるということ。健常者と障害者,2つはまるで別のもののように語られる。国の政策上,なにをどこまで,税金を投じて法的に支援するか,線引きが必要ということはわかる。でも,本来,2つははっきり区別できないもののはずだ。人は,生きていれば,それぞれ,生きづらさを感じているもの。生きづらさの大きさに違いがあったり,種類に違いがあったり,ある特定の観点で,生きづらさが大きいと判断されている者を,障害者と呼んでいるに過ぎない。障害というのは,本来,境界のある別のものではなく,連続性のあるグラデーションなのだ。2つ目は,障害は「物語」であるということ。障害を「個性」という形で論じる向きがあるが,私は,そのような呼び方は好きではない。個性というと,なんだか自分の力で変えられるようなニュアンスが感じられる。ネーミングを前向きなものにすればよいという問題ではない。むしろ,障害は,「物語」というべき。ある人は,足が動かないという物語の上を歩んでいる。ある人は,心になんだか生き苦しさを感じているという物語の上を歩んでいる。人それぞれ,障害をもつ人もそうでない人も,それぞれの物語を歩んでいるに過ぎない。

なんとも,考えさせられるコメントでした。みなさま,いかがお感じになられるでしょうか。

法律のブログなので,少し,障害者差別解消法に関しても補足しておきたいと思います。この法律は,障害者に対する差別的取扱を禁止するとともに,行政や事業主に合理的配慮を求めるという特徴があります。ただ,合理的配慮も,事業主に過度な負担を求めるのはいけないということになっています。しかし,これには続きがあり,「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」では,さらに,合理的配慮について「義務」とまではいえない場合も,「建設的対話」による解決を図るようつとめるべきという趣旨のことが記載されています。

1つ例を挙げます。学校で,体の悪い障害の方が,電気のスイッチが高すぎて届かない,全部スイッチの場所を下げてくれと要求したとします。しかし,これを全部やろうとすると,莫大なお金がかかってしまいます。学校に過度な負担を課すことになるので,合理的配慮として工事する「義務」までは課されなさそうです。しかし,学校は,その人の言いたいことはわかったということで,教職員や学生等に周知徹底をしたそうです。すると,その人にとって,とても望ましい方向で解決ができるようになりました。なぜなら,その人は,スイッチのことだけで困っていたわけではないからです。その人がスイッチを押せずに困っていれば,気づいた人が助けてあげられるし,図書館で高いところの本が取れなければ,気づいた人が助けてあげられる。工事をするだけであれば,莫大なお金を投じても,スイッチの件以外は解決しなかったでしょう。このように,「建設的対話」が,差別解消法の理念を実現する上で,とても重要になってきます。

野澤氏は,このようなお話をしており,なるほどと思ったところでした。

ここで登場した「障害者のリアルに迫る」東大ゼミ 著・野澤和弘編著「障害者のリアル×東大生のリアル」も購入。生の障害者に触れた東大生の生の声が,それこそ生生しく記されており,大変勉強になりました。おすすめの1冊です。

障害者分野は,私の,おおいに関心をもっている分野です。これからも学び続けていこうと思います。

表現の自由とプライバシー権(投稿記事削除仮処分最高裁決定)

憲法上,表現の自由は,とても重要な権利として強い保護の対象とされており,昔から多くの議論を呼んでいます。同じく憲法上の権利であるプライバシー権についても,昔からさまざな議論があります。両者の調整が問題となる事案について,平成29年1月31日,最高裁が判断を示しましたので,ご紹介いたします。

本件は,逮捕事実につき電子掲示板に多数書き込まれた者が,グーグルに対し,逮捕歴に関する期日の検索結果の削除をするように求め,投稿記事削除仮処分を申し立てた事件です。

犯罪事実に属する事実は,その性質上,プライバシーのなかでも,比較的強い法的保護を受ける対象になると思いますが,一方,インターネット上の情報の流通に関しては,表現として保護を受けるのではないかと考えられるため,両者の調整が問題となります。

判例は,検索事業者が,「インターネット上のウェブサイトに掲載されている情報を整理し,利用者から示された一定の条件い対応する情報を同索引に基づいて検索結果として提供するものであるが,この情報の収集,整理及び提供はプログラムにより自動的に行われるものの,同プログラムは検索結果の提供に関する検索事業者の方針に沿った結果を得ることができるように作成されたものである」から,「検索結果の提供」は「表現行為」という側面を有すると指摘します。検索結果を表示するのは,検索事業者側の方針で情報の選別をして,順位付けをして,それを表示するのですから,たとえば新聞で数あるニュースの中からニュースバリューがあるものを選んで配置し読者に提供するのと似たような行為であって,(この例と同様の保護が与えられるかはともかく,)表現行為の側面は認められるということだと思います。

判例は,さらに,検索結果の提供が,公衆によるインターネット上の情報発信,情報取得に寄与しており,情報流通の基盤として大きな役割を果たしているといいます。判文からは,検索結果の提供というインフラ,情報流通の装置そのものに憲法上の保護が与えられるかどうかは判然としません。御幣があるかもしれませんが,情報流通という一種の制度的保障,客観保障(主観的権利ではなく,制度そのものを保障することで権利の核心を保障する)をしているとまで読み込めるかは,ひとつ検討の価値があるトピックではないかと思います。素直に読む限りでは,制度・装置(インフラ)そのものに憲法21条1項の保護が与えられるとまでは読み込めず,検索結果提供行為(表現行為)の重要性を基礎づけるものとして論証されているということだと思いますが,そのあとに,「検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約」という記述も認められ,さきに述べたインフラへにつき憲法上の権利への制約が認められると読み込むことはできないのかな,とも思っているところです(「役割」への「制約」なので,権利の制約と読むのは無理があるでしょうかね。)。

判例は,プライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為(表現行為)が違法になるかは,①当該事実の性質及び内容,②当該URL等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,③その者の社会的地位や影響力,④上記記事等の目的や意義,⑤上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,⑥上記記事等において当該事実を記載する必要性など,「当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情とを」「比較考量」「して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができる」と指摘します。

基本的には比較考量論ですが,「明らかな場合」といった表現が用いられているように,表現行為の重要性にかんがみ,表現にややウェイトを置いた考量をしているようにみえます。逮捕事実というのは,前科に準じるようなプライバシーの中でも高度に保護されるべき情報だと考えれば,まず,この基準自体が妥当かどうかは,議論があるかもしれません。一方,この裁判を担当した弁護士のコメントでは,公共の内容にかかわる犯罪事実は削除しにくくなったが,うその内容は従来より消しやすくなると考えているそうです。①記事記載の事実の性質や内容が考慮要素に挙げられており,内容虚偽の事実は保護に値するといいづらいでしょうから,このような前向きな捉え方もできるのかもしれません。新聞記事や報道などをみても,どちらかというと前向きな捉え方(報道の仕方)のような印象を受けます。

なお,この裁判は,地裁で「忘れられる権利」に言及されたことで注目を集めました。しかし,最高裁は,いわゆるプライバシー権にネーミングをして権利性を認めることには慎重です。おそらく,プライバシーはピンからキリで,強く保護に値するものからそうでもないものまで,情報の性質によって議論が大きく異なるため,事案に即して権利利益の性質・内容を詳細に検討できるよう,安易にネーミングをしてレッテルを貼らないよう,自粛しているのではないかと考えています。私はそうした発想には賛成であり,最高裁が「忘れられる権利」に触れなかったのはむしろ好ましいことではないかとも思っているところです。本件では「事実を公表されない法的利益」という表現をしており,事案に即した表現をしようとしていることが読み取れます。ただ,この発想で行くと,今回の判例で「プライバシー」という用語が多用されていることは気になります。従来,最高裁はプライバシーという用語を使うのには慎重だと思っていたのですが,それだけこの用語が定着してきたということでしょうかね。

事案の解決としては,本件事実が公表される法的利益が優越することが明らかとはいえないとのこと。感想ですが,罪名が児童買春に関することで,一般に再犯率も低いとはいえず,地域住民の関心事ですので,削除の方向に傾かなかったのかなと思いました。しかし,そういう事実だからこそ知られたくない,立ち直りたいのに仕事に支障が出る,情報伝達範囲は限られているというが,地域住民に知られるのが1番こたえるなどの現実もあるでしょうから,このような考量でよいかは,あらためて議論してみる価値はあるのではないかと思います。憲法学者や実務家の間で,さらなる議論を期待したいと思います。

余談ですが,平成23年の司法試験(憲法)では,いわゆるストリートビューをイメージし,インターネットに関する表現とプライバシー権の調整が問題となるような問題が出題されました。ここでも,情報流通のためのインフラの意義や,インフラから得られる情報の性質などを考えながら,事案に即した検討を求められていたように思います。司法試験に出るくらいの分野ですから,従来より問題意識のあった分野についての最高裁の判断ということで,これから,さまざまな分析・議論が展開されるのではないかと思います。 議論の行方を見守りたいと思います。

行政不服審査法関連三法:処分等の求め

地域では,行政に関する相談も多いようです。

先般,行政不服審査法が改正され,それに伴い,行政手続法も一部改正されました。ここでは,行政手続法に新設された,「処分等の求め」について書いてみます。

「処分等の求め」の制度とは,書面で具体的な事実を摘示して一定の処分又は行政指導を求める制度です。

【条文~ここから~】

 第四章の二 処分等の求め
第三十六条の三  何人も、法令に違反する事実がある場合において、その是正のためにされるべき処分又は行政指導(その根拠となる規定が法律に置かれているものに限る。)がされていないと思料するときは、当該処分をする権限を有する行政庁又は当該行政指導をする権限を有する行政機関に対し、その旨を申し出て、当該処分又は行政指導をすることを求めることができる。 2  前項の申出は、次に掲げる事項を記載した申出書を提出してしなければならない。 一  申出をする者の氏名又は名称及び住所又は居所 二  法令に違反する事実の内容 三  当該処分又は行政指導の内容 四  当該処分又は行政指導の根拠となる法令の条項 五  当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由 六  その他参考となる事項 3  当該行政庁又は行政機関は、第一項の規定による申出があったときは、必要な調査を行い、その結果に基づき必要があると認めるときは、当該処分又は行政指導をしなければならない。

【条文~ここまで~】

違反状態をなおすために処分を行う行政の権限,行政指導を行う行政の権限が,つねに適切に行使されるとは限りません。このような権限を行使するには,違反状態の存在を,行政が,知っていないといけませんが,行政のインフラは限られており,規制の対象が広く追いつかなかったり,そもそも違反事実を認めるのが技術的に簡単ではない場合には,行政のみでは,違反事実にかかる情報を,十分に取得できないということが起こり得ます。その結果,いわゆる,「執行の欠缺」というべき事態(適切な執行が欠けている状態)が生じていました。さらに,たとえ違反事実を知っていたとしても,黙認してしまったり,法律の根拠に基づかない弱弱しい行政指導を繰り返すばかりで,有効な是正策を講じず,違反状態の継続を許してしまう事態が生じないとも限りません。こうした問題意識から,法令違反の事実を把握している者からの申出をきっかけとして,行政が必要な調査をし,その結果,必要があると認めるときに違反事実を是正するための処分又は行政指導をする制度をつくることで,行政手続法の目的である「行政運営における構成の確保と透明性…の向上を図り,もって国民の権利利益の保護」をはかろうとしたというものです。

行政不服審査法ではなく,行政手続法に定められたのは,この「処分等の求め」は,「何人でも」申し出ることができる制度であり,申出人個人の権利利益の侵害を要件とする行政不服審査とは一線を画すると考えられたからです。

非申請型(直接型)義務付訴訟などの制度が整備されていたとはいえ,訴訟要件も本案勝訴要件も厳しい状況でしたから,このような柔軟な制度ができたのは,喜ばしいことではないかと思います。

なお,処分の求めと行政指導の求めは,両方を求めることも可能です。申出人の氏名,住所等の個人情報は,個人情報保護法により,保護されます。

ただ,処分等の求めの制度は,あくまで,職権発動を促す制度と位置付けられているに過ぎません。この点は,再考の余地があると思われます。このあらわれとして,申出人に,申出を受けた調査結果や是正措置について,通知を求める権利を与えてはいません。実務上,通知を行うべきと思いますが,法律上も,明確に書いておくべきだと思います。

以上,簡単でしたが,制度の紹介でした。活用例を積み重ね,行政の良質なサービスの提供につながればよいなと思います。

「いまこそ知りたい!みんなでまなぶ日本国憲法」

明日の自由を守る若手弁護士の会が,「いまこそ知りたい!みんなでまなぶ日本国憲法」という本を出しています。

この本は,全3巻で,憲法の話を,イラストやマンガを多用して,とてもわかりやすく話したものです。「1 立憲主義 国民主権」「2 基本的人権の尊重」「3 平和主義」という形で,社会の教科書にも出てくる3のテーマについて,1テーマ1冊ずつ,解説しています。 私は,学生時代,憲法を勉強するのが好きで,恩師ともいろいろと議論を交わしていました。ニュースで憲法問題がホットな問題として取り上げられる今日この頃ですが,学生のときほどは勉強していないな~と思っていたところ,新しく本が出るということで,購入してみたものです。子ども向けの本だな…と思っていましたが,年表も多用されていたり,新聞記事が貼り付けられていたり,外国の様子が紹介されていたり(タイバンコクの戒厳令,ヘイトスピーチとルワンダ大虐殺など),社会現象を巻き起こした書籍が適宜紹介されていたり(「蟹工船」「ぼくたちは なぜ、学校へ行くのか」など),極めつけは「憲法体操」をラッキィ池田さんが踊っていたり(?!)と,随所に工夫をしながら,とても濃い内容が記されていました。これまできちんと理解できていなかった部分も,わかりやすく解説されていました。大人も一見の価値ありの良書だと思いました。

法教育の機会をいただけた場合,こうした本も参考になると思いましたし,自分の子どもを含めたたくさんのお子さんたちに,読んで聞かせてあげたいなと思いました。

あとは,3巻9000円という値段だけが,どうにかなればいいなと思いました…

みなさま,ぜひ1度目を通してみてください。

支部交流会

平成29年1月21日(土) 13:30~17:00 福岡県弁護士会館にて,毎年恒例の「支部交流会」(九州弁護士連合会主催)が開催されました。これは,裁判所支部管轄で仕事をする弁護士が,意見交換を通じて,支部特有の問題について考えていこうという会です。私の事務所の所在地である豊前市は,福岡地方裁判所行橋支部管轄です。私も,この会に参加し,いろいろと勉強させていただきました。

支部問題というのは,御幣をおそれずざっくりというと,裁判所支部のインフラが整備されていないため(例:支部に裁判官がいなくて判断をもらえない/判断が遅い、支部で労働審判を申し立てられない、調査官がいないから少年事件ができない…などなど多数)に、市民が遠く離れた裁判所本庁まで移動しなければ法的サービスを受けられない不都合に関する問題のことをさします。

まず、最高裁との協議によって、あたらしく支部でも労働審判ができるようになった長野県の会員から、どうやってそのような成果を勝ち取ったのかのご報告をいただきました。弁護士は、会内で決議をしたり、最高裁に対し意見を述べたりするが、やりっぱなしではダメだ、もっと積極的にアクションを起こしていかなければいけないということでした。耳の痛い話ですが、私も、口先だけにならないよう、活動を続けます。

後半は、支部の会員間でざっくばらんに意見交換をしました。なかでも興味深かったのは、離婚/養育費・婚姻費用に関する判断のバラつきの問題についてです。東京から赴任したある弁護士の話では,東京では,養育費を22歳(大学卒業時)まで請求するのは,当たり前だったそうです。しかし,支部に赴任すると,支部では,当然のように20歳(成人する)までとするような話をされるようです。東京の子どもは大学を卒業するのが普通で,地方の子どもは大学に行かないのが普通だとでもいうのでしょうか。私は,現在は大卒が決して珍しくない時代ですから,子の学歴,子の意欲,親の学歴,その他の事情を考え,特に問題がない場合は,22歳まで請求しています。もちろん事案によりますが,原則22歳まで,大卒の蓋然性がない場合には20歳までとすると考えているといってもよいでしょう。事案に即した結果,判断がわかれるのであればやむを得ないでしょうが,支部というだけで通常20歳までと考えられているのであれば,それはおかしな話なので,きちんと事案に即した検討を求めていくべきかなと思ったところです。養育費は,ひとまずは調停(話合い)で決することなので,相手方の意向にもよるということになるのでしょうけれども,きちんと法的な帰結は意識した上で,代理人活動をしなければなりませんね。

活発な議論があり,大変勉強になりました。ここで勉強したことを活かし,今後の業務にも活かしていきます。